実は、拙者は。 (双葉文庫)

  • 双葉社 (2024年5月15日発売)
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  • 本 ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575671995

作品紹介・あらすじ

深川佐賀町の裏店に住まう棒手振りの八五郎は、平凡かつ地味な男。人並み外れた影の薄さが悩みの種だが、独り身ゆえの気楽な貧乏暮らしを謳歌している。そんな八五郎は、ある夜、巷で噂の幽霊剣士「鳴かせの一柳斎」が旗本を襲う場に出くわす。物陰から固唾を呑んで闘いを見守る八五郎だが、一柳斎の正体が、隣の部屋に住まう浪人の雲井源次郎だと気づき──。影と秘密は江戸の華!? 期待の新鋭が贈る、書き下ろし傑作時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • どちらかと言えば時代小説はあまり読まないのですが、
    『木挽町のあだ討ち』
    『夫には 殺し屋なのは内緒です』シリーズ(第3弾が待ち遠しいですね!!)
    にとても魅了されたので、面白そうな時代小説を物色していると、

    面白い小説を読みたいなら絶対買うべき!
    小説は3,000冊以上読んできましたが、
    こんな物語は初めて読みました!
    -八重洲ブックセンター 内田俊明さん

    と書いてある帯を見つけ、書店員さんが推薦するのならば間違いないだろうと思い、
    本書『実は、拙者は。』を読んでみることにしました。

    読んだ感想ですが、
    帯に偽りなし!(内田さん「ありがとうございます」)
    本書を選んで大正解!
    非常に面白く、楽しい時間を過ごすことが出来ました。

    本書は江戸幕府八代将軍徳川吉宗の時代、人情豊かな深川を主な舞台としており、
    登場人物全員に、絶対知られてはいけない「裏の顔」があるという設定が絶妙であると共に、物語の鍵となっています。

    八五郎:棒手振り(裏の顔:村上の「犬」)浜乃に惚れている
    村上典膳:定廻り同心(裏の顔:隠密影同心、小清河の部下)
    源次郎:浪人(裏の顔:鳴かせの一柳斎)侍ばかりを襲う剣士
    辰三:大工の親方(裏の顔:八ツ手小僧)ねずみ小僧のような義賊
    藤四郎:飾り職人(裏の顔:**)
    浜乃:藤四郎の娘(裏の顔:**)
    新さん:旗本の三男坊(裏の顔:**)
    小清河為兼:老中(裏の顔:**)

    さて、物語は、藤四郎の借金のカタとして監禁された浜乃を、八五郎と仲間たち(源次郎、辰三)がどうにかして救い出そうとするという展開を主軸としていますが、そこに村上と小清河が絡んできます。
    これ以上書くとネタバレになりますのでここまでにしますが、(それが人間だと言ってしまえばそれまでですが)裏の顔が「善」の人と、⬜︎⬜︎のような「悪」の人がいるということですね。
    本書は、「勧善懲悪」のテレビ時代劇を観ているように楽しめて、更にミステリー要素を上手く混ぜ込んだ「快作」だと思います。

  • コメディとミステリの両方をあわせ持つ不思議な小説でした。喜劇とも取れるし、チャンバラ時代劇とも取れる。読んでいて引き込まれる作品でした。

    八五郎のような影の薄さ。最高じゃないかよ。

  • 普段は時代劇物に読まないのですが
    皆さんのレビュー見て面白そうだったので図書館で借りてみました
    普段は登場人物の名前が頭に入っていかず
    避けていましたがこちらの小説は
    そんなことなく読みやすく面白かったです

  • 私の師匠から気楽に読める面白い本があると言われ、手に取った。帯に「こんな物語は初めて読みました!」と書いてあり、ワクワクしながら読み始めた。

    時代物でありながら、平易な文章であり、それでも文章には惹きつけるだけの魅力のある表現たった。
    内容も面白い。影の薄い八五郎のキャラクターも好感が持てる。仄かに恋心を寄せる浜乃、浜乃の父藤四郎、隣の浪人雲井源次郎、辰三親方、長屋の住人それぞれに裏の顔があるのも面白い。

