高慢と偏見とゾンビ ((二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション))

  • 二見書房
3.43
  • (26)
  • (54)
  • (89)
  • (16)
  • (4)
本棚登録 : 694
感想 : 113
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784576100074

作品紹介・あらすじ

18世紀末イギリス。謎の疫病が蔓延し、死者は生ける屍となって人々を襲っていた。田舎町ロングボーンに暮らすベネット家の五人姉妹は少林拳の手ほどきを受け、りっぱな戦士となるべく日々修行に余念がない。そんなある日、近所に資産家のビングリーが越してきて、その友人ダーシーが訪問してくる。姉妹きっての優秀な戦士である次女エリザベスは、ダーシーの高慢な態度にはじめ憤概していたものの…。全米で誰も予想だにしない100万部を売上げた超話題作、ついに日本上陸。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ジェイン・オースティンの「高慢と偏見」は大のお気に入りの小説。
    しかし、ゾンビって一体‥?
    読むのを延ばしていましたが、読んだらめっちゃ面白い。
    でもこれ読む前に、原作読むか、映画かドラマを見てほしいです~!

    挿絵は原作の時代どおり、ハイウエストで細身の衣装ですが。
    死んだはずの人がゾンビとなって人を襲う奇病?が流行している設定。
    ベネット家では5人の娘たちを中国での修行に出し、今や皆ゾンビと戦う達人に。

    美しく優しい長女ジェイン、個性的で賢い次女エリザベス、変わり者の三女、綺麗だがわがままな下の娘たち。
    母親は娘たちに良い結婚相手を見つけようと必死です。
    近所に越してきた独身の資産家に見初められた長女でしたが、前途には様々な困難が生じます。
    彼の友人で名高い戦士のダーシーが舞踏会に現れ、次女エリザベスとはいきなり反発し合います。
    金持ちだが気難しい高慢な男性と、その彼に偏見を抱く次女、という出会い。

    ハンサムなダーシーは大きな所領を持つ名家の跡取りで、見事な邸宅の主。
    真面目で根は悪くないのだが、威厳を持つように育てられたので、傲慢さは欠点と思っていない。
    そんな彼が必死で不器用に正直に言い過ぎたプロポーズは傑作で、原作でもヒロインを怒らせます。
    この作品では、怒りのあまり殺しかけちゃう(笑)
    後になって、彼のいいところもわかり始めた頃、二人が婚約したという噂を聞きつけて、彼の後見人である貴族の女性が突然家に乗り込んできます。
    ぜんぜん婚約なんていう話にはなっていないのに、「身分が低いのに狙いをつけても無駄だ」などと反対されたら。
    ここで老貴婦人と死闘になってしまいます(笑)
    この貴婦人がまた、キョウトでニンジャと修行をしたという猛者なのだから~。

    現代の感覚なら、そりゃー殺したくなるかも?ってレベル。
    というわけで、パロディとしても成立しています。
    恋愛部分の描写は巧みなので、こんなふうにも書けるのね‥と感心してしまいそう。
    いや、これは原作のままですから!

    ジェイン・オースティンの文章をこんなに勝手に使っちゃっていいのか?
    それに、ダーシーは! コリン・ファースのイメージで見てほしいですよ~この奇妙にネジ曲がった癖のあるイラスト(それなりに面白いけど)じゃなくて。
    これだけを読んでほしくはないから、星は3つで(笑)

  • 今回の課題書の周辺本として、「ぜひ読むべし」と各方面から勧められて読んでみた。

    タイトルどおり、『高慢と偏見』にゾンビがからむ小説である。英国はゾンビを生む病に侵されており、人々はゾンビの襲来の恐怖に日夜怯えている。そして、ゾンビから身を守るため、「戦士」としてのスキルを身につける者が存在する。エリザベス・ベネット嬢もそのひとりで…というのがだいたいのあらすじ。

    読み始めるとすぐに、なんかいろいろすごすぎて涙が出そうになる。エリザベスをはじめ、ベネット家の5姉妹はいずれも、中国の少林寺で武術を学んだ立派な戦士である。ダーシー氏、そしてド・バーグ夫人はキョートのドージョーで戦士のワザを学んだツワモノ。しかもド・バーグ夫人は常にニンジャ(漢字ではなくあくまでもカタカナ)をしたがえていらっしゃるという…書いていてもそのバカっぷりがリフレインしてしまう。ある意味これはネタバレなので、伏せておいたほうがいい要素なんだろうとは思うのだけど、このバカさっぷりは人に広めずにはいられない。それに、『高慢と偏見』には軍人さんがちょろっと出てくるが、そこらへんが「戦士」というマジックワードにリプレイスされるだけで、ただちにバカワールド(ファンタジーじゃなくて、あくまでもこっち)が炸裂するのにも、「なんだかなー」と思いながら、ページをめくる手が止まらなかったりする。

