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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784575527445
作品紹介・あらすじ
とある町の路地を挟んで十軒の家が立ち並ぶ住宅地。そこに、女性受刑者が刑務所から脱走したとのニュースが入る。自治会長の提案で、住民は交代で見張りをはじめるが……。住宅地で暮らす人々それぞれの生活と心の中を描く長編小説。
感想・レビュー・書評
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津村さんは『水車小屋のネネ』が良かったので、こちらを購入した。読み始めて3週間程と何度も挫折しかけた。逆コの字の住宅地に10軒の住宅と24人の住人。冒頭に住宅地地図と住人全員の名前が掲載されていて、住人が登場する度に何度も見返した。住人達はまともな人達がおらず、訳あり家族が多く、暗い気持ちにさせられる。暴れる子供を隔離して縛りつけようとする夫婦、少女を誘拐しようと企てる独身男性、何やら曰く付きで金持ちとなった家族、等々。
これが脱獄した女性受刑者のニュースで、住人達が嫌々ながら交代で見張り番をする事に。纏まりが無い住宅地で唐突な提案が受け入れられてしまう。この展開も予想外。親が出ない家は子供が見張り番に。
次々と更に登場人物が増え、女性受刑者の事件も住宅地に展開して行く。実はこの受刑者と色々な住民の繋がりが複雑に絡み合っていた。ここに来て俄然と面白くなってくる。停滞していた読みのスピードが速くなって行く。最後はハッピーエンドのようになり、何となく大団円。我慢して読んで良かったというところ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
脱獄犯がやってこないか住宅地の住人が交代で見張りをする話というと、津村さんの作品の中では比較的派手な設定ではないかと思われるけど、内容はあくまでも十軒の家+αの事情を丹念に描いたもので、期待通り。さすがの職人芸。
それぞれの家の事情は結構ヘビーで、前半は読んでいて気が滅入るほどだった。ラスト、それぞれの生活に差し込む光はほんのわずかなのだけど、登場人物たちが抱くささやかな希望のいじらしさに、全然御涙頂戴ではないどちらかと言えばドライな筆致にも関わらず、泣きそうになる。
津村作品を読むと、好きでも嫌いでもない関係だからこそ、煮詰まった家族関係の差し水となれる時がある、と思う。ご近所付き合いなんて面倒と感じたりもするけれど、無駄から生まれる楽しみも、案外人生には多いのかもしれない。 -
つまらない住宅地に起きるつまらない事件。
登場人物が多いので、何度か読み返すのが辛かったが、事件をきっかけに見えてくる家庭像に面白みを感じられた。
この希薄な近所付き合いな世の中に、光を灯すような作品でした。 -
隣人って不思議だ。あそこのおばあさんが亡くなったらしいとか、そこの旦那さんはどこそこに勤めているらしいとか。噂を聞けば近所ですれ違ったときの顔と聞いた情報をくっつけてみるが、それ以上の印象はなく特別な感情は湧かない人。
それでもたまに大喧嘩をしてる声が聞こえるとか、植えている植物の枝がこちらの敷地に突き出しているとか、前を通ると飼っている犬が吠えてくるとか。そんなちょっと嫌だけど、文句を言うほどのことでもない不満が積もっていたりする。なぜなら毎日すぐ近くで生活しているから。
近くで生活しているにも関わらず、ちゃんと顔を見て話したことは少ないから、そのちょっとした不満が隣人の印象の大部分を占めてしまう。
だから各家庭の内情を知らずとも、本作の登場人物たちのように、変化の少ない町に住んでいるというだけで「つまらない住宅地の人たち」とひと括りにできたりする。
しかしそんな隣人たちと共に、本作のように逃亡犯から身を守るために交代で見張りをするというのは、少し楽しそうで羨ましく思った。
短い時間でも同じ目的のために集まれば、食事したりゲームしたりしながら話をする。話をすれば自然と各家庭の内情もうっすら見えてくる。そうすれば抱いていた不満も「まぁしょうがないか」と思えたり、やんわりと指摘したりできる。
人間関係の問題の多くはコミュニケーション不足が原因だと言うが、一理ある。隣人は全くの他人ではなく、何か問題が起きれば互いに影響が及ぶほど近くで生活している人だから、尚さらコミュニケーションが重要になる。いざとなれば助け合おうと思えるくらいの距離感でいるのが一番よい気がする。
私は小さい頃マンションに住んでいた。隣は中年夫婦。いつすれ違ってもしずかな笑顔をたずさえて挨拶をしてくれる人たちだった。余計な話はお互いせず、ただそれだけの関係だった。
わが家は私が小学生のときに違う町に引っ越して、それ以来あの隣人と20年近く会っていない。それでもあのマンションでの生活を思い出すとき、隣人のことも思い出すことがある。元気だろうか、まだあそこでしずかに暮らしているのだろうか。この心の距離感はやはり全くの他人ではないと感じる。
