木皿食堂2 6粒と半分のお米 (双葉文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575714739

作品紹介・あらすじ

私たちは物語をつくる。また明日も生きてみようって、思ってもらえるように―。夫婦ユニットの脚本家、そして小説家。物語の力を何より信頼しているふたりが、日々の生活のなかで紡ぐコトバの数々…。心の襞に染みいるエッセイをはじめ、創作の源がわかるインタビューや、俳優・佐藤健との本音対談、そしてラジオドラマのシナリオ完全版などを収録。まるごと一冊、生きたコトバの滋味を味わい尽くせる、「木皿食堂」シリーズ第二作!

感想・レビュー・書評

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  • 木皿さんのごった煮本パート2。

    前作とおんなじような構成。
    神戸新聞に連載されたエッセイ。
    おふたりが創作背景を語る短いインタビュー。
    ドラマ『Q10』で主役を演じた佐藤健さんとの対談。
    奥さまの和泉年季子さんが行ったシナリオ講座。
    解説、書評、映画評が数本。

    ドラマ『すいか』を正座して見ていた頃から、木皿さんの描く‘フィクション’は現実世界になじめない私をつかの間救いだし、「大丈夫、大丈夫」となだめてくれた。‘フィクション’から現実に帰って来るときは心に‘木皿フィルター’が掛かっているので(笑)世界が前より優しく輝いて見える。

    ‘フィクション’の役割のひとつってそれじゃないかな、と思う。

    おふたりの紡ぎだすエッセイなどの文章にも同様の‘フィルター’を掛けてもらえる。

    ‘世界は「どうせ」で縮みゆく’
    ‘後悔しない方法は死ぬほど考え抜くこと’
    の言葉が印象に残った。

    行き詰まっている人、心が疲れている人におすすめです。
    癒されながらもパワーがもらえます。

  • すごく嬉しかった。60代のご夫婦作家さんが、若い人のことも思って作品をつくってくれていることが伝わる内容。今が苦しくても、大人になれば気持ちを楽に持てるようになる時が来る。
    大人になった今、この本が読めたことが嬉しい。
    「日常」と「死」について、それはどのようなことなのか、もっと知りたいと思った。

  • ・人の気持ちは、光の速度の17倍の速さで移り変わってゆくと、仏教の本に書いてあるそうである。気持ちがそんなに目まぐるしく変わってゆくのなら、コトバの方も目まぐるしく変わるものだろう。生きているコトバだけがコトバなのである。そうじゃないコトバは受け流してもいいと、私は思う。

    ・最近、仕事が忙しくなって、なかなか本も読めない状態が続いている。なので、思い切ってメールをやめることにした。ケータイからも、パソコンからもアドレスを削除してしまうと、今まで何だったんだろう、というほど静かになった。本当に用がある人だけから、ファックスや郵便で要領よくまとめたものが送られてくる。けっこう儀礼的なやりとりが多かったんだなあと、あらためて思う。不思議なことに、そんな生活を始めると、人によく会うのである。会って、少し立ち話をして,バイバイと別れる。なくても大丈夫と、自分で確認するのは、そんな悪いことではないような気がする。

    ・向田さんは「日常」を描く作家だと思う。そして、私たちもデビュー以来、書き続けてきたテーマは「日常」だ。
    違うのは、その日常の向こうに何を見ていたかである。私たちの作品は日常の向こう側に「死」を見ている。向田さんは、おそらく「セックス」を見ていたのではないかと思う。でも、たぶん、それは同じことなのだと思う。死もセックスも、どちらも逃れることができないものだ。なのにそれらは、日常から遠ざけられ、あたかも、そんなものはないような顔でみんな暮らしている。

    ・人間には本能的にまとめようとする習性があると思うんですよ。むしろ破壊する方が意識的にやらないとだめで・・・。だから、こんなに話を広げちゃった、どうしよう、みたいな不安はあまり感じないし、何とかなるもんです。描こうとしていることも、ずっと同じだから。

    ・物語もそうなんじゃないかなって思います。実態は何もないけれど、みんなで共有できる何かがあって、自分の居場所や帰る場所があると思えるだけで、人は生きていけるのではないかと。

    ・そうそう。今ここにある「現実」の中で一生懸命生きることも大事だけど、外から「現実」に揺さぶりをかけ、修正していくという二つの視点がないとダメだと思う。私たちが生き得る物語はほかにもたくさんあるんだということを見せていくことによって、だれもが立ちすくんでしまっている現状を打ち破ることができると思います。

    ・「ううん。おいしかった。すごくおいしかったけど、明るいみかんの色が悔しかった。来るの待っているのに届くと寂しい気持ちになった」

    ・「バスケのコートってさ、外から見ると小さいと思わない?」
    「え?そう?」
    「わかる。コートの中って、ゲームで必死になっとると,限りなく広いような気がするよね」
    「でしょ?中にいる人と、外にいる人って、コートのラインが全然違うように見えるんだよね」
    「家族もそうがな」
    「どういうこと?」
    「いやよぉ、一緒に住むのが家族だなんてよぉ、それは外から見てるヤツが言うことでよ、中にいる方は必死で、ラインなんで、どこにあろうが、もうどうだっていいべな。オレは、愛媛までがわがうちだと思うこどにすっぺよ」

    ・「逃げるってことは、生きのびる方を選んだってことだ」

  • 脚本家木皿泉のエッセイ、対談、書評、シナリオ、などなど第二弾。/最近は全く売れないというペナント屋に売ってた「地球」と言うペナント。/まず、信頼関係があって、コトバはその場で初めて機能するものである。/人の気持ちは、光の速度の十七倍の速さで移り変わってゆくと仏教の本に書いてあるそうである。/高倉健さんを描いた「男の中の男」/お前まだバレてないのかと言われゾッとした男を描く「秘密を開く」/「寺内貫太郎一家」が向田ドラマの最高傑作/この世のほとんどは、どうでもいいことと、どうにもならないことでできている。(Q10)/今ここにある「現実」の中で一生懸命生きることも大事だけど、外から「現実」に揺さぶりをかけ、修正していくと言う二つの視点がないとダメだと思う。/脚本家和田夏十。市川崑監督の妻。/岩井俊二監督のナレーションもなく字幕だけのドキュメンタリー「市川崑物語」/シナリオ「逃げるってことは」にはグッときた。特に、バラバラに暮らしてる家族が、東京でオリンピックを見るために集まり、バスケを見ながら、「コートの中では、みんな、必死にボールを追っていた。ふいに中の人たちが家族に思えた。ボールは子供だ。その子供を取られまいとかばいながら、力の限りジャンプする。子供を自分の頭より高く差し上げる。それは、まるで生きる方へと押し上げているように見えた」にグッときた。

  • 木皿泉さんの優しさに触れると、
    なんか泣きそうになる。
    日常ってすごいんだって気づかされる。

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著者プロフィール

夫婦脚本家。ドラマ「すいか」で向田邦子賞、「Q10」「しあわせのカタチ~脚本家・木皿泉 創作の“世界”」で2年連続ギャラクシー賞優秀賞。他に「野ブタ。をプロデュース」等。著書『二度寝で番茶』など。

「2020年 『さざなみのよる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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