弟の夫(1) (アクションコミックス(月刊アクション))

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575846256

感想・レビュー・書評

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  • 子どもの頃から、セクシャリティーとかジェンダーとか強い関心を持ってきました。ブックパスの中でたまたま「弟の夫」を見つけたのですが、すぐハマりました。
    とてもおもしろく、これがもう何年も前に発表されていて、NHKでドラマ化もされていたというのに、全然知らなかったことになんだか落ち込んでしまったくらいです。

    田亀源五郎さんは、オカマルト等で調べたところでは結構ハードなゲイ・アートがメインみたいで、あの男性同士の緊縛ものと本作が同じ作者によるものとは俄かには信じがたいくらいです。
    本作でまず感じたことは、作者の温かさと誠実さです。押し付けず、真摯に向き合う弥一やマイクの姿に素直に感動しました。

    でも私が一番気になったのは、弥一と夏樹の離婚です。私が今まさに離婚協議中であり、今月中にも私は夫だけでなく小学生の娘を置いて、家を出ることが決まっているからです。現在のマンションから徒歩5分くらいのところに、ワンルーム・マンションを借ります。

    作者はなぜ、離婚家庭を描き、しかも世の中では珍しい、母親が家を出るタイプの離婚家庭を選んだのでしょう。この点はある意味、離婚業界のマイノリティーです。きっと何かしら思惑があったことでしょう。
    どなたか、この理由をご存知の方がいらしたら、教えてください。

    私は、いつか作者に会えるかもしれないと期待して、また二丁目に遊びに行きますー。

  •  田亀源五郎の『弟の夫』(アクション・コミックス)1巻を読んだ。仕事の資料として。
     海外でも人気の高いゲイ・エロティック・アーティストの著者が、初めて一般コミック誌(『月刊アクション』)に連載中の作品。

     ゲイの世界を描いたマンガは、これまでにもたくさんあった。
     山上たつひこの「至上の愛」(『喜劇新思想大系』の一編)あたりが嚆矢なのだろうが、その後は少女マンガの世界でさまざまな形で描かれてきたし(吉田秋生の『カリフォルニア物語』のゲイたちとか)、「BL」も広い意味ではゲイ・マンガといえる。

     しかし、自らもゲイである作者が、ゲイではない読者が大半の一般コミック誌にゲイのマンガを描くのは、本作が初だろう。その意味で、これは日本マンガ史の期を画す作品である。

     主人公・弥一(やいち)の双子の弟がカナダで客死し、翌月、「弟の夫」マイクがカナダから日本にやってくる(カナダは同性婚が合法の国であり、外国人も同性パートナーと結婚できる)。

     マイクは日本滞在中、弥一と娘の夏菜(カナ)が2人で暮らす家に住むことになる。
     弥一はノンケ(=ゲイではない)であり、マイクにどう接したらよいかわからない。
     戸惑いばかりの共同生活の中で、弥一はマイクを通じて、少しずつゲイに対する理解を深めていく。

     ……と、いうような話。
     ていねいかつスッキリとした絵が素晴らしい。また、ゲイに関する基礎知識などが、あからさまな啓発臭を漂わせることなく、ストーリーの中に自然な形で織り込まれている点も好ましい。

     ただ、私が本作の欠点だと思ったのは、主人公の娘・夏菜の描き方である。

     夏菜は小学校低学年という設定だと思うが、その年頃の女の子が、突然外国からやってきた見知らぬオッサンを、きたその日から家族の一員としてすんなり受け入れるなんて、あり得ないだろう。
     べつに「男と男が結婚するなんて、キモーイ!」とか言わなくてもいいけれど(それはそれで紋切型だし)、少しは戸惑いとか葛藤があってしかるべきではないか。
     本作でマイクの登場に戸惑うのは弥一のみであり、夏菜はまったく戸惑わない。そこにリアリティの欠如を感じる。

     弥一とマイクの人物像には十分にリアリティがあるのに、夏菜だけが「絵空事のキャラ」という印象を受けてしまうのだ。
     これからのストーリーの中で、そのへんの不自然さが払拭されていくことを願う。

