ごんげん長屋つれづれ帖【八】 初春の客 (双葉文庫)

  • 双葉社 (2024年3月13日発売)
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本 ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784575671940

作品紹介・あらすじ

根津権現社にほど近い谷中三崎町の寺で、行き倒れの若い女が見つかった。女は激しい折檻を受けていたらしく、医師である白岩道円の屋敷に運び込まれたという。目明かしの作造から、女がうわ言で、娘のお琴への詫びを口にしていたとの話を聞いたお勝は、女に事情を質すべく、道円の屋敷に足を運ぶのだが――。くすりと笑えてほろりと泣ける、これぞ人情物の決定版。時代劇の超大物脚本家が贈る、大人気シリーズ第八弾!

感想・レビュー・書評

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  • 女手ひとつで三人の子供を育てるお勝の奮闘物語です。

    時は、文政二年(1819年)の冬。

    江戸は根津権現社の南側にある質舗「岩木屋」の番頭お勝39才は、根津権現社の近くの「ごんげん長屋」に住まいして、お琴13才、幸助11才、お妙8才の3人の子供たちを、女手ひとつで育てています。
    旗本屋敷に奉公に出た時に、当主の手が付いて生まれた我が子と引き離されたお勝は、八年前、神田の火事で根津に避難してきて身寄りをなくしたお琴を引き取り。その後、孤児になった幸助や山門の下に捨て置かれたお妙を引き取って育てています。

    【ひとり寝】
    お勝は、子供たち三人を連れて幼馴染みの近藤沙月(さつき)がやっている、香取神道流の剣術を指導する近藤道場へ泊まり込みで遊びに行った。幸助が、剣術に興味を持ち、将来は武士になるといいだした。
    たまたま道場に稽古に来ていた、書院番頭の建部家の跡継ぎ建部源六郎と会い、気に入られて屋敷に遊びに行くと言い出した。建部源六郎は、お勝が、建部家に奉公に出ていた時に当主の手が付いて生まれた子供であった。そのことを隠していた。だが、幸助は、近くの子供に喧嘩で負けて剣術に興味をなくす。➡お勝がホッとする。

    【お直し屋始末】
    「よろずお直し 要助」の看板を掲げて、道具の修繕を行う要助のもとに、九年前に逃げた女房のおつやが無心にやってきた。要助は、おつやと所帯を持った時に、したむきに仕事に励んだ。おつやにとっては、自分を振り返ることもなく、仕事に打ち込む要助をはがゆく、ものたりなく、とうとう家を出て行った。
    落ちぶれたおつやは、他に頼るところとてなく要助の所に来る。おつやは、所帯を持った時に、一緒に笑い、喧嘩をしたかったと、涙ながらに話す。要助は、てもとにある金を全ておつやに渡すと。その金でおつやは自立していく。➡いい話だ。

    【不遇の蟲(むし)】
    芝の料理屋「中田屋」を営んでいた長三郎は、奉公人に小さいことまで指示をしてそれを守らせた。が、後を継いだ正太郎は、奉公人の声を聞き、自由にさせた。長三郎は、店の格が落ちるのを心配して激しく反対をした。
    娘の安乃は、店に野菜を納めていた農家の竹松を好きになったら。竹松を出入り禁止にした。とうとう長三郎は、居場所がなくなり隠居所を引き払い長屋に引っ越した。そこでも怒りまくった。そこに竹松安乃夫婦が、子供を連れて十五年の無沙汰を詫びると、長三郎が激しく泣く。➡寂しかったのかな。

    【初春(はつはる)の客】
    年が明けて正月。谷中三崎町の寺で、行き倒れの若い女が見つかった。女は、夜鷹のおひわという。おひわは、うわ言で、お琴への詫びを口にしていた。話を聞くと、九年前に神田の火事の時に、お店のお嬢様を連れて根津権現様の境内に逃げてきたが、お店が心配で、お琴お嬢様を残して神田に戻ったら。
    主夫婦が焼死したと知り根津に戻ったが、お琴お嬢様に会えず。そのことがいまも悔いていると。なお、ごんげん長屋に新しく家主の喜多村の台所女中として奉公することとなった、お栄19才が住むこととなりました。➡不思議な縁だね。涙がポロリと。

    【読後】
    読み終って涙が出てくる、初春の客が、よかった。字も大きくて、読みやすく、読後感がよく、江戸情緒のなかに、人情の機微を織り交ぜた物語が心に沁みます。此度は、お琴が孤児になった事情が明かされます。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~
    ごんげん長屋つれづれ帖シリーズ一覧
    09.藪入り飯
    08.初春の客   2024.08.15読了
    07.ゆめのはなし 2024.07.20読了
    06.菩薩の顔   2024.01.14読了
    05.池畔の子   2023.03.08読了
    04.迎え提灯   2022.05.16読了
    03.望郷の譜   2021.10.23読了
    02.ゆく年に   2021.08.03読了
    01.かみなりお勝 2021.04.29読了
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    「図書館」
    初春の客 ー ごんげん長屋つれづれ帖シリーズ8作目《文庫本》
    2024.03発行。字の大きさは…中。
    2024.08.14~15読了。★★★★☆
    図書館から借りてくる2024.08.09

  • 内容(ブックデータベースより)

    根津権現社にほど近い谷中三崎町の寺で、行き倒れの若い女が見つかった。女は激しい折檻を受けていたらしく、医師である白岩道円の屋敷に運び込まれたという。
    目明かしの作造から、女がうわ言で、娘のお琴への詫びを口にしていたとの話を聞いたお勝は、女に事情を質すべく、道円の屋敷に足を運ぶのだが――。
    くすりと笑えてほろりと泣ける、これぞ人情物の決定版。時代劇の超大物脚本家が贈る、大人気シリーズ第八弾!

    令和6年12月28日~31日

  • ほんと、つれづれだなぁ

  • 202403/

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著者プロフィール

一九四九年長崎県生まれ。会社勤めのかたわら倉本聰に師事し、七二年「おはよう」で脚本家デビュー。九七年、第十六回向田邦子賞を受賞。「鬼平犯科帳 」「剣客商売」「御家人斬九郎」「水戸黄門」など脚本作品多数。著書に「追われもの」「付添い屋・六平太」「ごんげん長屋つれづれ帖」「かぎ縄おりん」などの各シリーズがある。

「2023年 『小梅のとっちめ灸(三)針売りの女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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