俺はこのままひとりぼっちで、いつかおかしくなってしまうんだろうか (双葉文庫)

  • 双葉社 (2024年4月10日発売)
3.65
  • (19)
  • (50)
  • (43)
  • (9)
  • (0)
本棚登録 : 1100
感想 : 66
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575527469

作品紹介・あらすじ

男性は孤独に弱くてひとりぼっちでいると生きる気力を失い、おかしくなってしまう──売れない小説家兼雇われコンビニ店長の春来は、SNSでややバズった投稿を見た途端にずっと一人の生活に耐えられるかどうか不安に襲われる。同じ年代の元クラスメイトや、同僚や知人もそれぞれ抱えているものがあった。『死にたいって誰かに話したかった』の著者がおくる、不器用な人間のいきざまや繋がりを丁寧に描いた長篇。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  タイトルの長さと奇抜さが気になり、手にしました。ゆる〜い仲間関係の40代4人グループ(春来、夏枝、秋生、真冬)の、10年間のそれぞれのエピソードを時代背景の章題とともに描かれます。

     冒頭に登場するSNSのバズり投稿「男性は孤独に弱くて、ひとりぼっちでいると生きる気力を失い、おかしくなってしまう‥」を読んだ春来。このツイートが繰り返し脳内再生され、焦るのでした。
     本書のタイトルは、春来が自分の破綻しかけた今後を不安視した心の声なんでしょう。

     読み進めると、人生を象徴するように、4人はいろんな状況下でいろんな転機と不幸があり、冴えない「ひとり」の生活をしています。共通点は、優しさと不器用さでしょうか? それ故に傷つくことが多いのでしょう。まぁ、共感できる面もあれば、なかなかにイラつく面もあるのですが‥。

     人はどうしても他と比較したり、他人の尺度で自分を測ったりし、妬んだり羨んだりします。分かってはいるのですが、形はどうあれ、相田みつをさんがいう通り、「しあわせはいつも じぶんのこころがきめる」べきですよね。
     多様性も叫ばれますが、将来への不安はないはずがありません。自分だけの力では解決不可能なことも多々あるので、適度な距離感を保っている人の存在は貴重で、救われるでしょうね。

     諦めてとか仕方なくではなく、厳しいことを自覚した上で、前を向く姿に少しの希望が見えます。

  • 男性は孤独に弱くて、ひとりぼっちでいると生きる気力を失い、精神的おかしくなるというSNSの投稿を見ながら、恋愛も結婚もほど遠い自分もそうなるのか…と呟くのは41歳の売れない小説家でコンビニの雇われ店長の春来。

    夏枝は、貧乏な家から抜け出し医者の夫と結婚し妊娠するが堕してくれとと言われ、パワハラ気味で借金もある夫と離婚。

    秋生は、同性の恋人から衝撃的な別れを経験したが、かなり前に少しだけ結婚していた期間があって、最近になり子どもがいたことがわかる。

    真冬は、姉がダウン症で弟が自閉症という家庭で育ち、祖母や母の介護もしていたが、それぞれに亡くなった今になり、恋愛すらしたことがなかったと…。

    この40歳を過ぎた男女4人は、どん底だと思いながらもなんとか立ち直って前向きに生きていく。

    きらきらとした夢見るような恋愛はないが、たまに集まり盛り上がって、それぞれひとりの家に帰る。
    困ったときは、支えながらもひとりで生きていく。

    中年の独身ならではの悩みも抱えるものも、けっこう厳しくもあるが、それでもひとりで生きていくという力強さが見れた。


  • まだこの4人の年齢になるまでは10年ほどあって、自分の理想の人生とは異なっているけれど…
    ある意味これがリアルな人生なのかな。

    物語としては、決してキラキラしたフィクションではなくて、自分の弱さや将来と向き合いながら前を向いていく4人の姿勢には説得力がありました。

    ⭐︎は、私自身が最後に行き着くまでの人生にもう少し夢をみたいから 3つに。
    でも、結局最後はひとり。だよね。

    • ねこがすきさん
      日野さん
      ありがとうございます。
      きっと、読む人の年齢や境遇の違いよって
      持つ感想は色々だろうなあと思える本でした。
      読まれた際には感想楽し...
      日野さん
      ありがとうございます。
      きっと、読む人の年齢や境遇の違いよって
      持つ感想は色々だろうなあと思える本でした。
      読まれた際には感想楽しみにしております♪
      2024/08/12
    • 日野レッドドルフィンさん
      ねこがすきさん
      承知いたしました。

