かさ (ジョイフルえほん傑作集 10)

著者 :
  • 文研出版
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本棚登録 : 782
感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (28ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784580815339

作品紹介・あらすじ

雨の中を女の子が赤いかさをさしておとうさんをむかえにいくまでに、ドラマチックで楽しいできごとに合う。墨一色の中に赤いかさを配した絵で伝える文字のない絵本。

感想・レビュー・書評

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  • 文章の全くない絵本で、女の子の赤色の傘以外、すべて黒一色の世界は、ちょうど、梅雨時のような、どんよりとした気怠げな雰囲気も漂うだろうと思われる中、割と人々の表情が明るく感じられるのは、70年代当時の時代性なのだろうか。

    そもそも、今現在、女の子がお父さんに傘を届けに、そこそこ遠い距離を歩いて行く事自体、なかなか見られる光景ではないのかもしれないが、その道中、様々なものに興味を惹かれつつも、目的地を目指す女の子の行程には、つい気になるものを感じさせる。

    どれだけ俯瞰した、遠目の小さい視点に変わっても、傘の色でどこにいるのか分かり、序盤のシーンで女の子の表情が分かるので、たとえ傘で表情が見えなくても、どんなことを考えているのだろうと、想像しながら楽しんでいたら、通行人の一人がぶら下げている紙袋に、『STOP THE WAR』。

    それはちょうど、女の子が「世界の人形展」のショーケースを見ている横にあり、一瞬、人々の表情が明るく感じられたのは、気のせいだったようにも思われてくるが、少なくとも現代において、女の子がお父さんに傘を届けに行く光景が、おとぎ話とならないよう、祈るばかりである。

    • たださん
      111108さん、返事のお返事をありがとうございます♪

      国も違うのに、約20~30年の時を経た共通点には、興味深い不思議な感じがありますよ...
      111108さん、返事のお返事をありがとうございます♪

      国も違うのに、約20~30年の時を経た共通点には、興味深い不思議な感じがありますよね。赤い傘には、何かしら魔力めいたものがあるのでしょうか。

      そうなんです。スーちゃんは表紙もそうなのですが、本編の絵もみんな可愛くて、ポストカードになりそうな魅力があると思いますし、なったら絶対買います・・って、妄想ばかり逞しくて(^_^)
      2022/07/18
    • 111108さん
      たださん

      スーちゃんの絵本、中もちゃんと読んで見てみたいです。探してみますね!大好きな絵本がポストカードになったら嬉しい‥妄想膨らみますよ...
      たださん

      スーちゃんの絵本、中もちゃんと読んで見てみたいです。探してみますね!大好きな絵本がポストカードになったら嬉しい‥妄想膨らみますよね!
      2022/07/18
    • たださん
      111108さん

      ありがとうございます。
      いろんなスーちゃんが見られるので、機会があれば、是非(^_^)
      111108さん

      ありがとうございます。
      いろんなスーちゃんが見られるので、機会があれば、是非(^_^)
      2022/07/19
  • 雨の音が好きだ。

    夕立ちのあとの、
    あの独特なアスファルトの匂いや
    公園のベンチに座って、
    雨音をBGMにマッタリ読書も心地いい。

    干からびて薄汚れたものに
    潤いと清浄を与えてくれる雨。
    雨の中では、すべてが遠いような近いような奇妙な時間が流れ、
    頭の中がゆるゆるとリラックスしてゆく。

    吉田篤弘曰わく雨が降ると
    昔の時間が戻ってくると言ってたけど、
    まったくそのとおりだと思う。



    僕が子供の頃、母からはじめてのお使いを任されたのは
    まだ5歳の頃だった。

    僕の任務は、片道20分の商店街への道のりを
    カレー粉の入った
    メタルインドカレーの缶詰を買って帰ること。

    家を出てすぐに野犬の群れに追いかけられ、
    虎の子の千円札の入ったボケットの財布を落としてしまった僕は
    日が暮れるまで
    知らない町の車の下や路地裏のどぶ板の下を
    寝転がったまま探し続けた。

    そのうち、ざぁざぁと雨が降りだし、
    大声で泣きながら途方に暮れていたところを
    たまたま通りがかった近所に住むおばちゃんが僕を見つけてくれて
    なんとか家には帰れた。

    テレビの『はじめてのおつかい』なら
    ここで感動の再会となるのだろうけど、
    現実はそうそう甘くない。

    お金を無くしたことと、
    お金を探すために寝転がったことと
    雨に濡れたことで
    全身どろんこにまみれた僕の姿を見て
    母は怒って、僕は再び外に締め出された。