  • 想定外の良作
    ゲイである双子の弟がカナダで亡くなったが
    その夫が訪ねてくる。それに主人公がどう向き合うかを
    丁寧にまとめられている
    主人公自体、妻と別れて子供と二人暮しなので、
    どちらかというとマイノリティである点や、
    娘がこの状況を楽しむのも、ゲイ云々よりも自分に
    カナダ人の親類ができたと言う驚きが勝ったなど、
    受け入れやすさを細かく設定している
    1巻では主人公がなかなかこの自体を受け入れられないが
    父親としてどう振る舞うかを真剣に考えて、徐々に考え
    をシフトしていくなど、実に心地良い流れだ
    主人公が鏡に映るシーンも多いのは、暗に弟を暗示して
    るのだろう
    唯一納得できないのは、こんな生活であんなマッチョに
    なれるわけがないという点だけである

  • 弟がカナダで結婚した相手、マイクが日本へやってくる。娘の夏菜はカナダ人の叔父さんに大喜びですぐに順応するも、弥一は戸惑い、カナの反応から学ぶことも多い。
    ゲイの話だが、うるっとくる…

  • 以前ドラマ化されていて、見たいなと思っているうちに見そびれて終わってしまったので、まずは原作からと手に取ってみた。
    思った以上に生々しく、自分が恋愛対象ではない性別の相手の見え方って男性はこうなんだなと考えさせられた。
    男性作家がこういうテーマを描くこと自体珍しいと思うし、この作者の作風だけではなく切り取り方や感じ方、嫌悪感みたいなものが女性とは違うのかもしれないと感じた。
    正直女性側からすると、恋愛対象が女性でない男性は、普通の男性より安全な感じがする。
    痴漢や性被害が頻繁にあるような世界で、対女性のそういう犯罪は正当に裁かれないと感じることも多い状況で、女性に性欲が向かない相手を安全だと感じる女性は私だけではないと思う。
    男性が男性から(しかも自分より力が強そうな)、自分が希望しなくても一方的に好かれてしまったらということを想像して恐怖を感じるという体験はそうないだろうし、そういう視点でも生々しく感じてしまって続巻を読むのをちょっとお休みしている。
    この作品は純粋に同性同士の恋愛に接した異性恋愛の世界の人の話で、素直に楽しめばいいと思うのだけれど。

  • このうちとまれも読んで欲しい。

  • 子ども本の森にて読了。

    タイトルに「?」となり、手に取ってみた。
    同性婚の話だけどよくある教育的な本ではなく、
    ほんとに普通の漫画。
    読んで良かった。感動した。

    こういう本を子供が意識せず手に取れる場所に
    置いてある 子ども本の森 は良いなーと思う。

    コロナだから仕方ないのかなとも思うけど、もっと気軽に入館できると更に良い。

  • いい歳こいて親の遺産で喰ってるようなもんだし… 近代以降、世界で初めて同性同士の結婚が合法になったのは、2001年のオランダ。 グロサリー…ああ食料品店か チーズアンドマカロニ ハズバンド夫…旦那さんってことだ ちょっと整理_してみよう_つまり俺は_結婚とかカップルとかいうものを_無意識のうちに_男と女という関係を基準に考えていた_…ってことだ_当たり前のようにそう思いこみ_全てをそこに当て嵌めていた ピンク色の逆三角形=ピンク・トライアングル=ゲイプライドやゲイライツ運動のシンボル 第二次世界大戦時、ナチス・ドイツによるホロコーストでは、ユダヤ人と同様に多くのゲイが、強制収容所に送られました。

  • 自分の双子の弟は家を飛び出てずっと海外で暮らし、現地で同性婚をして、そして亡くなり、その「夫」が日本にやって来ることになった…

    今時のジェンダーに対する意識とそういったものにどう接していいか分からずにいる主人公の葛藤の描き方、LGBTを考える根底としてこういう作品が(良い意味で)一般の人の目に触れる機会がもっとあるべきだなと思う

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著者プロフィール

ゲイ・エロティック・アーティスト。
1964年生まれ。多摩美術大学卒業後、アート・ディレクターをしつつ、1986年よりゲイ雑誌にマンガ、イラストレーション、小説等を発表。
1994年から専業作家となり、ゲイ雑誌『G-men』(ジープロジェクト)の企画・創刊にも協力。
同時に、日本の過去のゲイ・エロティック・アートの研究、およびその再評価活動を開始。
また、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツなどのゲイ・メディアでも活動開始。
2006年『G-men』企画より離脱。
2015年、『弟の夫』で第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。
2022年、フランスPrix Sade賞(サド賞)