      七夜物語と夜は不思議な動物園の次に読める予定です。
      月末までには読み終わって感想をあげたいと思...
      ねこがすきさん
      承知いたしました。

      七夜物語と夜は不思議な動物園の次に読める予定です。
      月末までには読み終わって感想をあげたいと思っています、
      2024/08/12
    • 日野レッドドルフィンさん
      ねこがすきさん
      頑張って読了しました。
      中盤のあまりにも不幸の連続でこちらの心が折れかけたけど頑張りました。

      >ある意味これがリア...
      ねこがすきさん
      頑張って読了しました。
      中盤のあまりにも不幸の連続でこちらの心が折れかけたけど頑張りました。

      >ある意味これがリアルな人生なのかな。
      この言葉の意味がよくわかりました。

      そう、自分の弱さに正面から切り込んで行くから辛かったのかな?

      でも、この四人の人生は幸せだなとも思います。
      ある意味羨ましい。
      2024/08/15
  • 40代〜50代の男女4人、結婚したことがあったりなかったり、子供がいたりいなかったりと違いはあるけど、みんな現在はおひとり様。
    これからどうなっていくんだろう…と心配する様子が微妙に違っていて面白い。

    冒頭の「未婚男性は平均寿命が極端に短くて65歳位」というのが気になって、思わず調べてみた。
    これは事実のよう。離婚しても死別しても男性は寿命が短くなるらしい。
    でもこれより気になったのは、女性の未婚者の平均寿命が81歳に対して、女性の有配偶者は78歳なのだそう。
    (死別しても離婚してもあまり寿命に影響なし!)
    こないだ読んだ「妻の終活」でも感じたように、女性にとって結婚はストレスでもあるってことなのかなぁ。

  • このどん詰まり感。
    人生にはいわゆる「王道」があって、そこから逸れた人生って、不安すぎて、何か揺るぎないものにつかまりたくなるんだろう。
    同じ境遇にいるわけじゃなくても、この耐え難い焦燥はめちゃめちゃわかる…!

    人生に、ものすごい幸運が舞い込んで一発逆転!なんて、ほとんどない気がする。
    なのに、今まで通り暮らせなくなってしまうようなトラブルは、わりとある気がする。
    破滅に向かうのが人の定めなのか…?

    4人の主人公たち、愚痴りたくなる状況なのはわかるけど、みんな我が身かわいさが過ぎるなと思いつつ、でも誰にとっても自分が主人公なんだから当たり前かと思い直す。
    一発逆転が叶わなくても、自分を大事にして、少しでも幸せを見つけながら生きていけたら。
    自分を大切にすることと、人を大切にすることは、ほんとはほとんど同じなのかもしれない。
    小さな希望が灯ったような気がしました。

  • 非常に面白かったです!!
    私自身は登場人物の年齢になるまでまだちょっとあるけど、おそらく一瞬でその年齢に達するので、身につまされる思いでした。

    相対的に見れば恵まれた立場にいるのに(特に一番(?)の主人公であるコンビニ店長がそうかな)、どうしても他人と比べてしまって不幸を感じてしまう。
    羨んじゃいけないのについつい羨んでしまったり。

    この本ですごくよかったところは、それぞれの登場人物たちが、最終的には前を向くところ。
    前を向くまでに至る経緯がすごく人間臭くて、自分の醜さに目をそらしたくなるけど、いちいち同感してしまって。過去の出来事にひきづられて、「ああすればよかった」「こうすれば今はもっと違ったはず」と後ろ向きに考えちゃうあたりは首がもげそうになるほど頷きながら読みました。

    世間はGW。
    長期休みに、自分を見つめ直すような本を読めてよかったなと思います。明日から腰を据えて将来のこと色々考えようと思いました!

