この世界の片隅に (上) (アクションコミックス)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (142ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575941463

感想・レビュー・書評

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  • 定期的に読み直す1冊。

    上は戦争が他人事のように感じつつもヒタヒタと近づきつつあるのが垣間見える…

    すずさんと水原くんとの白ウサギのシーンはグッときますね。

    中へ…


    ぜひ〜

  • 流石の出来ですね。
    まず、絵がすばらしい。

    そして、素朴でマイペースでやさしい主人公の性格が、戦争という暗雲立ち込める時代背景の中にあっても、ささやかな「日常」を立ち上がらせてくれる。

    また戦前の結婚、家族の形についても、当たり前だけど、現代との違いのリアルさが、感慨深い。

    また、上しか読んでいないので、また、映画も観ていないので、この後どうなるかわからないけれど、意外とドラマがあるのではとおもっています。

  • 絵を描くのが大好きでおっとりした少女すずが、やがて結婚し様々な葛藤を抱えながら成長していく様子を丁寧に描いている。それ故に、日常の生活が徐々に戦争に浸蝕され、悲劇を乗り越えて再生していく様子が却って胸に沁みた。地元呉が舞台でもあり愛着が深い作品である。

    劇場版アニメも公開翌日に早速鑑賞したが、正直期待外れであった。その原因は、『ユリイカ』平成28年11月号「特集*こうの史代」で再確認することができる。

    「対談 片隅より愛をこめて」において、こうのは次のように発言している。

    「映画としてまとめるうえでいろいろカットしなきゃいけなかったという話は聞いていたので、てっきり(略)こまかいオチを切ってひとつながりの物語にするのかと思ったら、そういうことはちゃんと残っているんですよ。(略)物語上は別になくてもいいのにすごく丁寧に描いていて…むしろもっと重要そうな部分がバッサリなくなっていたのでびっくりしました(笑)」

    例えば、すずの夫周作とリンとの関係がごっそり除かれたため、自ら求婚してすずと結婚しておきながら周作が祝言の席で強張っている謎のシーンだけが残ることになった。原作を読んでいない観客にとっては不可解であったことだろう。

    この点について、監督の片淵須直はインタビューで次のように答えている。

    「すごく単純に、大事なところをあえて切ろうと思ったんですよ。そうしたら、『そこをつくらないと話しにならないよ』って文句を言うひとが出てきて、また続篇をつくれるかもしれない(笑)」

    この後監督独自の解釈を展開しているが、いつも思うのは、尺の問題はあるにせよどうしてこういう人たちは自分の勝手な解釈で原作を歪めてしまうのだろうかということである。確かに、映像は素晴らしかった。しかし、物語としては極めてストレスフルだったと言わざるを得ず、続篇が必要となる「不完全な」作品を見せられた観客に対して監督としてどう責任をとるのか。笑っている場合ではないだろう。

    もちろんアニメを見るのもよいが、その前に、またはその後にぜひこの原作をご一読頂きたい。

  • 戦争中のお話でありながら、淡々と描かれている日常は優しさと笑いに満ちていた。そこに、ひとつふたつと落とされていく黒い影。みんな何かを失い、何かを探しながら、人待ち顔で過ごしている。

    それでも笑う。立ち上がる。
    弱くて強い人間の姿は、今も昔も変わらないのだなぁなどとぼんやり思う。

    原発事故の直後に福島から両親が避難してきて、家族全員がそろい深刻な状況だったのに、何かくだらないことで皆で大笑いしたときがあった。その瞬間に、根拠もなく大丈夫、頑張れると思えて、あんなに落ち込んでいたのに人間て強いなと感じたのを思い出す。笑わなきゃやってられない、そんなときだってある。そして笑いの、笑顔の力はすごいのだ。作者のこうのさんは、それをよく知っているのだなぁと思う。

    胸がしめつけられる、戦争を知らない世代には信じ難い時代。
    けれど、今だってこれからだって、何が起きてもおかしくない。
    大好きな人たちと笑い合える時間は宝物。
    ケンカは持ち越さないほうがいい。
    ここ2年、毎日自分に言い聞かせるようになった。

    この世界の片隅の私たち。世界のきれはし。どこにでも宿る愛。
    「誰でもなにかが足らんぐらいで、この世界に居場所はそうそう無うなりゃせんよ」
    印象的なフレーズが、頭の中をぐるぐる回る。
    後半は泣いてばかりで、きちんと消化するには時間がかかりそう。

    絵を描くのが好きでちょっとぼんやりしたすずちゃんとは、何だかもう知り合いのような気持ち。呉に遊びにいったら出くわしそうな。それくらい、すべてが生き生きと描かれていた。

