みんな蛍を殺したかった

著者 :
  • 二見書房
3.59
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本棚登録 : 1087
感想 : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784576211015

作品紹介・あらすじ

R-18大賞受賞者である木爾チレンが原点に立ち戻り、少女たちの心の中にすくう澱みを映し出した著者渾身の書き下ろしミステリ!

2007年、京都にある私立女子高校に東京から美しく可憐な少女・七瀬蛍が転校してきた。
そんな中、大川桜、五十嵐雪、猫井栞と、それぞれ耽溺する世界をもつオタクが集う生物部に、蛍は入部してきた。
スクールカーストで底辺とされていた三人と心を通じ合わせるかのように、蛍は「私もね、オタクなの」と告白する。
四人はメールを頻繁にやりとりするようになったが、そんな中、悲劇が起きてしまう――。
そして、現在悲劇の歪みが連鎖する。

感想・レビュー・書評

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  • 序盤は暗い感じで少々退屈だったけど中盤からは先が気になり一気読みでした。
    ただ、だれも幸せになってないし、なれてない。
    生きるのが苦しい、それがベースになっている小説でした。

  • 読み始めて気づいたらページを捲る手が止まらず、
    結局最後まで一気読みをしてしまいました。
    読んでいて終始ザワザワする感じは描いている世界観が
    とてもリアルだったからだと思います。
    学校におけるスクールカースト、SNSでの承認欲求、親からの愛情。
    “誰が”悪いわけでもないけど、”誰か”を悪く仕立てないと心が保てない。
    少しでもバランスが崩れると一気に崩壊してしまう(してしまった)様を
    この本を読んで感じました。
    結末はどうであれ、栞だけは幸せだったんだと思いたいです。


  • みんな蛍を殺したかった
    木爾チレン(きなちれん)さん


    ある日、蛍という名の美しい少女が
    転校生としてやってくる。

    彼女はオタクが集まる部活に入るが、
    部員たちは蛍を訝しげ思いながらも
    その美しさに戸惑いながらも、かつて
    感じたことのない居場所を見出していく。

    スクールカーストと心に巣食う嫉妬や
    憎しみ、そして愛情の渇望の物語。

  • スクールカーストという言葉は僕の時代は無かったけれど、どの世代でも必ずある人としての優劣で引かれる線引き。その優劣というのが学校という単位だと、見た目が最大の要因になる事は明白です。見目麗しければとりあえず第一関門はトップ通過。ぶさいくは相当な武器が無いとどうにもならない世界です。本当に学校って嫌いだった。
    そんなカースト最底辺の3人の元に舞い降りた、類まれな美貌を持つ転校生「蛍」。その蛍がある日電車に飛び込んで木っ端みじんに飛び散る所から始まります。
    イヤミスと言われる分野が最近発達しつつありますが、これもそれ系の本です。
    先が気になる謎の疾走感があるのでスピーディーに読めます。
    まだちょっと練り切れていない部分があるので、もう何作か読んでみたい作家さんです。

  • 読む手が止まらなかった。
    電車に轢かれてバラバラになってしまった七瀬蛍、その携帯画面に残っていた「永遠の親友へ 私を殺してくれて、ありがとう」という未送信のメール。
    冒頭から一転、物語は蛍が女子校に転校してきたところから始まる。オタク女子三人が集う生物部に入部してきた、「勝ち組」の権化のように美しい蛍は、それぞれに対して好意的に接してくれる。三人はそれぞれ苦悩を抱えている。母親が死んだ双子の姉の分までご飯を食べさせ自分を見てくれなかったり、有名小説家の母に顔を焼かれてうまく話せないため常にマスクをつけそれでも小説を書いていたり、ゲーム世界でできたコイビトに自分の本当の姿を知られたくなかったり。
    蛍と関わることで彼女たちの世界は少しずつ変わる。そして――。
    蛍の死が実はそういうことだったのか、そことそこがつながっていたのか、と驚く終盤で、やるせなさの中に蛍の光のようなわずかな光明が見えたラストだった。

  • 読む手をとめられなかった。

    オタクという存在が虐げられ、嘲笑の対象となっているのが如何にも2007年ぽいなと感じた。

    誰も幸せになれないところが悲しい。

    いや、唯一栞だけは幸せだったのかな。

  • カースト底辺で生きるオタク女子達と美少女転校生『蛍』
    女子同士が絡む独特の本音と建前、深まる謎に高揚し、ラスト一文にはしてやられました。
    辛い現実や環境から逃避し、違う世界に没頭するしかなかったオタク達のアイデンティティと、自分に無い美への強い憧れをもつ虚しい気持ちがとても共感できた。
    ミステリとしても秀逸。

  • タイトル、表紙を見て読んだ。
    スクールカーストものだと思っていたけど、全然違う復讐の話だった。

    展開がどうなっていくのか気になり読む手が止まらなかった。最後らへんは顔を歪ませながら読んでいた。
    ミステリーとして伏線回収がすごいし、面白いが、内容が辛く悲し過ぎる。

    後味はあんまり良くない小説だった。

  • 蛍の魅力に酔いしれました!
    登場人物の独白によって、進む物語でジャンルはホラーミステリでしょうか
    隣の芝生は青くみえるという内面をこれでもか!という程展開して、みんな純粋で幸せになりたいだけなのに上手くいかず、登場人物全員が互いの黒さがたまらないです
    サクサク読めて面白く、女子同士の小さなグループ内でのありそうな会話がリアルでよかったです
    ミステリ部分は最後だけ、ちょっぴり無理がありそうでしたが、どうなるか話は全く予想出来ていなかったし、面白かったです
    読んで本当に良かったです!ビバ蛍!

  • 何故、この本自体がこんなにも「オタク」というものに過剰に反応するのかずっと疑問でした。
    けど、後に意味が分かりました。
    まず、思ったのは誰も幸せになれなかった物語でした。
    最後の実の父に汚らしいと言ったところ、私は最高に好きでした。結局は顔なのかと、

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著者プロフィール

チレン(きな・ちれん)
京都府出身。大学在学中に応募した短編小説「溶けたらしぼんだ。」で、新潮社「第9回女による女のためのR-18文学賞」優秀賞を受賞。美しい少女の失恋と成長を描いた『静電気と、未夜子の無意識。』(幻冬舎)でデビュー。その後、少女の心の機微を大切に、多岐にわたるジャンルで執筆し、作品表現の幅を広げる。近著に、引きこもりの少女の部屋と京都が舞台の恋愛ミステリ『これは花子による花子の為の花物語』(宝島社)がある。黒歴史と少女の淀みを描いたミステリ小説『みんな蛍を殺したかった』に続くのが、本作『私はだんだん氷になった』である。

「2022年 『私はだんだん氷になった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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