ごみ溜めの犬 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

制作 : 東江 一紀 
  • 二見書房
3.33
  • (0)
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 7
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784576880372

作品紹介・あらすじ

かつて禁酒法時代、シカゴはギャング達の街だった。現在、シカゴは猥雑で、心優しい人々が蠢いている。民主党シカゴ27区の地区班長ジミー・フラナリーはマシーン政治の一翼を担って地区住民の面倒をみていたが、堕胎診療所爆破事件で老婆と若い娼婦が犠牲になったために真相解明に乗りだす。爆破事件は政治がらみか、それとも殺しを隠蔽するためか?MWA最優秀ペーパーバック賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • シカゴの「民主党27区」地区班長ジミー・フラナリーを主人公とするシリーズ第一作。変わった設定ではあるが、党の宣伝を兼ねつつ市井の人々に触れ、相談事に乗り、時に問題を解決していくという役割は、報酬を求めない変種のトラブルシューターといったところか。政治的な活動としては末端に位置しながらも、地区住民らの状況を生身に感じ、その喜びや哀しみを共有していく。力を持たない彼らに代わり、理不尽な悪政や暴力に怒り、敢然と立ち向かっていくさまは、ヒーロー小説としてのスタイルに沿うものだ。

    堕胎診療所で爆発事件が発生し、フラナリーの知人であった老婆と、身元不明の若い娼婦が犠牲となる。腑に落ちないフラナリーが探るうちに、事件の背後には腐敗した政治家と結託したギャング組織のボスによる真犯人隠蔽の事実が明らかとなる。「ごみ溜めの犬」と自嘲しつつも、報われない者のために真相を探り、卑しい街の「ごみ」を排除するフラナリーの闘いは、ハードボイルドの新しい息吹を感じさせる。

  • 1987年アメリカ探偵作家クラブ賞受賞
    原題は『THE JUNKYARD DOG』

    僕の名はフラナリー、民主党シカゴ27区班長として、選挙で投票を得るため地区住民に便宜を図っている。
    ある日、無料堕胎診療所を手伝う老婦人から診療所の前に置かれていたと、ケチャップのついたナイフを手渡される。
    警察に中絶禁止運動家ジョー・アスパークらの仕業だろうと言われ、警告に行く。
    ところが、診療所が爆破され、老婦人と妊婦ヘレンが死亡した。
    看護婦のメアリは爆発の前に廊下で警官と会い、待合室に男がいたと証言した。

    アスパークは公共物破壊の容疑で逮捕されたがすぐ釈放され、捜査が始まる気配はなかった。
    ヘレンは社交クラブの娼婦で、クラブの経営者がヘレンが堕胎するのを男に見張らせていたのだった。

    「ヘレンの体には弾丸が埋まっている」という匿名の電話があった。
    ヘレンの死因は銃弾で、それを隠すために爆弾が仕掛けられたのだった。だが、検屍報告書も銃弾も消えていた。
    一方で、27区の元締め、そして25区の元締めから捜査から手を引くように釘をさされる。
    さらに、同棲を始めたメアリの部屋で看護婦が殺害された。

    ヘレンの実家で、彼女が結婚すると言っていた男の写真を手に入れる。
    それはメアリが爆発の前に廊下で会った警官だった。

    ヘレンの通夜の帰り道、突然現れた男たちに車に押し込まれ、廃品置き場で暴行される。
    気がつくと、今度はドーベルマンが襲ってきたが、クレーンで金網の外に飛び降りて逃れる。

    <解決篇>

    襲った男から、黒幕は暴力組織のボス、カーミン・ディベラだと聞く。
    写真の男はディベラの顧問弁護士で、娘婿のダニー・タータグリアだった。
    保安官バッジ所持者のリストにはタータグリアの名前があった。

    ヘレンの友人は、タータグリアは友人の弁護士ウォルター・ストリーターを隠れ蓑に社交クラブに通っていたと話した。
    ストリーターは、タータグリアはヘレンが妊娠したと聞いて堕胎するように諭したと言う。

    ヘレンとタータグリアが訪れたホテルの宿泊カードのコピーとフロント係の口述書を入手し、タータグリアの家に向かった。
    そこにディベラが現れ、真相を語る。
    タータグリアからアスバークが逮捕されたので救ってほしいと頼まれ、判事に手をまわし釈放させた。
    そのあと、ヘレンの殺害を隠ぺいするために爆弾が仕掛けられたことを知った。アスパークからヘレンとタータグリアの関係を聞いたディペラは、タータグリアに容疑がかかると考えて、ヘレンの検屍報告書と摘出された弾丸を捨てたと語った。
    捜査をやめさせるため、27区と25区の元締め、地区委員長にまで借りをつくる羽目になったと彼は言った。
    「3件の死は証拠がないので何の告発も受けていない。多くの人間が関わっているから、真実をみつけても誰も見向きもしないだろう」とディベラは告げた。
    ディベラは孫の父親だから、妻は自尊心と面子からタータグリアを許したのだ。

    電話で情報を提供していたのはストリーターだった。
    彼はタータグリアを追い出して後釜になりたいがために、ヘレンを紹介し、彼を陥れようとしたのだ。
    ストリーターに、タータグリアがまた遊び始めたら、女性を紹介し、隠しマイクを仕掛けたフラットを用意し、証拠写真を撮るように言った。

    数カ月後、タータグリアは娼婦の家で二人組の強盗に射殺された。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

ロバート キャンベル Robert Campbell
日本文学研究者。国文学研究資料館館長。東京大学名誉教授。
ニューヨーク市生まれ。カリフォルニア大学バークレー校卒業。ハーバード大学大学院東アジア言語文化学科博士課程修了、文学博士。1985年に九州大学文学部研究生として来日。専門は近世・近代日本文学。とくに江戸後期~明治前半の漢文学に関連の深い文芸ジャンル、芸術、メディア、思想などに関心を寄せている。著書には『Jブンガク 英語で出会い、日本語を味わう名作50』(編集、東京大学出版会)、『ロバート キャンベルの小説家神髄 現代作家6人との対話』(編著、NHK出版)、『東京百年物語』1~3(編集、岩波文庫)などがある。

「2019年 『井上陽水英訳詞集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ロバート・キャンベルの作品

ごみ溜めの犬 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)を本棚に登録しているひと

新しい本棚登録 1
新しい本棚登録 0
新しい本棚登録 0
新しい本棚登録 1
ツイートする