  • 主人公すずの結婚生活が微笑ましい。絵も好き。

  • 人からもいい映画だと勧められていたし、妻も見たがっていたので久々に妻といっしょに映画を見た。暗い戦争中の時代を描いたもので、広島から呉の周三の元に嫁いでくる主人公のすずの不幸や辛い身内の死もあるが、すず(主人公)の天然さにまわりの明るさ、愛が加わって戦争中とは言えほのぼのした気持ちを見る者に抱かせる。号泣はしないが、ほろっとさせられるところもある。ただ、映画を見ていてちょととわかりにくところがあった。すずが迷い子になったとき助けてくれた遊郭の女りんがその後どうなったか、りんと夫の周三との間にはなにがあったのか、すずの幼なじみの哲が軍の休みといってお風呂を兼ねて一泊しに来たとき、周三はなぜ哲が寝ている離れの部屋にすずを行かせたのか。あれは単に幼なじみ通しに夜通し語らせるつもりだったのか。すずの妊娠騒ぎがあったが、あれはどうなったのか等々。それで漫画の方を読んで見た。そうすると上の疑問がほぼ氷解したのである。要するに漫画は大人版、映画は万人を相手にした拡大版なのである。映画の一コマ一コマの細かな描写は漫画以上だが、物語を深く味わうにはやはり漫画の方を読んでみなくてはいけない。

  • これはもう、しみじみと、ツライ。
    出てくる人たちみんな明るくて、必死に生きていて、
    でもその生き様が後世の私達から見ると、
    いかに薄氷を踏んでいたかよくわかるのでツライのです。
    (余談だけど、今の私達を未来の子孫たち-未来があるとすれば-が
    見るとまったく同じように感じるのかもしれない、とふと思いました)

    昭和ひとケタの子ども時代からはじまって、
    戦争色が過熱する19年20年へとつづいていく中で、
    主人公すずの小さなサークル(家族)がすこしずつ歪んでいく。

    そして私達(読者)はあの夏がやってくることを否応なく知っている。
    日本があの8月6日の朝に突き進むことを。
    (すず自身はその日より前に死ぬほどつらい事件が待っていますが)
    でも、当然ながら、当時を生きているキャラクター達は知らない。
    戦時中とはいえ、毎日はつづいていくものだと思っている。
    ひょっとしたら明日がないとは思ってるかもしれないけど、
    まさかぐにゃりと曲がった奇形の毎日がつづくとは、たぶん知らない。

    実際、毎日は、原爆が落ちた後も、昭和天皇が降伏宣言をした後も、
    粛々と、時に悲しく、だいたいが可笑しく、つづいていくのです。
    (終戦後に襲った台風のエピソードが秀逸でした。
    震災後の東北を襲う台風を思い出した)
    人間のちっぽけさ、そのちっぽけさの重みを噛みしめる大切さを、
    淡々と教えてくれるマンガです。

    とはいえ堅苦しくなく、すずのキャラクターもあって
    ほのぼの笑いながら読めます。
    だからこそ、つらさと悲しみが際立つのかもしれません。

  • 太平洋戦争中の広島県が舞台。当時の生活感や死生観を感じられる

  •  このマンガを初めて読み終えたのは2020年の4月でした。2020年の4月に何があったか。10年後の人はどう言うのか。この感想を書いているのは2020年の12月ですが、街から人が消えて、愚かな政治家がゴミだらけのマスクを配って「世帯」という言葉を思い出させたというのが、今のところの記憶です。
     ぼく自身はその頃、閉じこもってこのマンガとか読んでいたわけですが、読み終わったときに、なぜ、こういう世界が今描かれ、多くの人の共感を得ているのか不思議でしたが、日々、コロナの死者の数が数字化されて行き、お客さんを失って困窮していく小さな商店や飲食業の知り合いたちの苦境を、実際に目にする生活の中で、このマンガが読まれる理由が、少しわかったような気がしました。
     それにしても、このマンガが描く世界の片隅で健気に生きる人々をバカにするような、世界の真ん中で、声高にうそをつき続けながら、ふんぞり返っている方々というのは、なんとかならないものなのでしょうかね。
     感想をブログに書きました。覗いてみてくださいね。
      https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202012300000/

  • 上は、戦争が始まる前のお話。
    子どもの頃に出会った少年から見合いを申し込まれ嫁入り。すごく運命的なものを感じました。
    この時代の人の温かさが伝わってきます。そしてユーモアある。主人公ががむしゃらで、素敵な性格。続きが気になる。

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著者プロフィール

こうの史代:1995年デビュー。広島市生まれ。代表作は「さんさん録」や、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞作「夕凪の街 桜の国」、アニメーション映画のヒットも記憶に新しい「この世界の片隅に」など。

「2022年 『ぴっぴら帳【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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