小田原仁義 三河雑兵心得 拾弐 (双葉文庫)

  • 双葉社
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  • 本 ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575671759

作品紹介・あらすじ

秀吉による天下統一の総仕上げとして、いよいよ北条征伐が始まった。だが、北条氏の本拠である小田原城は、かつて謙信や信玄も落とせなかった天下の堅城。さらには関東一円に張り巡らせた支城網により備えは万全だった。これに対し、二十万人の秀吉軍は各個撃破を選択、徳川勢は東海道からの進軍を阻むため箱根に築かれた山中城を攻略することに。茂兵衛率いる鉄砲百人組は西の丸の陥落を目指し、北条流の畝堀と堀障子に苦しめられながらも、知恵と根性をふり絞って少しずつ前進する。戦国足軽出世物語、難攻不落の第十二弾!

感想・レビュー・書評

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  • 前作から5ケ月、小田原合戦まできた。
    山中城、韮山城攻めは、両方の城を見に行ったことがあるので感慨深い。
    山中城は茂兵衛一族で潜入し、城の詳細を調査。秀吉の前で地図を下に説明するという大役。城を実際に見た時に、障子堀が印象的な大変な場所。何とか落城させるが、次は韮山城。こちらも険しい山城。家康の友人だった敵方の大将を救うため、家康の無茶振りで茂兵衛が使者になる。一緒に使者に行った武将が撃たれて死ぬという危険な場所。家康と何度も連絡を取り合い、相手の投降を引き出す。
    東海から江戸への移封に伴う領地拡大も、出世に余り関心の無い茂兵衛は、大活躍なのに僅かの加増でも納得してしまうというお人好し。
    このシリーズを安心して読めるのは、この無心さかも知れない。出世を目指し、権謀術数を駆使して成り上がる物語で無いところが良い。家康や秀吉に翻弄され、ぼやきながら従う姿が面白い。
    最後に、茂兵衛一族に悲劇が。次作ではどうなるのだろうか?

  • 徳川家康の家臣で足軽から出世した植田茂兵衛の出世の物語です。

    天正十八年(1590)。
    三十年前の家康は、三河半国の領主であった。いまは、三河、遠江、駿河、甲斐、信濃の五ヶ国百四十四万石の太守になった。それに伴って植田茂兵衛も、身分は足軽大将のままであるが、侍大将が指揮する鉄砲足軽百人、槍隊と弓隊が百人、小荷駄などを合わせれば三百人からの屈強の男たちを指揮する身分となり、俸給も上がる。

    天正十八年(1590)ニ月。豊臣秀吉が、関東の北条を攻め始めた。総兵力は二十万。茂兵衛たちは、北条氏の前線基地である箱根山中の山中城を落とし、韮山城へと攻めていく。小田原北条氏を降伏させた秀吉は、東海の地を地盤としていた徳川家康を関東へ国替えさせる。石高は二百四十万石である。茂兵衛の石高も三千石となる。

    【読後】
    字が大きく、読みやすく、戦闘シーンが多く楽しく読めました。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~
    《三河雑兵心得シリーズ一覧》
    13.奥州仁義
    12.小田原仁義   2024.03.06読了
    11.百人組頭仁義  2024.02.20読了
    10.馬廻役仁義   2022.12.22読了
    09.上田合戦仁義  2022.10.02読了
    08.小牧長久手仁義 2022.06.01読了
    07.伊賀越仁義   2022.04.09読了
    06.鉄砲大将仁義  2022.03.16読了
    05.砦番仁義    2022.03.02読了
    04.弓組寄騎仁義  2022.03.01読了
    03.足軽小頭仁義  2022.02.27読了
    02.旗指足軽仁義  2022.02.17読了
    01.足軽仁義    2022.02.16読了
    ~~~~~~~~~~~~~~~~
    「図書館」
    小田原仁義 ー 三河雑兵心得シリーズ12冊目《文庫本》
    2023.09発行。字の大きさは…中。2024.03.05~06読了。★★★★☆
    図書館から借りてくる2024.03.03

  • いよいよ関東・小田原攻め、殿様から無理難題を受け、鉄砲隊を率いて、悪戦苦闘しながらも、何とか前進。

    物語には無いが、北条氏規は結局どうなったか気になり、調べたら、その後赦されて大坂に所領を与えられたらしい。よかった。

  • リアルな描写で変わらず面白い。
    ストーリーはもちろん、その中での心の動きや行動の原理など、生身で生きる人物が、生き生きと、悩みながら、折り合いをつけながら行動していく姿がとてつもなく面白い。英雄豪傑ではなく、一人の人間として主人公を描いていることに共感を覚える。
    そんな話だからこそ、様々に心に刺さる言葉がある。