●マンガ
『嬲り者』(ビープロダクト)
『柔術教師』(ピープロダクト)
『獲物』(ジープロジェクト)
『銀の華(上・中・下巻)』(ジープロジェクト)
『PRIDE(上・中・下巻)』(ジープロジェクト発行、古川書房発売)
『田亀源五郎短編集 天守に棲む鬼/軍次』(ジープロジェクト発行、古川書房発売)
『田亀源五郎[禁断]作品集』(ポット出版)
『ウィルトゥース』(オークラ出版)
『君よ知るや南の獄(上・下巻)』(ポット出版)
『外道の家(上・中・下巻)』(テラ出版発行、技術と人間発売)
『髭と肉体』(オークラ出版)
『童地獄・父子地獄』(ポット出版)
『田舎医者/ポチ』(ポット出版)
『筋肉奇譚』(オークス・コミックス)
『銀の華 復刻版(上・中・下巻)』(ポット出版)
『冬の番屋/長持の中』(ポット出版)
『エンドレス・ゲーム』(ポット出版)
『奴隷調教合宿』(ポット出版プラス)
『嬲り者〈復元完全版〉』(ポット出版プラス)
『弟の夫(1〜4巻)』(双葉社)
『僕らの色彩(1〜2巻)』(双葉社)
「GUNJI」(H&O Éditions/フランス)
「ARENA」(H&O Éditions/フランス)
「Goku - L’île Aux Prisonniers (3 volumes)」(H&O Éditions/フランス)
「Racconti Estremi」(Black Velvet/イタリア)
「LA CASA DE LOS HEREJES 3 volumes」(Ediciones La Cúpla/スペイン)
「VIRTUS」(H&O Éditions/フランス)
「VIRTUS」(Ren Books/イタリア)
「The Passion of Gengoroh Tagame」(PictureBox/アメリカ)
「Endless Game」(Bruno Gmünder/ドイツ)
「Gunji」(Bruno Gmünder/ドイツ)
「L’inverno del pescatore」(Ren Books/イタリア)
「Fisherman’s Lodge」(Bruno Gmünder/ドイツ)
「Cretian Cow」(Massive/アメリカ)
「The Contracts of the Fall」(Bruno Gmünder/ドイツ)
「Passion of Gengoroh Tagame: Master of Gay Erotic Manga (expanded edition)」(Bruno Gmünder/ドイツ)
「아우의 남편」(Imageframe 길찾기/韓国)
「Le mari de mon frère」(Akata/フランス)
弟之夫 (臉譜出版/台湾)
Der Mann meines Bruders (Carlsen/ドイツ)
My Brother’s Husband ด้วยสายใยรัก (Dexpress/タイ)
O Marido do meu Irmão (Panini Brazil/ブラジル)
Chồng Của Em Tôi (Sky Books/ヴェトナム)
El marido de mi hermano (Panini Mexico/メキシコ)
El marido de mi hermano (Panini España/スペイン)

●小説
電子書籍Kindle版『デカとヤクザとニンジンと 田亀源五郎小説作品集』(Bear’s Cave)
電子書籍Kindle版『田亀源五郎小説作品集SINGLE 工事現場の夜』(Bear’s Cave)

●評論
『ゲイ・カルチャーの未来へ』(Pヴァイン)

●画集
『日本のゲイ・エロティック・アートvol.1 ゲイ雑誌創生期の作家たち』(ポット出版)
『日本のゲイ・エロティック・アートvol.2 ゲイのファンタジーの時代的変遷』(ポット出版)
『日本のゲイ・エロティック・アートvol.3 ゲイ雑誌の発展と多様化する作家たち』(ポット出版)
「THE ART OF GENGOROH TAGAME」(H&O Éditions/フランス)
Gengoroh Tagame Sketchbook(Massive/アメリカ)

「2023年 『外道の家 下 【復刻版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

田亀源五郎の作品

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