殺し屋 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション) (二見文庫 ロ 1-8 ザ・ミステリ・コレクション)

  • 二見書房
3.83
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本棚登録 : 287
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784576981369

作品紹介・あらすじ

ケラーの今回の標的はテキサスの大富豪だった。ケラーは下見のため、当の富豪が主催するガーデン・パーティにもぐりこむ。だが、富豪の孫がプールで溺れかけているのを目撃し、やむにやまれず助けたことから、事態は思わぬ方向へ…。MWA賞受賞作の上記「ケラーの責任」をはじめ、同じくMWA賞に輝く「ケラーの治療法」など、孤独な殺し屋ケラーの冒険の数々を絶妙の筆致で描く連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 血と硝煙の臭いを漂わせるハードボイルドな装幀さながらの内容をイメージすると確実に面食らうであろう【殺し屋】らしくない主人公・ケラーの仕事記録を収めた連作短編集。ささやかな生活を営みながら、依頼の都度【出張】へと赴くケラーは殺しのプロフェッショナルながら、独特の人生哲学を持ち、人間味に溢れた不思議なキャラクター。斡旋業者の受付嬢・ドットとの小気味好い掛け合いも魅力のひとつ。帯紹介を書く伊坂幸太郎氏も影響を受けたらしく、確かに氏の作品に登場する殺し屋や泥棒の飄々とした様にはどことなくケラーの面影があるような。

  • 非常に好きな作品で中学生の頃何度も読んでいた。5、6年の時を経て再読。やっぱり面白くてすげー、と。殺し屋という非日常的な存在を、それが日常になっちゃってる主人公ケラーを通して描く。彼にとって殺し自体はもうルーチンなので、それを語る口調に情熱は全くない。銃砲店の主人に話を合わせて拳銃を手にいれるなんて、お役人が判子を押す作業と同じなのだ。彼が目を向けるのは、テレビで流れてるフットボールとか、レストランのウェイトレスの結婚生活を妄想するとかいう、めちゃくちゃどーでもいいことだ。そりゃ、そうなるよね。慣れきったことを繰り返す日々の中ではどーでもいいことが頭の中で主張し始めたりする。つまり、ケラーはただの乾ききった生活を送るおっさんで、僕らがそこに共感するやいなや、乾ききった口調で殺しを語り始めて、僕らを突き放す。ケラーを見ていると日常を感じながら、非日常を見ることができる。彼は共感できる殺し屋っつー稀有な生き物なのだ。

  • 3.2

  • “殺し屋ケラー”シリーズの第1作(連作短篇集)。巻頭を飾る短篇「名前はソルジャー」の冒頭でケラーが飛行機の中で映画を観ているのが気になって、話の筋を追うよりも、ケラーが映画を観ているシーンを探しながら読むモードで最後まで読んだ。

    作中の映画を観る場面を抜き出すと、ケラーの“映画との付き合い方”が見えてくるのが面白い。テレビで放送されている映画を途中からでも観るんだ、とか、HBOで放送される映画が観たいのに泊まっているモーテルではHBOが観られないとなるとモーテルを変えようとするんだ、とか。

    ケラーが自身の行いを、かつて摂取したフィクションに影響されたものであることを自覚するくだりもあるし、先行する数多の作品群を意識した作りになっているのは間違いない。掉尾を飾る「ケラーの引退」では、ケラーが殺し屋稼業から足を洗って切手収集を始める話。着地の仕方が最高。

  •  ヒットマンの話。派手なアクションもなく、手に汗握るドキドキもなく、淡々と殺し屋は仕事をこなす。ときには手配ミスでターゲットではない無関係な人を殺すが、殺し屋は良心の呵責も感じない。だからといって冷血でもない。犬を飼えば恋もする。でもってふられる。
     描かれるのは殺し屋の私生活。それが退屈でありながら読んでしまう。不思議な小説。うまい、ってことなんだろうな。

  • 初ローレンス・ブロック。
    ハードルが低いかと思い、短編集にチャレンジ。
    まさか長編が先行して書かれているとは予想してませんでした(^_^;)
    少しユーモラスなところもあるが、ビターでオフビートな殺し屋の物語。
    連作になっており、時系列に沿って進行していくので徐々に主人公を取り巻く環境が変化していき、段々と知り合いの話を聞いているような気分になる不思議な作品でした。

  • 前回、長編を先に読んじゃったんだけど、 今作の短編のほうが、 わたしには合ってたかも。

  • 古本屋で何気なく手に取った一冊。最初のページは固有名詞が多くて面食らったが、数ページも読むと、どっぷり惹き込まれた。派手なアクションもトリックもないけど、なぜか面白い。殺し屋シリーズにはまり、ローレンス・ブロックにはまりました。

  • 図書館で。
    伊坂幸太郎推薦!みたいな文章をどこかの本屋で見かけたので借りてみたのですが。ん~。面白くない訳でも取り立てて面白いってほどもないお話でした。というか殺人請負業が結構うかつじゃない?と思う所もしばしば。

    ホワイトフリントじゃなくて…どこぞに住んでいる親父さんはともあれドットは本当に大丈夫なんだろうか?簡単な手紙で騙されちゃったり。それを言ったらケラーもだけど。愛国心という言葉は利用されやすいんだなあということがなんとなくわかるお話でしたけれども。結局なんでネルソンのご主人を殺したんだかよくわからなかったし、ガールフレンドも結局ネルソン目当てだったのかなあと考えるとちょっと人間不信になりそうなお話でした。

  • 名作!

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著者プロフィール

ローレンス・ブロック Lawrence Block
1938年、ニューヨーク州生まれ。20代初めの頃から小説を発表し、100冊を超える書籍を出版している。
『過去からの弔鐘』より始まったマット・スカダー・シリーズでは、第9作『倒錯の舞踏』がMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長篇賞、
第11作『死者との誓い』がPWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)最優秀長篇賞を受賞した(邦訳はいずれも二見文庫)。
1994年には、MWAグランド・マスター賞を授与され、名実ともにミステリ界の巨匠としていまも精力的に活動している。

「2020年 『石を放つとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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