チリンのすず (フレーベルのえほん 27)

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レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (31ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784577003275

感想・レビュー・書評

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  • 絵本を超えた一遍の文学作品としても遜色ないほどクオリティの高い絵本です。
    世代を越えて問いかけるそのテーマは「喪失」と「無常」。
    やなせたかしさんの描く愛らしい仔羊のチリンが変貌していく様(さま)に
    読み手は惹きこまれていくでしょう。
    10年、20年、30年と時を経て読み返してみてください。
    世の中の酸いも甘いも経験した大人になってから読むと、
    より深くこの作品のメッセージが心に響くのではないでしょうか。

    もちろん、子どもの頃に出会っていれば、こんなに幸せなことはありません。
    この作品に感動できる子はその後も豊かな読書人になっていくことでしょう。
    なぜなら、読み終わっても永遠に心に問いかけるテーマを持っているからです。
    その答えを探す旅は人生そのものです。

    初版時に読了。再々読。

  • 哀しくやるせなくてつらい話だった。

    狼にお母さんを殺された子羊のチリンが
    自分を偽ってその狼に、弟子入りする。
    そして、仲良くなった狼が
    羊たちを襲うその時に、チリンは狼をやっつけるのだ。
    そして、自分のやったことに後悔をして、
    羊に戻れない自分を悔やむ。
    哀しいお話だ。

    例えば、誰かを憎んでいて、
    その誰かが幸せなることは
    避けたいけれど、
    自分の手で不幸に陥れることは
    自分を愛してくれる人を不幸にしてしまうことなのだろうか。

    チリンのお母さんはこの結末をどう思っただろう。

    憎しみを隠して心の平穏を保っていても、
    奥底にに粘土のような泥が沈んでいる。

    時々それが掻き混ぜられて舞い上がったら
    心は澱んでしまう。そんな泥を抱えた人は
    どうやって平穏を保ち続けたらいいのだろう。

    舞がらないように気を付けて気を付けて
    生きているけれど泥を取り除くことができないことも知っている。

    やなせさん、凄いよ。

    10年前に読んでたらどうしただろう、私。

    許すってどういうことなんだろう。

  • えっ…。
    これは、哲学だ…すごすぎる…。

    やなせたかしは、嘘を描かない人だ。
    人の心に、誠実な人だ。
    きっと。

  • ◆とても可愛らしい表紙。開くと題字の下にひとつの詩。「チリンの すずで おもいだす やさしい まつげを ほほえみを チリンの すずで おもいだす このよの さびしさ また かなしみ」◆母親を殺されたチリンは強くなりたいと願い、どこからみてもひつじには見えないけだものに成長します。復讐を遂げるけれども、復讐では自分は取り戻せなかった。私たちが悲しい・大きな傷を受けたとき、自分を取り戻すためには、いったいどうすればよいのでしょうか。その難しさ・哀しみ・苦み。(初版1978年)

  • 著者である、やなせたかしさんご自身も「子どもの絵本としては相当インパクトの強いお話です。僕としては、子どもが現実の社会に出て行った時に出会う厳しさを思う時、こんな絵本も読んだ方がいいのではないかと思ったのです。甘さがなく、僕の作品の中では大変珍しいものです。」と書かれているくらいに、子どもにも,大人にも結構なインパクトで迫り、それぞれの立場で深く考えさせられる作品だと思います。

     狼のウォーに母親を殺された子羊のチリンは、復讐のため強くなることを決意し、牧場を出て、復讐相手であるウォーのもとへ行く。チリンはウォーのように強くなることを願い、ウォーに特訓を求める。何故に復讐相手であるウォーのもとへ行ったのか、何故に復讐に燃えるチリンの願いをウォーは受け入れたのか。そこを洞察する力は残念ながら私は持ち合わせていないが、ウォーはチリンを森の中でも恐れられるほどの獣へと育て上げる。

     長い年月を共に過ごしても相容れない同士であることには変わりない。けれど情というものは相容れない同士でも生まれるものだ。ウォーはどんな思いなのか、チリンはまだ復讐することを諦めていないのか、これからどうするのか。ここまでくると、読み手の気持ちが揺らぎ始める。「ここまで育ててくれたのだ、復讐なんてもうしなくていいんじゃないのかい?」って...。しかし、現実はそう甘くない。
     憎しみが信頼へと変化していく中で、憎しみを否定すれば、母親の死も、群れを捨てこれまで自分がやってきたことも否定することになるのだから。

     結末は是非,自分の目で確かめて頂きたい。私も上手く説明できないが、いろんな思いが絡み合い,熱いものが込み上げてくる。

     何かを失い何かを得るために,何かを犠牲にしなければならない。犠牲にしたものに再び帰依することなどできない。そんな実社会の厳しさをしっかりと受け止めていかねばなるまい。悲しく苦しいことだが...。

  • ひつじのチリンが、母親を殺したオオカミに復讐を誓い、強くなっていく物語。

    成長すること目標に向かって努力し到達すること。何かを得るために犠牲にしたもの。周りの状況や環境、考え方や価値観なども変わりゆくこと。そしてその時に感じる矛盾。寂寥感。戻れない過去への思慕。さまざまな人生や社会のいろいろを示唆してくれる物語だが、お話としては決して甘くなく、厳しく悲しく救われない物語。

    (ちなみに私は、このお話のアニメ版を幼稚園で見て、その後の人生に影響するほどのトラウマになりました‥)

  • 深くて悲しいお話。
    ファンシーな表紙とは真逆のオチが悲しい。
    表紙に騙された。

  • やなせさんの本「わたしが正義について語るなら」で

    「悪者は最初から最期まで完全に悪いわけではありません。

    世の中にはある程度の悪がいつも必要なのです。現実の社会はそういうところが厳しい。ぼくはみなさんが社会に出る厳しさを思うと、そういう絵本も読んだ方がいいのではないかと思って『チリンのすず』を書きました。」

    と、おっしゃっています。


    答えとして殺すという事は絶対に幸せと満足にはなりえない事を添えたうえで
    もし突然怒りや憎しみ、痛みと向き合う時が来たら
    どうする?と問われているように感じました。

    チリンの場合は長い時間側にいてしまった事で敵が大切な存在になってしまっていた訳ですが(ウォーが悪だけではなかった事も大きな理由ですが…)
    現実に大切な人や何かを奪われたとして、遠くから機会を伺い報復したとしても、心が晴れない事はあきらかで。
    大切なのはどの道を選択するかではなく
    心がどう成長するかに尽きると思うのですが(『謝るなら、いつでもおいで』のお兄さんのように)
    心の健全な鍛え方が分からない…。
    分からないから考える。
    良い本というのは考えさせる本だと思う。

  • お母さんを殺した狼の元に弟子入りしたチリン。敵の元で力を蓄え、やがて復讐する。でも、復讐を果たした後沸き上がった感情は喜びではなく悲しみ。いつの間にかお父さんのようにかけがえのない存在の命を奪ってしまったチリンの切なさがつらい。

  • 衝撃的な話だけど、昔から心に残っている話です。
    何年かぶりに読んだけど、いろいろと考えさせられました。
    やなせたかしさんの絵本の中で一番好きです。

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著者プロフィール

やなせたかし
1919年生まれ、高知県出身。百貨店宣伝部にグラフィックデザイナーとして勤務の後、漫画家・絵本作家として活動を始める。絵本の作品に『やさしいライオン』『チリンのすず』『あんぱんまん』(フレーベル館)など多数。2013年永眠。

「2019年 『アンパンマンと もぐりん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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