- Amazon.co.jp ・マンガ (214ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575839418
感想・レビュー・書評
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すずの知らない遠いところではじまった戦争は、だんだんとすずの生活に迫ってきます。少しずつ失われていく大切なこと。それでもいまある日常を、一生懸命生きるすず。そして、戦争が終わったときの、すずの強烈なことば。
派手な戦闘も、戦場も出てきませんが、真に迫る戦争の記録です。けっして声高ではないけれど、じんわりしみてくる恐ろしさがありました。一番失いたくないもの、失わせてはいけないものが、ここにありました。
扉には「この世界のあちこちのわたしへ」。いまでも戦争や争いは絶えず、犠牲になった人たちにはそれまでの生活がありました。今でも「すず」は世界中のどこかの片隅で、日々を送っているのです。 -
この人の絵は、いいなあ。
まるでエッチングのような線の重なりで全てを表現する。
登場人物の表情や台詞、物語自体もそうなのだけど、
温かくて、荒削りで、でもとても丁寧で。朴訥な世界。
独特の画力は、驚嘆に値すると思う。
こんな風に世界を見、接することができるというのは羨ましい。
戦時下の人々の生活というものが、よく分かる。
きっと、ほとんどがこうして淡々と、日々をただ暮らしていたのだろう。
いかなる時にも、生活がある。それが人間社会というものなのだなあと思った。
反戦を声高に叫ぶのではなく、戦時下をドラマチックに彩るのでもなく、悲惨さを訴えるのでもなく、こんなにも普通の情景に、普通に戦争が入り込んだ作品は、初めてだった。
楠公飯の回がお気に入り。 -
胸に響いて切ない。
「うちを見つけてくれてありがとう」 -
「夕凪の街 桜の国」が戦後を描いていますが、こちらは戦中。広島の呉が舞台です。
原爆が投下された当時が舞台。こうのさんの、やさしいタッチで家族の物語が描かれてます。
このタイミングで読めて良かった。 -
後編は一気読み。
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戦中戦後の世相を、軍都呉へ嫁いだすずを主人公に柔らかなタッチで描きだす一冊。
いろいろあってもすずさんの朗らかさが印象に残る上巻とちがって、空襲・原爆・身近な人の死にすず自身に降りかかる災いと、悲劇の色は隠せない下巻。怒り、慟哭するすずさんには驚いてしまった。
みんなどこかに苦しみや悲しみ、世の中や自分自身への違和感を隠しながら生きている。それでも人の心の温かさと未来への希望を残して物語は終わる。
その日常へ涙と変わらぬ微笑みを。 -
・哲さん訪問の時の周作さんの行動、冷静に考えりゃヤバすぎる。そりゃすずさん怒るよね
・鬼いちゃんシリーズたまらなく好き笑
・戦死して紙切れになって帰ってきた時でさえ全員「お帰り鬼いちゃん」って言ってるのほんと笑う。この悲しみの中のユーモアは本作品の大きな魅力。
・りんさんがすずさんが知ってることに気付いてるのかどうか、気になる。。
・ともかく、すずさんの中で一応の解決を見たようでよかった。
・周作さんもリンさんの消息を頼まれた時に気付いてるのかどうか…?
・周作さんが訓練に行ってしまったあと、周作さんと同じ姿勢で寝っ転がるすずさんとか、作者の心理描写がもはや漫画の域を超えている。
・黄リンを爆薬に使ってたのか。。確かに自然発火するもんな。テルミット反応とか、ここで化学の知識を思い出すとは。
・径子姉さんの「kudokudo」を板チョコにするセンスたまらない
・今更気づいた伏線回収!!一番最初の人さらいの化け物がまさかの鬼いちゃん…!?なのか…??
・「隣に眠る人の夢の中すら知りそびれ」で周作さんが映されるんは複雑な気持ちになる。。知らなくても、知っていても、生活は続くんだ。
・最後の女の子の場面は映画オリジナルだったのか。
・これを見ると(さらにいくつもの)も見たくなる。見よう。 -
広島から少しだけ視点をずらし、呉から見た戦争風景を描くことで、”はだしのゲン”とはまた違った残酷さを炙り出すことに成功している。絵のタッチと相俟って、無辜の市民のほんわか日常をベースに物語が展開されるだけに、気付かぬうちにどんどん非日常へと追いやられた当時の状況が、リアルに映し出されている。