この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

著者 :
  • 双葉社
4.47
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感想 : 216
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (148ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575942231

感想・レビュー・書評

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  • 昭和9年の幼少期を経て主に昭和18年から昭和21年1月まで、広島県江波から呉の北条家へ嫁いだ主人公すずの日常を描いた全3巻の漫画です。

    映画も素晴らしかったですが、漫画の方が登場人物のより深い関係性が描かれ読み応えがありました。途中途中にある当時の日常コラムも程良い小休止となり思わずニヤリとします(特に中巻の径子お姉さんの問答集)。

    ちょっと抜けたところもある主人公すずの話し方と性格が、この時代の喧騒を少し落ち着かせてくれます。国自体は戦争の渦にありますが、そこで暮らす人々はあくまでも自分の生活が中心。配給や物資の不足、故郷を離れる寂しさや人間関係の気苦労はあるけれど、モノの少ない生活に工夫を凝らし、何より一日一日を穏やかに過ごそうとする人々の姿が生き生きと描かれています。
    しかしその気持ちを裏切るように、読み進めていく度に戦争の影は刻一刻と日常に迫ってきます。それはすずも例外ではありません。

    私は戦争を歴史としか知らない世代です。この作品を通し、戦争のなかで“普通”に生きようとする人々の“普通”さと、その度量の深さと強さの一端に触れられた気がします。
    多くの人に、長く読み継がれてほしいと願ってやみません。

    ==================
    「みんなが笑うて暮らせりゃええのにねえ」

  • 普通の庶民が 当たり前に普通に生きていく
    それがかけがえのない 素晴らしいこと
    多くのものを亡くしながらも
    胸の温かさを失わぬ
    それが世界の片隅ならば
    片隅にこそ愛はあるのです

  • 2020.01.16


    映画を見た後に、原作を再読できてよかった。
    映画がいかに、原作を大切にしているかがよくわかったし
    そして「平和が良い」「戦争は良くない」とかいう一般論ではなく
    どこか抜けている、ほのぼのとしたすずさんという女性を
    こうも絶望と変貌させるだけの脅威をはらみ
    生活と命を根こそぎ奪っていく愚かさを、ありありと見せつけている。
    漫画は限られたページとシンプルな絵ながら、それが痛いほどわかってしまった

  • (飛び去ってゆく。この国の正義が飛び去ってゆく...ああ...暴力で従えとったいうことがじゃけえ暴力に属するいうことかね。それがこの国の正体かね。うちも知らんまま死にたかったなあ)すずさん。あなたが死ななくてよかった。。。

  • 戦時中のストーリーでしたが、ある家族の出来事。

    画風もほのぼのチックで、時代の流れを想像しつつ読む感じ。

    すずのぼんやり(おおらか)さと、時代の辛さ哀しさ、どこにでも宿る愛、居場所、記憶の器として生きていくこと。
    いろんな想いが描かれてます。


    ドラマの方がラストの持っていき方とか好みでしたが、原作を読んでドラマも厚みを増しました。
    ドラマ見てなかったら絶対に読んでないマンガですが、読んで良かったです。

  • 中巻までは本土に戦争が入ってきて無いのであるが、ついに住んでいる場所が戦場となる。それもほぼ反撃できない一方的な戦いだ。状況は一変し、坂道を転がるように全てが破局的に悪化。終戦となる。
    陛下の玉音放送を聞いたすずさんが、敗戦を受入れられず言う。
    この国から正義が飛び去っていく
    ああ、暴力で従えとったいう事か
    じゃけえ暴力に屈するいう事かね
    それがこの国の正体かね
    うちも知らんまま死にたかったなぁ・・・

    彼女の無念さが良く現れていて、涙がでました
    少しでも多くの人が読んでくれたら嬉しいです。

  • 主人公のすずさんは大正14年生まれ。今も生きていれば93歳の年齢となる。物語の中では戦時中の生活の様子が描かれており、当時の人たちがどのように暮らしていたのかを知ることができた。
    物語の中で、「隣組」の歌が出て来る場面がある。もともとドリフの曲かと思っていたが、元ネタがあったとは知らなかった。
    この歌を知っているか職場の利用者さんに聞いてみると、知っていると言われ歌ってくれた。
    本当に物語で描かれていたような生活を送られてきたのかと思うと、胸にくるものがある。
    高齢者に関わる仕事をしている人は必ず一度は手にするべき本だと思った。その時代を生きてきた人たちを見る自分の目や気持ちが変わると思う。
    物語では、「居場所」という言葉がよく出てくる。
    普段の生活を安心した気持ちで過ごせ、日常となる(とする)こと。それが幸せなのかもしれないと感じた。

  • 空襲で多くを失った、けれどその中でも挫けず生きようとする強さを持った人々。
    全ての謎が解き明かされた瞬間、心が締め付けられました。最後の終わり方もとてもよかった。

  • 最後まで読んだあと表紙を見るとつらい。春美と右手を失って、径子に責められて、やっと持ち直したと思ったら、戦争が終わって、価値観が反転して、一般市民は気持ちの持って行き場に困る。翻弄されるても、普通の人たちなりの幸せで、生活は続くのです。ラストがカラーページになってほんと良かった。