  • 中年独身男女4人のお話。
    インパクトあるタイトルに惹かれ、読みたい気持ちと読むのが怖い気持ちで揺れるも、やはり手に取ってしまった。

    まあグサグサ刺さり、感情がごちゃまぜに。人生良い時も悪い時も自分を抱きしめて向き合って進むしかないんだな。
    べったりではない4人の関係が良い。時に距離をおく事があっても、言えない気持ちがあっても、なんだかんだ駆けつけてくれる人がいるってすごい。

    家族だろうと誰といようとも、弱かろうが自分の足で立とうと何度でも思える事が大事なのかな。
    南さんの本は2冊目。どちらも読み返す頻度が高そう。

  • タイトルに惹かれ購入。
    自分と同世代の苦悩、哀愁が伝わる。
    独りでいる未来を悪く想像してしまうのはわかり、年齢から希望も持てない人物達がそれでももがく姿が描かれるているが、あまり悲壮感がかんじられず重くなく読めた。
    選択を失敗したと考えず、前向きに考える人しっかり生きようと生活を見直す姿勢に、最近の自分と重ねられ力をもらう。
    やっぱりまずは健康を維持していくのが一番だなあ。そっから楽しみを見つけて充実させていきたい。

  • 初読みの作家さん。

    主人公の4人に嫌な人が居なかったことが良かった。
    春来(はるき)はちょっと情けない人物ではあったけれども。

    その代わり、主人公達(これまた春来以外)の環境や周囲の人物達は酷かった。
    家族・親族、同性の恋人、モラハラ夫、マスコミ、同僚、学校の教師など。

    各章のタイトルの内、春夏秋冬は主人公達の名前なのでわかりやすかったが、その年々の時事的出来事は関係無さすぎた。

    冒頭のあたりでは、ちょっとハズレかなと思ったが、読み進めると意外と良かった。

  • 20240912読了
    ◆目次
    2016年 春 サイレントマジョリティー…7
    2017年 夏 史上最年少プロ棋士…39
    2018年 秋 富田林の逃亡者…69
    2019年 冬 カルロス・ゴーン…99
    2020年 秋 第99代内閣総理大臣…131
    2021年 夏 車いすバスケ界の流川楓…165
    2022年 春 間違えられた男…199
    2023年 冬 第101代内閣総理大臣…239
    2026年 春 ファンキーシックスのトニー…276

    ◆あらすじ
    売れない小説家兼コンビニ店長で、強い結婚願望があるが実る気配がない春来。貧乏家庭に育った反動から玉の輿に乗って結婚したものの、その代償として自由を失った夏枝。家庭内での役割や性の役割に違和感を持っており、恋愛対象の姓を特定しないバツイチの秋生。障害を持つ姉と弟の世話から、認知症の祖母の介護に至るまで、常に家庭の手伝いを優先してきた為、まともな恋愛経験も職歴も持たない真冬。個性的な4人のアラフォーからアラフィフにかけての10年間の交流が描かれる。

    ◆感想
    表紙とタイトル、そして冒頭から、初めはアラフォー独身男性の孤独な生き様がコメディタッチで描かれる作品かなと思ったが、それ以上に、個として生きていく力を養うことの大切さと、大人 になっても支え合うことのできる友情の尊さを教えてくれる作品だった。
    (加えて、独居老人の孤独さ、死活問題の切実さも痛感させられる)

    孤独な独身者にとっては家庭のある既婚者が羨ましく、自由のない既婚者にとっては独身者の身軽さが羨ましい。互いの芝生はいつも青く見えるものだよね。
    物語の前半までは、まだ4人ともアラフォーで、家族や職場の人としがらみや、自分自身に対しても素直になれないことによる不自由さ、生きづらさにもがき苦しんでいたが、歳を重ね、物語の後半に進むにつれて徐々にそういったものから解放されていく感じがこちらにも伝わってきて、読んでいても後半の方が面白かった。個人的に一番好きな章は2023年 冬 第101代内閣総理大臣。生まれた時から家族の介護で、自分を顧みる余力が一切なく、常に与える側だった真冬の、初恋と失恋。ジェットコースターのような気持ちの浮き沈みを味わった(保志は最低男だったが)後、それを忘れさせてくれる温かい友情の尊さに思わず泣きそうになった。
    夏枝の「みんな一人でがんばる。困ったときは支え合いながら。そんな関係、なかなか作れない」の言葉もすごくよかった。結婚しても虚しい想いをした経験のある夏枝だからこそ出てきた言葉。独身を寂しいと感じる春来との差は男女差ではなく経験の違いなのかなとも思った。

    決して明るい物語ではないけれど、かといってすごくしんどいとか辛いとかはなくて、読んだ後は不思議と今の独身生活を愛おしく尊いものとして抱きしめてあげたくなる作品。独り身の皆様におすすめです。

全66件中 1 - 10件を表示

南綾子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×