本作は子ども達が大活躍していてとてもよかった。
恵一や亮介、ゆづきや千里、博喜。一人一人の行動によって、この町の長らく動かなかった歯車がようやくかみ合って動き出した。将来この町を出ていく子もいるだろうが、隣人たちにとってはいつまでも大切な町の一員であり続ける気がする。
最後に私の本作の読み方を紹介すると、あまりに登場人物が多かったため、名前と特徴をメモしながら読み進めた。始めに地図と人物紹介が載っているが、それだけでは混乱してしまう自信があったので(笑)
「丸川亮太/父:母と別居中。父にうんざりしてる息子。料理が上手くしっかり者の父。」
みたいな。
ストーリーのなかで分かりやすく特徴が書き分けられていたため、メモをせずとも訳が分からなくなることはないが、たまに誰これ?となることはあるので書いていてよかったと思う。参考まで。 -
最初は、かなり登場人物の把握に苦労しました。読み終えると、様々な負の感情や歪んだ欲求がギリギリのところで解消されホッとしました。一人一人は、さまざまな一面があることを確認できた作品でした。
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登場人物の多い小説は読みづらいだけであまり面白くもない‥‥という自分の偏見は覆されました。
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ご近所づきあいミステリー。群像劇。
全然つまらなくない。
もしかしたらその場所は、変化がなく不便でつまらない住宅地かもしれないけれど、そこにあるすべての家は素敵だと思う。
話が進むにつれて、それぞれが抱える問題がほぐれて、するっと解決していくのは気持ちがいい。 -
めちゃくちゃ好みな小説だった。
登場人物が多くて、語り手がコロコロ変わるので登場人物のページと睨めっこしながら読んだ。
そこらへんにいそうな住人たち、皆んなが主人公。誰にも悩みや問題があって、それを多面的に描写されている。小説のテーマにするには小さくて、その人にとっては大きな問題たちが、最後には全てハッピーエンドにまとめ上げられて、読了感がとても良い。
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つまらない住宅地のすべての家
著者:津村記久子
とある住宅地に脱獄した女性受刑者が向かっているというニュースが流れ、10軒の家の住人たちは不安に駆られます。夜間に交代で見張りを始める彼らは、事件を通じてそれぞれの家庭の事情と秘密が次第に明らかになっていきます。新たなご近所づきあいが始まる中で、住人たちは知らず知らずのうちに互いに影響を受け、行動が変わっていきます。この物語は、つまらないとされる住宅地の中に潜む生々しい人間模様を描きつつ、生きづらい世の中に希望を灯すささやかな傑作です。
津村記久子さんの作品は、ミステリーのようなドキドキ感と、ホームドラマのようなほっこり感が同時に味わえる物語です。何でもないように見える近所づきあいの裏側に、それぞれの家庭が抱える問題や秘密があります。脱獄囚を見張るという共通の目的の中で、住人たちはギリギリの状態を保ちながら、それぞれの問題に立ち向かっていきます。普通に過ごしているように見えても、裏では多くの事情を抱えている人々の姿に共感し、私たちの私生活もまた一つのサスペンスなのかもしれないと感じさせられます。 -
反省です。
最近わたくしに巻き起こっている読書ブームにより、読書に対して慣れが来たのか雑な読み方をしてしまいました。ええ。
こんなに多くの登場人物がいるのに、メモもせずに読んでしまったのです。
なので、ちょいちょい当り前の顔をして登場してくる人物に
始めまして、と言いながら名刺を渡す勢いのわたくし。
繰り返しますが、反省です。
多分この本の面白さの半分も理解できずに読了を迎えたと思います。
そのくせに評価をつける厚がましさ、このあたりです家族から評判が悪い所は。
最後にこの本の先輩として言っておきます。
「メモは忘れるな!」と -
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登場人物が多くて序盤はなかなか物語に入り込めなかった。この本を購入したときは結構ポップなお話かなと思ってた、ドタバタ逃走劇!てきなね。だけどなかなかにシリアスなところもある感じ。中盤になると段々キャラクター達も馴染んできて少し読みやすくなる。
最後変に綺麗に収まりすぎな気がして、フォーカスする住人を絞ってエピソードを深くすればとも思ったけど、群像劇ってこういうものかとも思う。
普段何気なく生活してるけど、すれ違う人達にはそりゃあ家があって家族がいて物語があるんだなって感じた。 -
とにかく登場人物が多い!