  • 「この世界の片隅に(下)」こうの史代著、双葉社、2009.04.28
    155p ¥700 C9979 (2018.12.30読了)(2018.12.27借入)(2018.07.17/29刷)
    昭和20年4月から昭和21年1月までのお話です。
    アメリカ軍の空襲に備えてどのようなものを用意して、どのように対処したらいいのかが描いてあります。「夜間は白ハチマキをしめると安全である。」とも書いてあります。
    焼夷弾のなかまも紹介してあります。(7頁)「油脂焼夷弾」しか知りませんでしたが、「エレクトロン焼夷弾」「黄燐焼夷弾」「焼夷カード」というのもあります。特徴や対処法も書いてあります。
    呉工廠の明治から昭和20年までの歴史的変遷が紹介してあります。日本の軍部拡張とともに発展していっています。(11頁)
    すずさんの夫の周作さんが文官から武官になり3か月間軍事訓練を受けることになりました。昭和20年5月ともなると、兵隊が足りなくなっているんですね。
    北條圓太郎(周作の父)が、空襲で負傷して海軍病院に入院しています。すずさんと晴美さんが圓太郎さんの見舞いに行き、アメリカ軍の投下した時限爆弾の爆発で、すずさんは右手を失い晴美さんは死亡してしまいました。(37頁)
    昭和20年7月、呉も空襲で多くの家が焼けてしまいました。北條家は何とか残り、周作さんも訓練途中で帰ってきました。すずの妹のすみがすずの怪我の見舞いにやってきました。すみは帰るときに、右手がなくなって、北條の家の仕事ができないことでいづらくなったら広島に帰っておいでと言っていきました。
    アメリカ軍の呉への空爆は、7月24日から28日まで連日行われました。すずさんも機銃掃射で危ない目に遭いました。周作さんに庇ってもらい助かりました。
    広島の実家に帰ろうと思いましたが、ここに留まることにしました。
    8月、ものすごい地響きがして、広島方面の空に大きな雲が立ち上りました。ラジオは雑音で聞こえず、新聞は配達されず、汽車も広島方面は途中から不通になっています。電話も通じません。広島方面の情報が入りません。
    すずは、広島に行ってくるというひとに、実家の人たちの安否確認を頼みました。
    アメリカ軍は、伝単(降伏呼びかける宣伝ビラ)も大量に撒いています。すずさんは、落とし紙に使わせてもらっています。(90頁)
    8月15日、正午に重大放送がありました。「最後の一人まで戦う」と言っていたのに、降伏してしまったことに、すずは納得がゆきませんでした。(92頁)
    9月には、枕崎台風が通り過ぎて広島や呉にも大きな被害をもたらしました。
    戦争が終わっても食糧不足は続いています。衣類などを食料に代えてもらって食いつないでいます。(123頁)
    昭和21年の1月になって、すずさんは、叔母さんの家や実家の方に行くことができました。妹は、叔母の家で臥せっていました。母は、8月6日にお祭りの準備で広島に出かけ行方不明、父は、母を幾日も探し回って、10月に倒れて死亡。妹も原爆病で具合が悪そうです。
    広島の街では、みんなが行方不明者を探しています。探している人にちょっとでも似ていれば、〇〇さんじゃろうと尋ねています。切ない。
    広島の街で出会った身寄りのない少女を呉に連れて帰ってみんなで面倒を見ているところで終わっています。周作さんの勤め先も見つかったので、先の見通しもよくなったところです。

    浦野(北條)すず 主人公
    浦野すみ すずの妹
    浦野要一 すずの兄、戦死
    浦野十郎 すずの父
    水原哲 すずの同級生
    北條周作 すずの夫、呉工廠の技師、軍法会議の録事
    北條圓太郎 周作の父
    北條サン 周作の母
    黒村徑子(径子) 周作の姉
    黒村晴美 徑子の娘、爆死
    黒村久夫 徑子の息子、実家へ
    黒村さん 黒村時計店・主人、病死、徑子さんの夫
    白木リン 二葉館従業員

    【目次】
    この世界の片隅に
    第29回 20年4月
    第30回~第31回 20年5月
    第32回~第33回 20年6月
    第34回~第36回 20年7月
    第37回~第39回 20年8月
    第40回 20年9月
    第41回 りんどうの秘密(20年10月)
    第42回 晴そめの径(20年11月)
    第43回 水鳥の青葉(20年12月)
    第44回 人待ちの街(21年1月)
    最終回 しあはせの手紙(21年1月)
    おもな参考文献
    あとがき

    ☆関連図書(既読)
    「夕凪の街 桜の国」こうの史代著、双葉文庫、2008.04.20
    「この世界の片隅に(上)」こうの史代著、双葉社、2008.02.12
    「この世界の片隅に(中)」こうの史代著、双葉社、2008.08.11
    (2019年1月8日・記)
    内容紹介(amazon)
    昭和の戦中。広島市から軍都呉市に嫁いだすずは、不器用ながら北條家に徐々に溶け込み日々を過ごす。やがて戦争の暗雲が周囲を色濃く染めていく。大空襲、原爆投下、終戦。歴史の酷い歯車が一人の女性の小さな世界をゆがませていく。そして…。読む者の心を揺さぶる最終巻!

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著者プロフィール

こうの史代:1995年デビュー。広島市生まれ。代表作は「さんさん録」や、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞作「夕凪の街 桜の国」、アニメーション映画のヒットも記憶に新しい「この世界の片隅に」など。

「2022年 『ぴっぴら帳【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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