チリンのすず (フレーベルのえほん 27)

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  • Amazon.co.jp ・本 (31ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784577003275

感想・レビュー・書評

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  • 絵本を超えた一遍の文学作品としても遜色ないほどクオリティの高い絵本です。
    世代を越えて問いかけるそのテーマは「喪失」と「無常」。
    やなせたかしさんの描く愛らしい仔羊のチリンが変貌していく様(さま)に
    読み手は惹きこまれていくでしょう。
    10年、20年、30年と時を経て読み返してみてください。
    世の中の酸いも甘いも経験した大人になってから読むと、より深くこの作品のメッセージが心に響くのではないでしょうか。

    もちろん、子どもの頃に出会っていれば、こんなに幸せなことはありません。
    この作品に感動できる子はその後も豊かな読書人になっていくことでしょう。
    なぜなら、読み終わっても永遠に心に問いかけるテーマを持っているからです。
    その答えを探す旅は人生そのものです。

    初版時に読了。再々読。

  •  この絵本のことを何で知ったのだろう。新聞記事かな,それともだれかのFBだったかな。この絵本は,チリンという羊の子どもとウォーというオオカミとの物語。
     ウォーは,チリンのお母さん羊を食べてしまったのですが…。
     一方的な悪はいない,というのが作家やなせたかしさんの世界です。あの有名なアンパンマンに出てくるバイキンマンも,どこか憎めません。下手をすると,バイキンマンの方が人気があるかもしれませんよね。ドキンちゃんも同じ。あの悪役がいてこその「アンパンマン」です。
     「チリンのすず」には,自然界の掟(弱肉強食)を否定する意外な内容が出てきます。が,それは新しい弱肉強食の世界でもあります。チリンは,その矛盾に気付くのですが,どうすることもできません。
     あなたが「わたしの敵だ」と思っている人は,あなたを育ててくれた人ではありませんか? その人がいなかったら,今のあなたはありますか? そんなことを自問自答することでしょう。
     合掌!

  • 哀しくやるせなくてつらい話だった。

    狼にお母さんを殺された子羊のチリンが
    自分を偽ってその狼に、弟子入りする。
    そして、仲良くなった狼が
    羊たちを襲うその時に、チリンは狼をやっつけるのだ。
    そして、自分のやったことに後悔をして、
    羊に戻れない自分を悔やむ。
    哀しいお話だ。

    例えば、誰かを憎んでいて、
    その誰かが幸せなることは
    避けたいけれど、
    自分の手で不幸に陥れることは
    自分を愛してくれる人を不幸にしてしまうことなのだろうか。

    チリンのお母さんはこの結末をどう思っただろう。

    憎しみを隠して心の平穏を保っていても、
    奥底にに粘土のような泥が沈んでいる。

    時々それが掻き混ぜられて舞い上がったら
    心は澱んでしまう。そんな泥を抱えた人は
    どうやって平穏を保ち続けたらいいのだろう。

    舞がらないように気を付けて気を付けて
    生きているけれど泥を取り除くことができないことも知っている。

    やなせさん、凄いよ。

    10年前に読んでたらどうしただろう、私。

    許すってどういうことなんだろう。

  • えっ…。
    これは、哲学だ…すごすぎる…。

    やなせたかしは、嘘を描かない人だ。
    人の心に、誠実な人だ。
    きっと。

  • ◆とても可愛らしい表紙。開くと題字の下にひとつの詩。「チリンの すずで おもいだす やさしい まつげを ほほえみを チリンの すずで おもいだす このよの さびしさ また かなしみ」◆母親を殺されたチリンは強くなりたいと願い、どこからみてもひつじには見えないけだものに成長します。復讐を遂げるけれども、復讐では自分は取り戻せなかった。私たちが悲しい・大きな傷を受けたとき、自分を取り戻すためには、いったいどうすればよいのでしょうか。その難しさ・哀しみ・苦み。(初版1978年)