とある住宅地に住む人々
そんな住宅地に住んでいた人が横領で捕まり、さらに刑務所から脱獄した
普段、人との関わりなんて全然ないのに脱獄犯が帰ってくるかもしれないと見張りをするために団結する
訳ありっぽい人が多いけど、少しずつ理解し合えるのはいいなと思う -
共助の希薄となったコミュニティにおいて、それぞれの家庭が内包する呪縛を人と人との関わり合いで解放する様子を描く。
中でも食に関しては刺さる。固まったものを温かく融和するメタファーにもなっていそうな揚げそばの存在が良い。
進行が複雑でクロスした瞬間の爽快感はあるものの、着いていくのに疲れた。
また、大柳望の計画については激しい嫌悪感を抱くとともに、例え関わり合いで是正できるとしてもこの思想が存在するということ自体に落ち込んでしまった。そもそも津村記久子さんが描いた彼の人物像にリアリティがあるのか無いのか、理解の範疇外だ。 -
バタバタと読んだので、登場人物の関係がいまいち把握しきれていないと思う。
序盤、薄いつながりで描かせる住宅地の人々の印象がなかなか付かなかった。
名前だけで滑っていくエピソードが、色付き始めたのは中盤過ぎ、渦中の人間が登場しはじめる辺りだった。
読み終えて、最初は「怒り」について考えた。
刑務所から逃亡した犯人の抱えていた「怒り」、誘拐しようと目論む男の「怒り」。
でも、二人が選んだ道を考えると、そこには「怒り」の元になる深い「哀しみ」があったんだろう、と、そう思う。
住人たちはそれぞれに、「哀しみ」の色をたたえていて、だから、集い、つながり、変化する。
一人きりであれば、そもそも生まれなかった「哀しみ」かもしれない。
家族とは、時に縛りとなる関係だけど、少し外側から見直せることで、そこに風が通るような気がした。 -
巻頭に住宅地図があり、地図を確認しながら読み進めていった。どこにでもありそうな住宅地に住む住民達だが、女性受刑者が脱獄しこちらに向かっているというニュースが飛び込んでくると一気に団結を始める。それぞれの家族が様々な問題を抱えながらも、不思議な連帯感が生まれてくる。人間関係が希薄な世の中だからこそ、ほんの少しのおせっかいが必要なのではないだろうか。
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とある住宅地の一区画に住んでいる住民と刑務所を脱獄した当婆飯だけが登場する話。
最初のページに区画図と住人の名前と人となりのみ書かれていて、読み進めるためにはどこにいる人、を度々確認する必要がある。
でも慣れてくると、あ、角の大きな家の子のことなんだな、あの家のお父さんのことか、などとまるでそこの住人になって近所の家のことを知っていくように住人について把握できていきます。
それも面白い。
逃亡犯からの防災予防のために夜通し見張ることになって知らない住人同士が知り合いになっていくところも面白かった。 -
登場人物の図を見て頭の中で整理しながら読んでいく。だんだん面白くなっていくかな〜って読んでいくが最後までこれといって…
どこの家も外からはわからない事情もあるし、どんな人でもちょっとした事で人生が変わってしまうこともある。
著者プロフィール
津村記久子の作品
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