哲学的な何か、あと科学とか (二見文庫)

著者 :
  • 二見書房
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感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784576170466

感想・レビュー・書評

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  • 科学っていうと取っつきにくく敬遠されちゃいそうなタイトルですが、難しい公式などは一切出て来ず、文系の方でも抵抗なく読めちゃうと思います。

    量子力学とかシュレーディンガーの猫とか、「なんとなくいいたいことは分かった」程度にはなれるのかな。

    クオリアの話を読んでいて、昔、色盲の後輩をイジッていた時の事を思い出しました。赤が灰色に見えるその人に対し「いやいや、ありえんやろ~」とか言いながら、ふと「いや待て、今自分が見てる世界の色が他の人と同じだという保証がどこにある?色だけでなく、世界の見え方自体も本当に一緒なのか?」と思ったのですが、今思うと割りと哲学的な事考えてたんですねw

    人生の気付き、みたいなものはないですが、教養として読んどいて損はないかと。
    数学の方も買いました。

  • 著者の飲茶さんは哲学の専門家ではなく、元理系のサラリーマン。著書に「14歳からの哲学入門」など哲学や科学などの学問を平易に解説する本を書いています。

    本書も哲学を全く知らない人向けに書かれた、大変面白い本になっています。
    「相対性理論」、「カオス理論」、「エントロピーの法則」等を大雑把にかつわかりやすく解説したあと、「2重スリット実験」、「コペンハーゲン解釈」、「シュレディンガーの猫」といった量子力学の入口まで読者を導き、だんだんと科学から哲学や倫理問題の領域に議論を移してゆき、科学論理の脆さを突いてゆくのはうまい流れと思いました。

    「哲学的な視点で『科学的な正しさ』を問いかけていくと、実はそれがかなり危ういものだと気づかされるだろう。
    いままで確かだと思っていた景色がガラガラと崩れる瞬間は、怖いけども、ちょっぴり楽しかったりもする」

    終盤では「意識」の問題に入ります。「どこでもドア」の寓話はかなり怖いけど「意識」の本質がモヤモヤながらも見えてきました。

    哲学の難しさよりも面白さに重点を置いた本。文庫版の面白い本です。哲学の入門の入門として手に取って損はないと思います。

  • ・「我思う、ゆえに我あり。」誰でも聞いたことがある、デカルトの言葉。この言葉は深い意味をもつ。
    この世で「もっとも確かなこと」はなんだろう? これをデカルトが考えた。例えば、目の前にある世界は本物か? 幻や夢かもしれない。今見ているものは実際に存在しないかもしれない。これが夢ではないと、どうやって証明できるのか。
    こうして疑って、疑って、疑い続けて、ある日、考えがひらめく。「我々が認識するものは、全て嘘かもしれない。でも、それを疑い続けているものがいるということだけは真」であること。
    つまり、「すべてが夢であっても、夢をみているものが存在すること」は決して疑えない。
    この世のすべてが、信じられないものであろうとも、「それを疑っている何者かが存在すること」は絶対的な真実である。
    これが、「我思う、ゆえに我あり」の本質的な意味である。
    ・論理的思考の正体は「飛躍」と「矛盾」
    論理的とは、たとえば、「A=B、B=Cならば、A=C」は論理的思考の結果。
    だが「A=B」、つまり「AはBである」というのはどういうことか?何をもってAとBは同じなのか。そもそも、世の中に完全に同じものなんてあるのか。同じだとしたら、A=Aでよいのでは。AをBに言い換えているだけ。
    A=A=Aと言っていることになり意味をなさない。
    「AはBである、だから、、」と宣言するときは、「AはBではない」ということが前提として成り立っている言葉。
    結局のところ、「AとBは厳密には違うものだけど、この際、同じと決めつけてしまおう」ということであり、この飛躍した決めつけによって、初めて「意味」が生じている。
    「AはBである、だから、、」というとき、そこには確実に飛躍と矛盾がある。

  • 【星:4.5】
    量子力学など科学的トピックスの具体的説明しながら、「科学ってなんだろう?」という疑問に答えてくれている。
    そんな感じなのでタイトルどおり「哲学」の本であり、また「科学」の本でもある。

    さらに説明はとてもわかりやすい。「科学の具体的なトピックス」「そもそも科学とは何か?」「哲学」を一挙に学べてとても満足だった。

  • 当たり前のように有名だけど私にはよくわかってなかった科学や哲学の話が、
    非常にわかりやすく説明されている。

    様々な内容をまとめてどこでもドアで
    例え話を作っているのも圧巻。

  • SNSで見かけてからずっと興味があった飲茶さんの著作。本当は数学の方を読みたかったんだけど、本屋さんになかなか置いてなくて、とりあえず手に入ったコチラから読んでみた。

    手にとって驚いたのが、
    …横書き!!
    フランクな文体だし、とっつきやすそう。
    きっと難しい、科学やら哲学の内容を、
    めっちゃわかりやすく、おもしろく書いてあるんだろうな…と思いながら読み進めた。


