償いの報酬 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

  • 二見書房
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本棚登録 : 136
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (497ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784576121239

作品紹介・あらすじ

マット・スカダー・シリーズ。禁酒を始めてから3カ月が経とうとしていた。いつものようにAAの集会に参加したスカダーは、幼なじみで犯罪常習者のジャック・エラリーに声を掛けられる。ジャックは禁酒プログラムとして、過去に犯した罪を償う"埋め合わせ"を実践しているという。そんな矢先、銃弾を頭部に撃ち込まれ何者かに殺されてしまう。スカダーはジャックの遺した"埋め合わせ"リストの5人について調査を始めるが…。名作『八百万の死にざま』後をノスタルジックに描いたシリーズ最新作。

感想・レビュー・書評

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  • 20190602
    「1日はどんな日も一度に一日ずつ過ぎる。長いスパンで考える必要などどこにもない。ただ、ずっと続けていれば、それが長いスパンの禁酒になる。この分かりにくい目的を確実に達成するにはどうすればいいかわかるかい?」
    「どうすりゃいいんだね?」
    「飲まないことさ」と彼は言った。「そして、死なないことだ」
    自分に何ができるか考えてみる、と私は彼に言った。
    p.431

  • 大好きマット・スカダーシリーズの最新作。昔、海外ミステリというものを読みはじめたばかりのころに、このシリーズの「八百万の死にざま」を読んでラストで泣き、ミステリでも泣けるんだと思ってなんだか感動したっけ。
    この最新作は、「八百万の死にざま」から約1年後の話で、74歳になったスカダーが回想して語っているというつくり。
    読みはじめたら、もう語り口のなめらかさにうっとり。そうそうこの語り口! 渋い! かっこいい!
    「なんとね」っていう台詞とかも懐かしくて。
    謎解きとは関係なさそうな人生哲学的?な会話がえんえん続いたりするんだけれど、そこがまたすごく楽しい。断酒会の助言者や恋人、元同僚の警察官、聞き込みの対象者などとの会話にいちいち深ーいものがあって。そういえば、ミステリでこういう会話するのってスペンサーシリーズもそうだった。スピーディーであっと驚くような展開とか、複雑なしかけとかが好きな人には退屈なのかもしれないけれど。
    アルコール依存症を克服しようとするスカダーが通う、AA(断酒会)の話が多いんだけど、そこもすごく興味深い。
    謎解きよりも、禁酒一年目のスカダーがまたアルコールを口にしちゃうんじゃないかってことにハラハラした。そして、あのできごとは、家で殺し屋が待っていたっていうよりこわいんじゃなかと思った。銃撃戦とかカーチェイスよりずっとサスペンスフルだった気が。それもすごい。

    このシリーズ、もっと読みたい。

    • 抽斗さん
      マッド・スカダーシリーズ、面白いという声をたくさん聞くので気になっていましたところ、niwatokoさんのレビューを見てますます気になりまし...
      マッド・スカダーシリーズ、面白いという声をたくさん聞くので気になっていましたところ、niwatokoさんのレビューを見てますます気になりました。ミステリーとしてだけでなく、「読み物」としてとても面白そうですね! 
      近くの図書館に「八百万の死にざま」があるので、近々挑戦してみたいなー、と思いました。
      2012/10/17
    • niwatokoさん
      そうなんです、読み物としておもしろいんですよ。ページターナーとかではなく、むしろ考えさせられるような。80年代くらいの話なので、携帯電話がな...
      そうなんです、読み物としておもしろいんですよ。ページターナーとかではなく、むしろ考えさせられるような。80年代くらいの話なので、携帯電話がなかったり、ほんのちょっと古めかしく感じるかもしれませんが、おすすめです。1作目からじゃなくて「八百万の死にざま」だけ読んでまったく大丈夫ですし。
      2012/10/18
  • なかなか面白い。
    アル中の私立探偵が、同じくアル中仲間の死の真相を追う。途中、アルコールやドラッグの依存をめぐってさまざまな事例が語られ、しかし真相にはたどりつけず、しかし関係者は死んでいき…。この過程で交わされる会話が、とくに「スポンサー」と交わされるアドバイスのような会話が、味わい深い。ただ、名作「八百万の死にざま」ほどではなかったかな。

  • アメリカの作家ローレンス・ブロックの長篇ミステリ作品『償いの報酬(原題:A Drop of the Hard Stuff : A Matthew Scudder Crime Novel)』を読みました。
    『八百万の死にざま』に続きローレンス・ブロックの作品… ここのところ、ローレンス・ブロックの作品が続いています。

    -----story-------------
    アル中探偵マット・スカダー復活?