    こんなバカ要素てんこ盛りの小説なのは確かだが、率直な感想として、「地味によくできている」と思う。原文にむやみにゾンビや戦士や武術を投入してカオスな世界に持ち込んでいるわけではなく、押すところは押し、引くところは引いて、見事にコントロールされている。たとえば、シャーロット嬢が結婚を決意する場面で引かれる書簡などはほぼ改変されておらず、原作どおりしんみりさせられてしまうし、エリザベスはダーシー氏をたたっ切りたい衝動には駆られるものの、感情の揺れは原作とそれほど変わらない。そうっと忍びこんできて、人間界を乗っ取っていくゾンビのように、したたかな作者さんのテクニックが光る。でも、ド・バーグ夫人とエリザベスの「対決」場面は、こちらでも見ものです。違った意味ですけど。

    某有名女優さんが映画化権を買い取ったのち、諸般の事情でお蔵入りになっているそうだが、ぜひ、サモ・ハン・キンポー全盛期の香港映画テイストか、ムダにお金をかけまくって撃沈した奇天烈東洋映画『47RONIN』のテイストで映画化希望。そのあかつきには、私は猛ダッシュで見に行くと思う。

    この小説ができたわけを記した、訳者さんのあとがきも傑作すぎる。これぞバカエンタメ。いろいろバカすぎて万歳したい小説です、「お手上げ」の意味も込めて。

  • 「高慢と偏見とゾンビ」、「高慢と偏見とゾンビ」!!!

    ヒャヒャヒャヒャヒャ

    初めてこの本の存在を知った時には
    題名だけを読んで「これは原作に対する冒涜だ!」と
    鼻息荒く憤って、書く人も読む人も気がしれないと
    プンスカ怒っていた。

    数々の信頼している読み手の皆さんが「面白かった!」と
    書いているのを見ても

    「この人たちはもう読むものがなくなって
    こんなのを読んでいる」
    「本を読みすぎて目新しいものしか面白いと感ぜられず、
    頭がおかしゅうなっている」
    と冷たい目線を送りつつ、無視を決め込んだ。

    そんなときのわたくしこそ、高慢と偏見の塊、でしたわ。

    ある日ある時いつものようにネット間をブック・パトロール

    ふと、この本の訳者が、
    今、本に埋まるほどのめり込んでいる
    「銀河ヒッチハイク・ガイド」シリーズの人だと気付いたとたん!

    「あらら、あの人が翻訳なら、読まないってほうはないわ」と。

    読んだら、まあ、面白いこと面白いこと。
    みんなも読んだらいいのに…(豹変)

    オースティンの「高慢と偏見」のストーリーはそのまま、
    ゾンビを組み合わせた作品。

    こういう既存のものを混ぜ合わせて、
    別のものを生み出すっていう手法を
    マッシュアップというのですって!へええ~

    ベネット家の五人姉妹が結婚相手を探すという元々の
    設定はそのまま。

    英国全土に奇病が蔓延し、死者がゾンビとなって甦る。
    カンフーの達人でもある五人姉妹は
    ゾンビと戦いながら…

    長女ジェインの優しさも、ダーシーさんの格好よさはそのまま、
    原作そのものの面白さにうまい具合にゾンビが絡んでいる。

    でもそんな設定だから、あの方が意外に身罷ってしまったりとか。

    私がこれはまるで…と思ったあのシーンがそうなっていて大笑いしたり。
    (欠けたマントルピース、ハハハ)

    みんなが不快に感ずるあの人がここぞとばかりにあんな目にとかやはり過激です。

    訳者さんはあとがきで、こちらを先に読んでも良いのでは?なんて
    書いておられたけれど、それは駄目だと思う!

    こっちを先に読んでから原作を読んだら
    ゾンビが出てこないことに物足りなく思う懸念があり。

    なにより原作でのこれがこれに!?という喜びというか感動があるから
    やっぱり原作を読んで、「高慢と偏見」が大好きな人にお勧め!

    ゾンビを倒すための術として、日本の京都で忍術を学ぶことが一流と
    されていて、それはそれで同じ国民として鼻が高くなります。

    本日の修行、鹿さんとキス!アハハハハ

    とっても面白い本でした。

  • これは新しい!高慢と偏見「と」ゾンビ。すごくタイトルどおりなんだけれどすごく予想外。8割ジェーン・オースティンを使った二次創作。
    私はオースティンファンで中でも高慢と偏見が大好き。ニヤニヤ笑いながら読んだ。
    ゾンビ成分注入と改変が丁寧になされているのがいい。原作の「古臭い部分」「現代的には納得できない部分」をうまくゾンビ化している。”結婚のことばかり考えている”オースティン、女性は結婚によって人生を左右されるこの時代に、結婚より武道で世界を救うわ!と宣言するエリザベスのかっこよさ。最強の戦うヒロイン。ゾンビと戦うのに中国や日本で修行し、ドージョーでニンジャを切り殺しナレズシを楽しむ東洋趣味もいいねえ。翻訳も軽快。

    ネタバレ:そしてエリザベスとダーシーは共にゾンビをやっつける最強コンビとなりました、というラストが良かった!!