    …え、
    普通にめっちゃ難しいんだけど。

    とくに結構前から興味があった量子力学の二重スリット実験の話とか、シュレディンガーの猫の話とか、今ある薄い知識でも、もうちょっとそのあたりの理解が深まるつもりで読んでいたんだけど、
    やさしくおもしろい文体で書かれていようとも、
    前提知識が足りないとやはり難しいんだなぁ…、
    ってことがよくわかった。

    ただ、やっぱりおもしろいところもたくさんあって、相対性理論とか(そういう認識であっているのかどうかはちゃんと考える必要があるけど)、自分の知識にない新たな側面での説明だったし、
    哲学的ゾンビの話は人間同士だけでなく、たとえばAIに意識はあるか?とかの問題に結びつけて考えてもめちゃくちゃ面白いなぁと思った。

    いずれにせよ私にとってはなかなか難しくて、
    思っていたよりは歯ごたえが凄かったけど、
    興味深くて学びが多い内容であるのも事実。

    数学の方もぜひ見つけ出して読んでみたい。

  • 正しいとはなにか?
    ボクをボクたらしめる、ココロとはなにか?

    そんな哲学的な問いを、
    科学や実験を例にあげながら考えてみる本。

    絶対正しいという証明が、拠り所が、
    欲しかった人々の戦いの科学哲学史や
    どこでもドアの思考実験によって
    哲学にも科学にも明るくない私でもわかりやすく、
    本を参考に考えてみる、ということができたので
    すごくおもしろかった。

    今まで当たり前に信じていたものが、
    本当は違うんじゃないかと突きつけられて、
    立っている地面が揺らぐような感覚になる。

    とにかく、もしどこでもドアが作られても、使いたくないなあと思います。


    以下、ちょっと詳細な内容の覚書

    【“論理的に正しい”とは何か】
    →我々が信じている科学も、どうしようもない不確かさの上に構築されている。
    ・論理の正しさを証明することはできない
    ・正しいと信じられている理論にも絶対思い込みがある
    ・伝統的文化的ルールを根拠に述べられる“言語”ってやつを使っている時点で、100%正しいはありえない
    ・物質も性質(システム)に名前をつけただけなので、確固たるものではない

    【量子力学という学問】
    →量子力学とは、波の方程式を使って粒子がどこで見つかるかを確率的に調べる学問
    →科学が「真理探求の学問」ではなく「道具主義的な学問」になってしまった最たる例
    ・光をはじめ全てのものは、波であり粒子であるという性質を持っている。
    ・「波であり粒子」という状態を人間は理解できなかったので、コペンハーゲン解釈とか多世界解釈とかパイロット解釈とか、普通ありえんみたいな考え方が科学の世界にたくさん生まれた。
    ・しかも結局受け入れられたコペンハーゲン解釈が選ばれた理由は、数式が簡単だったから
    ・ミクロの世界は観測できないから本当のことは分からない。なら便利なものを選ぶしかないじゃん。

    【信じられる理論を見つけたかった苦闘の歴史】
    →結局絶対正しいことは、人間が勝手に決めるしかない
    ・帰納主義(ウソっぱち理論もデータを集めて科学的正当性を主張するようになってしまった)
    ・論理実証主義(厳密にやったら科学が全部ウソっぱちってことになってしまった)
    ・反証主義(“科学とは今のところ反証されていない仮説である”という、一種の敗北宣言)
    (前提が満たされていない可能性があるので、反証自体も確実にはできない)

    【どこでもドアの問題】
    →どこでもドアによって分子構造を再現されたボクは本当にボクなのか?
    →ドアに入ってここのボクは破壊されるなら、死ぬってことになるんじゃないの?
    ・コンピュータに知能があるのか証明できない。人間の知性(?)も模倣かもしれないんだし。
    ・クローンの双子の赤ちゃんをつかってココロを証明する試みも、環境を完全に同じにできないので頓挫。
    ・自由意志ってものは存在しない。
    ・脳を分割したら意識はどっちに宿るのか問題。

  • 科学者、哲学書の世界をチラ見できた
    作者がわかりやすく書いてくれたおかげでだいぶ易しくなり、読みやすかった

  • 「電子は波であり粒子である」
    という矛盾した命題

    不確定性原理
    原理的に絶対に観測不可能な領域

    全てが不確実で満たされてるこの世の中で、「何が正しいのか」を考えること。それは哲学そのもの。

  • 爽快な読み心地と言うべきか、哲学も科学もとっつきやすいとは言えない分野にも関わらず、誰でも理解できる言語、思考プロセスの再現によってわかり易く書かれている。

    特殊相対性理論、二重スリット問題はじめ、科学って意外と大胆な解釈がたくさん採用されているんだなと良い気づきになった。

    例えで出てくるダークなドラえもんの世界観も個人的に好きだった。

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著者プロフィール

東北大学大学院修了。会社経営者。哲学や科学などハードルの高いジャンルの知識を、楽しくわかりやすく解説したブログを立ち上げ人気となる。著書に『史上最強の哲学入門』『14歳からの哲学入門』などがある。

「2020年 『「最強!」のニーチェ入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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