    そして八五郎の正体も実は・・・
    しかし、最後には徳川吉宗まで出て来た。
    全ての章が「実は・・・」で、その副題に意味があった。これシリーズにならないかなぁと思った。

  • 語り手・主人公の「間者」八五郎が稀にみる影の薄さを発揮し身の回りの人々の裏の顔を『たまたま』知って事件に巻き込まれていく。

    時代小説だそうだか取っつきにくさはないです。王道の展開だし読みにくい言葉もなく、話し言葉もたぶん現代風。よってスラスラ読めて楽しむエンタメ時代小説といったところ。

    ほんとに小難しいことはなく、最後も予想どおりにいくのだろうなと安心して、いい意味で軽く読めて息抜きになる1冊でした。

  • よくできている一冊。

    舞台は花のお江戸、深川佐賀町。

    超、平凡で地味で影が薄い棒手振りの八五郎はある夜、見てしまった、知ってしまった、旗本を襲う幽霊剣士の正体を。

    翌る日に隣の部屋に住まう浪人を見る目が変わり、まるで家政婦は見たと化した八五郎が面白い。

    その後もカードをめくってヒッとなるように次々と明らかになる八五郎の周りのあの人この人の別の顔。

    一人頭悩ませドキドキする八五郎を笑いながら応援しちゃった。

    見事に絡み合う人間模様は実によくできているわ。

    最後のカードはまさかのあの人!

    影は薄くても周りは…実に濃いじゃん!

  • 江戸の街にヒーロー大集合のエンタメ時代小説。

    正直、かなり面白かったです。
    ぜひ続編があれば必ず読みたい小説です。

    『江戸の街は、決して人に知られてはならぬ裏の顔ではあふれている』
    キャッチフレーズにマッチした小説です。
    こんなにワクワクする小説は久々でした。

    各章で、一人一人の裏の顔が判明していき、物語がどんどん楽しくなります。
    また、江戸の時代の物や仕草など現代にない言い回しなどがあって勉強にもなります。

    一言で言えば、めっちゃ面白かったです。

  • キャラクターの個性が強すぎて面白い。
    主人公は特別影が薄く、その能力で色んなことを隠れて見聞きする中で、「あいつ、仮面をしてたけどあの声は…」「あいつ、声色を誤魔化してたけどどう考えても…」と、正体を見破っていくが、どれも主人公と仲良くしていた人や仕事絡みの知り合いだったりで、判明する度にお前もか!!と突っ込みながら、どいつもこいつも裏の顔がありすぎていっそ清々しくて面白い。

    悪役は清々しいほど悪役で、王道のハッピーエンド。たまにはスッキリした作品を読むのも悪くない。長編を読んで疲れた時にピッタリ。

  • いつも史実原作の作品が多い、白蔵さんですが今作はオリジナル作。
    表紙からコミカルな物だとイメージしたが、その題名、各章の副題もなるほどの物語。
    黒いユーモアに翻弄される八五郎が不憫でもあるが、意地悪く楽しめた。
    どうしても同じパターンで展開していくので、つい黒幕については先読みしてしまったのは仕方ないか。
    最後のあの人はホントの最後まで読めなかったけどね。
    気持ちの良い痛快作品でした。続きは期待できないけど、またまた白蔵さんの次回作品に注目したくなった。

  • 江戸,棒手振り八五郎の周りは怪しい奴だらけ。世俗に紛れる格好に裏の顔。隠密同心,幽霊剣士,くのいち,大泥棒。一柳斎と典膳の誇りをかけた真剣勝負が痛快。

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著者プロフィール

1978年埼玉県生まれの一男一女の父。メーカー勤務のかたわら、2015年頃から本格的に小説を書き始める。2019年、Nirone名義で執筆した小説「わたしのイクメンブログ」が漫画化(全3巻・完結)。2020年「松の廊下でつかまえて」で第3回歴史文芸賞最優秀賞を受賞(「あの日、松の廊下で」に改題し文庫化)。

「2023年 『【文芸社文庫】 桶狭間で死ぬ義元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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