    『八百万の死にざま』から1年。
    完全に酒を断ち切ることはできるのか――シリーズ最新作

    【探偵マット・スカダー・シリーズ】
    禁酒を始めてまもなく1年が経とうとしていた。
    いつものようにAAの集会に参加したスカダーは、幼なじみで犯罪常習者のジャック・エラリーに声を掛けられる。
    ジャックは禁酒プログラムとして、過去に犯した罪を償う“埋め合わせ"を実践しているという。
    そんな矢先、銃弾を頭部に撃ち込まれ何者かに殺されてしまう。
    スカダーはジャックの遺した「埋め合わせ」リストの5人について調査を始めるが……。
    名作『八百万の死にざま』後をノスタルジックに描いたシリーズ最新作。
    -----------------------

    2011年(平成23年)に刊行されたマット・スカダー・シリーズの第17作… 74歳になったスカダーが30年前の『八百万の死にざま』の翌年に起こった事件を振り返る趣向となっているので、時系列的には、ちょうど良い順番で読んだ感じですね。


    禁酒を始めてから3カ月が経とうとしていた頃、スカダーは幼馴染で犯罪常習者だったジャック・エラリーと思いがけずAAの集会で再会する… ジャックは禁酒プログラムの第九ステップ――過去に自分が傷つけた相手全てに“埋め合わせ”をするステップ――を実践しており、真人間に生まれ変わろうと務めていた… そんな矢先、銃弾を頭部に撃ち込まれ何者かに殺されてしまう、、、

    殺されたことと、彼が第九ステップを実践していたことは何やら関係がありそうに思われ、スカダーはジャックのAAの助言者(スポンサー)であるグレゴリー(グレッグ)・スティルマンに依頼されて調査に乗り出す… その結果、ジャックが“埋め合わせ”をしようとしていた相手が5人いることがわかる。

    その5人の誰かが犯人なのだろうか、その5人の中にはそもそも犯人はいるかどうか……。


    アル中患者の治療プログラムに直結する事件… 調査の中でリストの5人を訪ねるエピソードも、それぞれ興味深く、捜査の過程が愉しめましたね、、、

    そして、真犯人を突き止め、真犯人と対峙するクライマックスシーンは緊張感たっぷりで印象的でした。

    決着のつけ方には賛否両論ありそうですが、これはこれでスカダーの判断として支持したいと思います… 物的な証拠がなく、司法の手に委ねられない事案であれば、自ら決着をつけるしかないですからね、、、

    この判断も、ひとつの選択肢だと思いますね… カタルシスを感じる決着方法ではないですが、白黒はっきりさせることと表裏一体の方法だと感じました。

    やや冗長な感じはあるのですが… スルメのように噛めば噛むほど味が出て、やめられなくなるシリーズですねー 次もマット・スカダー・シリーズを読んでみようと思います。

  • いつものローレンス・ブロック節。まあまあ面白かった。ある意味この面白さは貴重だ。

  • ついにマット・スカダーシリーズも終了? それとも?

    老練なマットなんて別にいらないのに、長期間シリーズとつきあってくると、こういう具合に幕引きしたくなるのかな。
    著者も老いたということも含め。

    ミックが活躍しないと面白くないなー。
    なんてミーハー、だめ?

  • 年老いたスカダーの回想録。しかし、ローレンス・ブロックも歳をとったのか、そういう懐古的だったり、諦念的な目線が多い。物語は、わりとストレートな感じだった。

  • マットスカダー第十七作。
    原題"A DROP OF THE HARD STUFF"。

    禁酒直後のスカダーを描いた作品。
    ジャンとの別れなど曖昧になっていた所が書かれていたのは良かった。
    ただ、あくまでここまで読んできた読者向けな感じが。

    これでスカダーの既刊分は読了、
    と思ったらまだ短編があったので次はそちら。

  • 何を期待して読み始めた訳でもないのだが、
    思い出話で良かったかも。
    74歳のマット・スカダーの活躍、には、
    かなり無理があるので。

    いろいろ懐かしい人たちの名前が出てきて、
    このシリーズを読み続けてきた人には、
    たまらないだろう。

    ハリー・ボッシュの、縦横ななめに急回転、急カーブするジェットコースターのような展開とは違って、
    ストンと落とし穴に落ちるような感覚がなんとも言えず良い。
    このハリー・ボッシュとマット・スカダーを平行読みしていた間は、
    私の読書人生の中でももっとも幸福な時だったに違いない。

    ああ、でもTJのその後が知りたかったから、
    彼が活躍する話でも良かったかも。

  • 禁酒直後の焼け付くような渇望が良い。
    時系列歴には「800万の死に様の直後」だが、
    回想なのでやや達観した感じも見られる。
    犯人探しはメインではないのだが。

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著者プロフィール

ローレンス・ブロック Lawrence Block
1938年、ニューヨーク州生まれ。20代初めの頃から小説を発表し、100冊を超える書籍を出版している。
『過去からの弔鐘』より始まったマット・スカダー・シリーズでは、第9作『倒錯の舞踏』がMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長篇賞、
第11作『死者との誓い』がPWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)最優秀長篇賞を受賞した(邦訳はいずれも二見文庫)。
1994年には、MWAグランド・マスター賞を授与され、名実ともにミステリ界の巨匠としていまも精力的に活動している。

「2020年 『石を放つとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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