  • ジェーン・オースティンの名作「高慢と偏見」のパロディだが、こんなよく出来たパロディが他にあるだろうか?
    「高慢と偏見」の世界にゾンビが加わるので、奇天烈なんだけど、ある意味において世界観が壊されていないのが不思議。
    タネ本のオースティンの文章をかなり残し、そこに新たな文章が自然に加えられているのだが、見事な手腕と思える。
    オースティンを読んで、立て続けに「ゾンビ版」を読むと、
    私の言わんとすることがよく分かるかもしれないので、お勧めします。

  •  いわば高級食材をぜいたくに使ったB級グルメ。下品でバカっぽいけど美味い。

     登場人物やストーリーは原作とほぼ同じだけれど、ゾンビ風味に変えてある。ベネット家の五人娘は中国の少林寺で武道を身につけてゾンビと闘う戦士で、なかでもエリザベスはちょっと凶暴。敵役、ダーシーのおばのレディ・キャサリンはキョウトで修行し、何人ものニンジャと侍女のゲイシャを従えている(なんじゃそりゃ?)。

     屋敷の中にドージョーやシントーの神社があったり、みんなでナレズシを食べたりというおかしなニホン趣味…… ヘタクソなイラストも作品の雰囲気にピッタリ!!

     でも、これを読む前に先ず原作を読まれることをお薦めします。そうしないと、この作品の本当の面白さ(ばかばかしさ?)がわからないので。

  • 腹がよじれるほど面白くて、阿保らしくて、涙が出た。

    オースティンの名作、自負と偏見にゾンビのエッセンスを加えた最高のラブコメバカアクション。日本で言ったら時かけとか源氏物語あたりにゾンビ要素をプラスした感じかな?もうこの文章だけで面白い。

    要所要所にゾンビが足されてるけど、原作の『結婚』という芯はきっちり通っている。原書も読んだが、オースティンの文章をうまく生かした文章は読んでいて感心しっぱなしだった。時々爆笑も誘われたけど。

    特にうまいなと思ったのが、シャーロットがコリンズと結婚する動機。思わず「うわぁ~なるほどな~そうきたか~ww」と声に出してしまった。

    この手の作品によくある、間違った日本知識(ニンジャやらドージョーやらカタナやら)はご愛敬。正直そこがめちゃくちゃ面白かったので、ニンジャスレイヤー系が好きな人はすごく楽しめると思う。

    英文学の古典が気になっているけどどれから読もうか迷っている人、とりあえずなんか息抜きに頭を空っぽにしたい人、ハチャメチャゾンビモノが好きな人には特におすすめ。
    読み終わった後で、原作の『自負と偏見』を読んでみると、思い出し笑いが止まらなくなるので注意!

  • 軽快痛快なエスプリ混じりの恋愛・家族愛な部分をにやにやしながら読んだ。イギリス貴族にぶち込まれる“戦士”の概念、トンデモ悪魔合体に見えていやあこれが意外にもしっくりくる。プライドと戦士が上手いこと結びつくからなのかな。
    一見憎らしいキャラやおいおいと頭を抱えたくなるキャラも居はするけれど、さくさくなぎ倒されるゾンビのおかげで気持ちの切り替えがしやすいので、妙なストレスは溜めずに済む。読み終える頃には「ああ仕方ないけどいるよねこういう人」くらいに思える。
    礼儀正しい彼の最期が印象的だった。
    ドージョー・キョート・ニンジャブーツなどの「外国がイメージするキテレツな日本」が多々見受けられるうえに、真面目にシュールな挿絵もあいまって、シリアスな笑いが漏れるところも。舞台設定や背景描写は面白おかしくめちゃくちゃに、本筋の高慢偏見愛云々についてはがっつりと濃厚にというイメージ。両面を楽しめた。

  • 名作『高慢と偏見』にゾンビを投入。
    混ぜるな危険。
    バカ小説にマッシュアップ!

    予想以上に『高慢と偏見』だったけど、後半に行くに従ってゾンビ分がどんどん減っていったのがちょい残念。
    忍者や道場をカタカナ表記にした役者のセンスは買い。
    あと以外と自分にゾンビの基礎知識がなかったことがわかった。
    お遊びが許せるなら読んでもいいんじゃね?的小説。

  • おお、ちゃんと「高慢と偏見」だ!
    作者に「ジェイン・オースティン」て書いてあるしな。
    無理ないマッシュアップ(と私は思う。)
    相変わらず安原和見さんの訳は素晴らしいです。言い感じに笑わせてもらえます。安原さん、ありがとうございます。

全113件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ジェイン・オースティン(Jane Austen)
1775年生まれ。イギリスの小説家。
作品に、『分別と多感』、『高慢と偏見』、『エマ』、『マンスフィールド・パーク』、『ノーサンガー・アビー』、『説得されて』など。
1817年没。

「2019年 『説得されて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジェイン・オースティンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×