  • 著者である、やなせたかしさんご自身も「子どもの絵本としては相当インパクトの強いお話です。僕としては、子どもが現実の社会に出て行った時に出会う厳しさを思う時、こんな絵本も読んだ方がいいのではないかと思ったのです。甘さがなく、僕の作品の中では大変珍しいものです。」と書かれているくらいに、子どもにも,大人にも結構なインパクトで迫り、それぞれの立場で深く考えさせられる作品だと思います。

     狼のウォーに母親を殺された子羊のチリンは、復讐のため強くなることを決意し、牧場を出て、復讐相手であるウォーのもとへ行く。チリンはウォーのように強くなることを願い、ウォーに特訓を求める。何故に復讐相手であるウォーのもとへ行ったのか、何故に復讐に燃えるチリンの願いをウォーは受け入れたのか。そこを洞察する力は残念ながら私は持ち合わせていないが、ウォーはチリンを森の中でも恐れられるほどの獣へと育て上げる。

     長い年月を共に過ごしても相容れない同士であることには変わりない。けれど情というものは相容れない同士でも生まれるものだ。ウォーはどんな思いなのか、チリンはまだ復讐することを諦めていないのか、これからどうするのか。ここまでくると、読み手の気持ちが揺らぎ始める。「ここまで育ててくれたのだ、復讐なんてもうしなくていいんじゃないのかい?」って...。しかし、現実はそう甘くない。
     憎しみが信頼へと変化していく中で、憎しみを否定すれば、母親の死も、群れを捨てこれまで自分がやってきたことも否定することになるのだから。

     結末は是非,自分の目で確かめて頂きたい。私も上手く説明できないが、いろんな思いが絡み合い,熱いものが込み上げてくる。

     何かを失い何かを得るために,何かを犠牲にしなければならない。犠牲にしたものに再び帰依することなどできない。そんな実社会の厳しさをしっかりと受け止めていかねばなるまい。悲しく苦しいことだが...。

  • 首に鈴を下げた小さな子羊が、ある日突然オオカミによる群れの襲撃でお母さん羊を失う。子羊はその足でオオカミのいる山に登り、弟子入りを願う。

    復讐せずにいられない気持ち。
    復讐を原動力にした信じられないエネルギー。
    仇は永遠に仇ではいてくれないということ。
    そして復讐を遂げて残るのは穴の空いたさみしい心。

    どうにも寂しい、すさんだ気持ちで絵本を閉じた。
    小さな子どもたちも、チリンの物語を追いかけてこの寂しさに至るのだろうか。どんな感想を持つのか気になるところ。
    「復讐」のありさまを描いた1冊。

  • 心のうんと深いところで、考えさせられた。

  • 憎しみからは何も生まれない。やなせさんの絵本はすっと入ってくる。

  • 寝る前に息子と絵本を読みました。

    家族で高知に旅行した際に「アンパンマンミュージアム」で購入した、『チリンのすず』です。


    「アンパンマン」の大ヒットで有名な"やなせたかし"さんの初期の作品です。

    狼の"ウォー"に母親を殺された子ひつじの"チリン"は、ある日"ウォー"を訪ね「ぼくもあなたのような つよいおおかみになりたい。ぼくをあなたのでしにしてください。」と頼みます。
    クリックすると元のサイズで表示します

    "チリン"は"ウォー"の厳しい訓練に耐え、強い獣となり二匹で山々を暴れまわりますが、、、
     或る夜、"チリン"は"ウォー"を裏切り、仇討ちを果たします。

    母親の復讐とはいえ、、、
    親子同然に暮らしてきた"ウォー"を殺したことで、"チリン"の悲しみは、より一層深くなる… という、なんだか辛く悲しい物語です。

    暴力(武力)に対し、暴力(武力)で返しても何も得るものはないんだ… ということを、少しでも息子が感じてくれるとイイですね。

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著者プロフィール

1919年生まれ、高知県出身。百貨店宣伝部にグラフィックデザイナーとして勤務の後、漫画家・絵本作家として活動を始める。絵本の作品に『やさしいライオン』『チリンのすず』『あんぱんまん』(フレーベル館)など多数。2013年永眠。

「2022年 『アンパンマンと らんぼうや』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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