- 本 ・マンガ
- / ISBN・EAN: 9784575841602
感想・レビュー・書評
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いったい変身ヒーローの人間態が何か特訓して、変身ヒーロー自体が新しい技を使えるようになるのか。『ウルトラマン』では否。『ウルトラセブン』ではモロボシ・ダン=ウルトラセブンだったし、特訓なんて発想はなかった。そういうことが出てきたのは『帰ってきたウルトラマン』からかな。
まりかセヴンでは、セヴンはプログラム生命体と呼ばれている。きちんとした説明はないが、肉体を持たないソフトウェアだけの存在らしい。そのため人間に憑依して、いざというときには次元位相差エネルギーか何かを使って、まりかセブンになるらしい。このためまりかセヴンはまりかの身体能力をセヴンが補うという形になり、しばしば、その精神空間と思われるものが可視化されて表現され、ふたりがどつきあったり、くすぐったりして主導権争いをする。攻撃を食らったときには、逃げたり庇ったりして、一方だけがやられて、他方ががんばるといったこともある。
2巻ではどんくさいまりかをセンパイが特訓するエピソードがあったが、特訓の成果は活かされなかった。でもまりかもどんくさいばかりではなく、自ら技を編み出したりして、セヴンを驚かせる。ただし「今どうやったの?」「う〜んワカんない」。
まりかとセヴンの漫才も楽しいが、センパイのせいでサエちゃんと仲違いしてしまったまりかがそれを引きずりながら戦う回では、セヴンがとりなして、ちょっといい話。まあ、このセンパイがジョーカーではある。
『ウルトラマン』は成田亨というすぐれた造形家がヒーローばかりでなく怪獣の造形をになったからこそ成功したのではないかと思うが、『まりかセヴン』でも毎回怪獣を考えるのって大変と作者のあとがきにある。しかしながら現在のわれわれは豊かな怪獣文化を持っており、作者もそれを参照しているはず。
比較的単純な恐竜型から始まって、ネッシー、クラーケン、翼竜、群体、冷凍怪獣……。変身自在の無定型怪獣の登場が決まったとき、担当さんが「ニセまりかセヴン!そろそろいいでしょう」と言ったとか。そういう文化を担っているのが、ヘンタイの田子ノ浦センパイ。ありがちなオタクキャラかも知れないが、セヴンもセンパイの情報収集力には一目置いている。鈴森少佐のグラビアを探り当てたのもセンパイである。対怪獣戦ではオタク的知識を活かしてしばしば適切なアドバイスをする。
もっとも、まりかセヴンの正体を人に知られてはいけないのは、センパイによれば「ふつう、そうだから」。水着の女子高生を尻目に、戦艦の撮影に夢中、怪獣が近くに来れば、瓦礫が飛んでこようと何のその、よいアングル求めて危険は顧みない。まりかセブンの正体がまりかだと気づいたのは、膝の裏のカーブから。そもそも二人のなれそめはまりかの入学時にセンパイが膝の裏を撮らせてくれと寄ってきたのである。
先輩のキャラが立つほど、まともなサエちゃんのキャラが立つように、基本的に怪獣退治という路線から外れて話が進むことはないのがいい。「怪獣文化」を背景に、背筋をすっくと伸ばして立っているのだ。お下げはついてるけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あの2人はパードルにしか見えない。あ,オスプレイだオスプレイ。
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前々からすごい気になってたので購入。まず、話のテンポがすごい心地いいです。主人公のまりかとセヴン、ヘンタイ枠田子ノ浦、ツッコミのサエちゃん、地球の危機をすごい日常っぽく捉えてくれる軍隊のみなさんなど各キャラたちの会話がポンポンからみ合って、世界観に引きこまれます。
ノリは90年代アニメを彷彿とさせるし、ぜひ映像化してほしいなぁ。これはただの特撮モノじゃなくて普通の女の子の行動を巨大化したままでやっちゃうところが面白いですね。虫と戦うの嫌がったり、かわいい怪獣を愛でたり、すねて体育座りしちゃったり、そういった行動にまりかセヴンらしさが詰まってる気がします。
3巻のあとがきでもあったけど、この作品をみた特撮モノが好きな人はみんな田子ノ浦みたいなノリで見てるような気がしなくもないですね。
伊藤伸平の作品





