「戦争」の心理学 人間における戦闘のメカニズム

  • 二見書房 (2008年2月29日発売)
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  • 本 ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784576080079

感想・レビュー・書評

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  • 職業として暴力や災害に立ち向かう人は読む価値があると思う。生命の危険に直面した場合の精神状態について実例と合わせて解説されている。

    個人的には思想が偏っているように感じた。データが少なく参考文献も少ないが、気になったところを3行にまとめると、
    ・テレビの影響で日本を含む世界中で凶悪犯罪が激増している
    ・ゲームもキケン
    ・殺し合いとバスケのフリースローの前には深呼吸しよう!

    凶悪犯罪の激増についてはスティーブン・ピンカーは違うこと言ってたけどなー

  • 2012年に読んだ本の中で、最も印象強かった一冊。
    映画、ドラマ、漫画、ゲームなどで、人を殺めるということがあまりに手軽で、あまりに美化されすぎていると、その危うさを改めて考えさせられた。

    事実に基づいた内容なので、リアルさが読んでいて恐ろしくもあるが、平和ぼけしている私のような人間には、今この瞬間も地球上のどこかで行われている行為なのだと、自分は環境に恵まれているだけなのだと知ることで、某国の戦争やテロ情報の感じ方が変わった。

  • 戦士、つまり命がけで現場に臨む人間の心理を分析し解説した本ですが、そんな人にしか関係のない話かというと、全然そんなことはない。この本の中では恐怖は緊張と言い換えられるので、極度の緊張状態にある人間の心理や身体にはどのような影響がでるのか、その分析をした本とも言えます。

    発表会や試験の際、極度の緊張状態で感じたあの感覚はこれだったのか、と納得できる情報が満載でびっくりでした。筆者はこれを「戦闘中の知覚の歪み」「意識変容状態」と表現してます。例に挙げると、選択的聴覚抑制、視野狭窄、訓練の瘢痕の発露、時間延長、解離現象、記憶の欠落などなど。あと極度の緊張状態の後にひどい頭痛やめまいがあるのは、副交感神経の揺り戻しが原因、とか。


    あと単発で面白かった話としては

    ・殺人事件の発生率が減ってるのは、実際のところ事件の発生率が下がってるのではなく医療技術が上がってるだけ
    ・第二次世界大戦中、姿の見える敵兵に向けて発砲した小銃手は全体の15~20%だった。ただアメリカ軍はこれを解決すべき問題であると認識し、訓練によってベトナム戦争時には発砲率を95%に上げている
    ・「狂気とは、いつかはちがう結果が出ると信じて同じ行動を何度もくりかえすことだ。」

    などなど。
    なんせボリュームのある本なので、他にも色んな読み方が出来ます。
    あと日本の諺や武士道の思想も何箇所かに引用されてたのが面白い。「こんなことを言いたい場合には、世界的に見てもこの日本の諺が一番しっくりくるのね」とわかった気がするので。

    そういえばアメリカ人が書いただけあって、よく言われる二元論が下地にあるというか、「悪い奴は戦うしかない」が大前提と言うか、ふむ…と深呼吸せざるをえない場面がちょこちょこありました。ひっかかるとか納得できないとまでは言えないけど、なんかすんなり読めない部分と言うか。

    ちょっとした常識や文化背景のズレを随所に発見できるのも、外国の本を読むときの醍醐味ですね。言語で読めたらもっといいんだろうけど。

    話が逸れましたが、緊張状態において自分がどうなってしまうのか前もってわかっておくための本として、万人に勧めたい一冊です。題名に気圧されずに普通に読み物として読んでみてほしい。

  • 戦場において、人間は3種類に分かれる。敵に対し殺意を抱けない引き金を引くことをためらう98%と、それを躊躇わない2%。残りの2%は、オオカミと牧羊犬に1%づつ分かれる。