    竹束や、逆茂木造りなど、戦争は常に自然破壊をする
    雑兵が陽気な軍隊は滅法強い
    男の嫉妬は女のそれ以上に恐ろしい
    人格を磨くには数十年を要し、学識を身につけるには十年が必要だ。その点、書なら二年も学べば、それなりの文字が書けるようになる。
    切腹のシーンは、苦境にあっても腹を括って清々しく生きる人間の勁さがある。
    時勢というもの。かくの如く、北条氏がいかに良き領主でも、力及ばざれば滅ぼされるのが戦国の倣いである。そこは仕方ないのだろうが、彼らの場合、たぶんに時勢を読み違えた感がなくもない。
    ふん。豊臣の天下は、秀吉めの知恵と運が、忠義も正義も知らねえ欲深な下人どもの利害を糾合し、無理に成立させた砂上の楼閣よ。豊臣政権の根底ある虚妄性、脆弱性。

  • いつの間にか、もへえー(あえてひらがな(^^))は、ここまで出世しちゃった‼︎ 最初の最初、生まれ故郷にいた頃のただの暴れん坊のイメージはなく、この人は今風に言う「しごでき」な男。上にも下にも気が遣えてそりゃあ出世するわ。

    命を投げ出してまでも武功を立てるとか手柄をあげるとか、戦国の武士の気持ちはどうも理解できないのだけれど、もへえー(やっぱりひらがな(^^))は、農民出身だから、現代人にも理解できる感覚を持ち合わせていて、そこが面白くてたまらない( ◠‿◠ )

    この夏、ブクログの感想を書く時間ももったいないと思うほど、仕事の合間合間に、12巻まで一気に読んじゃった。ずーーーーーーっと、もへえーと一緒でなんとも楽しい夏でした‼︎

  • 待ってました!
    このところロビー活動ばかりが目立ってくすぶっていた茂兵衛推し(私)に朗報。小田原攻めでは大乱闘を演じてくれている。嬉しい。

    肉体的には、はや40代。私と同年代かと思うと、槍と槍のぶつかり合いは望めない。鉄砲100丁を率いる姿は知将の雰囲気さえ漂っている。心中では「おらぁコイツのことが嫌ぇだなあ」と愛らしい毒を吐きながらこうべを垂れ、家康とはツーカーの仲。さながらファミコンを支えたゲームボーイみたいな存在ではないか。
    何言ってるか分からないし。

    それにしても茂兵衛はどんどん大人になっていく。沈黙は金。雄弁は銀。実は人物分析に長けていて、余計なことを言わない。必要な言葉は人にズシンと響く。そして言葉よりも行動する。こんな歳のとり方がドタバタ族の自分にとっては理想だ。
    最近では小説のおかげか、茂兵衛のはるか後方ながらも方位を違わず近づいている予感がある。ゲームボーイはいつかSwitchになることを夢見て、あとは電池寿命との待ったなし。

  • 植田茂兵衛が少しずつ成り上がっていくのが毎回面白いのだが、今巻でも腹黒い家康、秀吉に翻弄され、年下の福島正則にも上から命令、意地悪される。そんなに簡単には上手くいかない中間管理職。そんな辛い立場に共感できる。
    それでも上役の家康の思考を読もうとするやり取りも面白い。
    小田原攻めについてもあまり知らなかったので、北条氏の終わりについても良く知れた。

  • 歴史的事実は基本的に歴史の教科書通りに進めながら、家康の人物像が、山岡荘八や、どうする?のそれらとは大きく違っている点も面白いが、本書は百姓上がりの中間管理職的な茂兵衛の物語にこそ惹かれるものがあって、ここにきてまた面白くなりそうな展開になってきた。

  • 裏で誰がどう動いてるか、油断してたら、まるっと飲み込まれてしまう。

  • 最後の決戦『小田原合戦』に参加する茂兵衛、相変わらずの鉄砲百人組組頭だが、家康から頼りにされ、各地に回る茂兵衛。娘、綾乃のもへえ呼びを無くそうと頑張るがなかなか直らない、、、
    今回は山中城や韮山城を攻める茂兵衛。山中城では畝堀などに苦戦するも、なんとか撃破。しかし、家康に韮山城の城主、北条氏規を救えとの命。敵ではあるが命を救わなければならない。苦戦するも、北条氏規が降伏。無事任務完了。領地も増え順風満帆な生活を始める。奥州征伐も楽しみです。【小6】

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著者プロフィール

神奈川県出身。2000年に「連弾」が第25回城戸賞に入選し、経塚丸雄名義で脚本家デビュー。16 年「旗本金融道」シリーズ(経塚丸雄名義)で時代小説家デビュー。17 年『旗本金融道(一) 銭が情けの新次郎』で第6回歴史時代作家クラブ新人賞受賞。21年「三河雑兵心得」シリーズで「この時代小説がすごい! 2022年版」文庫書下ろしランキング1位。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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