    そんな苦い思い出も今となっては
    オレ得な笑いのネタだ(笑)

    僕が僕であるための、雨の思い出。



    この絵本は雨の中、
    そんな『子供だけのおつかい』に挑む少女を描いている。

    少女に託されたミッションは
    急に振りだした雨で困っているお父さんに
    駅まで傘を届けること。

    重大な任務を仰せつかった責任感と
    大好きなお父さんに会える嬉しさと
    もしかしたら褒めてもらえるかもしれない期待感と、
    さまざまな思いが入り交じった駅までの楽しい時間。

    文字が一切なく、墨一色の絵に
    少女が持つ傘だけに赤を配していることで、
    鮮烈に少女の思いが胸に迫ってくる。


    公園の脇を通り、池で泳ぐ鴨の親子を見て微笑み、
    母親と歩く友達の男の子とバッタリ会って手を振り、
    (おそらく、『今からお父さんを一人で迎えに行くの』と自慢したんだろうな)

    散歩中の犬に吠えられ、
    陸橋の上から走り行く貨物列車を眺め、
    ケーキ屋の前で美味しそうなドーナッツを羨ましげに見て、
    デパートのショーウィンドーに飾られた世界の人形たちに目を輝かせ、
    大人たちの真似をして、横断歩道の信号に並ぶ少女。

    信号を渡って、駅で待つお父さんに無事傘を渡したページの
    少女の誇らしげな顔ときたら。

    その顔を見れば、
    誰もが遠く忘れていた
    自分のお使いの記憶を思い出すことだろう。

    少女が体験した雨の冒険譚は
    彼女を作る記憶の核となって、
    大人になった少女を、
    今も奥底から支えてくれている、僕はそう信じている。

  • 文字のない絵本。女の子がお父さんを駅にお迎えに行くというシンプルな内容。
    赤い傘をさした女の子が、モノクロで描かれた雨の街を駅に向かって歩いて行く。
    昭和の時代だろうか、どこか懐かしさを感じる。
    ただ、今の時代に女の子一人でお迎えに行かせることはないだろうなあと思う。
    雨の日に手に取りたい一冊。

    • ehon museumさん
      51nujun15さん
      フォローありがとうございます。3冊中2冊も重なるとは奇遇ですね。これからもよろしくお願いします。
      51nujun15さん
      フォローありがとうございます。3冊中2冊も重なるとは奇遇ですね。これからもよろしくお願いします。
      2018/07/02
  • 3歳からおすすめ。
    スピルバーグの名作シンドラーのリストを想起させる秀逸なセンス。
    70年代日本のよき情景には、令和に生きる私たちをも引きつける良さがある。
    こちらも名作と言えると思う。

  • 文はなく、絵だけの構成。モノクロの絵の中に赤い傘が印象的で、その赤い傘を追うことでストーリーになる。
    買ってもらえてよかったね。

  • じのないえほん
    雨ふりの日のおむかえ
    墨一色の絵におんなの子の朱色のかさが鮮やか^^*
    駅までの道中
     かえりにごほうび買ってもらえるかな?
     私もなんだかワクワクした気持ちになったりして(笑)
    かえりはお父さんと相合傘^^*

    雨の日も楽しい気分にさせてくれる一冊に思えました♪

  • 文章のない絵本。
    赤い傘が鮮やかで印象に残ります。
    もしかして、今はこんな平和な情景もうないの?

  • 文字は背景にあるだけの絵本

    ストーリーはやはりという展開。
    雰囲気、世界観などがしっかりしていて、感情移入してしまう。

  • 雨の中を女の子が赤いかさをさしておとうさんをむかえにいくまでに、ドラマチックで楽しいできごとに合う。墨一色の中に赤いかさを配した絵で伝える文字のない絵本。

  • 良かった

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著者プロフィール

太田大八 1918年、大阪に生まれる。幼時をウラジオストック、少年時代を長崎県、東京神田で過ごす。『だいちゃんとうみ』『馬ぬすびと』『やまなしもぎ』、『鬼の橋』『セシルの魔法の友だち』(以上福音館書店)、詩画集『詩人の墓』(谷川俊太郎・詩)鼎談集『詩人と絵描きー子ども・絵本・人生をかたる』(谷川俊太郎・山田薫)などがある。

「2023年 『とき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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