    睡眠時間を4時間にして訓練した砲兵は、十分に睡眠時間をとった砲兵の成績に遙かに及ばない。

    恐怖に対するストレスは心拍数の上昇という結果となって現れる。視野狭窄、聴覚障害、見えるはずの近くのものが見えなくなり、近くの音が聞こえなくなる。

  • 心の用意さえできていれば、あとの様はどうとでもなる。
    そうだなぁ。
    戦闘で体が動くためには、一にも二にも訓練で条件付けるしかない。
    いわば自動操縦ー戦闘中に意識的な思考を伴わずに行動していたーというぐらいにならなければならいのだ。
    そうでなければ生き残ることはできない。
    また戦闘の恐怖の中、トンネル視野や選択的聴覚抑制、時間延長などさまざまな五感の変化が生まれることも、証言から生々しく伝わってくる。
    長くて後半はバテたが、前半の分析は非常にためになるものだ。

  • 警察、兵隊が知るべき内容

  • [ 内容 ]
    極限状況では心と身体になにが起きるのか?
    名著『戦争における「人殺し」の心理学』待望の続編!
    戦闘の心理と生理について徹底的に研究した衝撃の問題作。

    [ 目次 ]
    第1部 戦闘の生理―戦闘中の人体の解剖学(戦闘―普遍的な人間恐怖症;戦闘の過酷な現実―海外戦争復員兵協会(VFW)では聞けないこと ほか)
    第2部 戦闘中の知覚の歪み―意識変容状態(目と耳―選択的聴覚抑制、音の強化、トンネル視野;自動操縦―「正直な話、自分がなにをしてるか気づいてなかった」 ほか)
    第3部 戦闘の呼び声―こんな男たちがどこから生まれてくるのか(殺人機械―数少ない真の戦士がもたらす影響;ストレスの予防接種と恐怖―みじめになる練習をする ほか)
    第4部 戦闘の代償―煙が晴れたあと(安堵と自責とその他の感情―「世界が裏返った」;ストレス、不確実、“四つのF”―警告は警備 ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 前作に比べてはるかに落ちる。
    前作の感動が大きかっただけに、「共著者が悪いのだろう」と思いたい。訳書にしてなおかつ、デーブ・グロスマンと共著者の書いたところの違いが分かる。高尚さとか深さとかがぜんぜん違うのだ。

    しかし、グロスマンが明らかに書いた部分であっても、なにか違う。
    豚の屠殺やビクトリア朝のセックス禁忌から筆を起こし、平和主義活動に心情的に理解を広げつつ、兵士を守る。それをするのは、二等兵から将校になり心理学者になったグロスマン。そんな神話のような気高さが無くなってしまっている。

    メディアとかゲームを規制するのは分からないではないけど、したらいいと思うけど、それをいうのなら、まずもって重そのものを規制すべきじゃないかな。都合のようエピソードばかり引っ張ってこずに。
    粗野な共著者とつるんでいる場合じゃないと思う。

    言っていることがきついかな。
    全書があまりにも感動的だっただけに、きつくなってしまう。

  • 満点にできなかったのは、アメリカの正義がちょっときつかったから(笑)まぁしかたない、アメリカの軍人が書いているのだから。

    ナイフを持たなければ、銃を持たなければ、殺されることはないのかと言えばそうではない。
    もっと日本人が読んでいいと思う。
    自衛隊が外へ出ていくことになった時、そこから彼らが帰って来た時、日本人が彼らを殺してしまわないように。

  • これは、武器を持って人を殺すことを職業としていなくても、誰にでも起こりうる。

    職場や学校で、仲間がリストラやいじめ、理不尽なクレームに直面するのを目の当たりにしても、平然と優越感を保ち、被害者を見下すことをなんとも思わないよう訓練されている。それと何が違うというのだ。

    血を流さずして、私たちは戦闘と洗脳の中にいる。

    自分にも当てはまるのだと覚悟して、心に留め置くのが良い。
    既存の成功哲学やビジネス書では歯が立たない家庭や職場で、生き残り策として活用されたし。

    もちろん、戦争や殺し合いはあってほしくない。

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