たのしい写真: よい子のための写真教室

  • 平凡社
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感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582231175

作品紹介・あらすじ

現代美術から広告まで幅広く活躍する写真家が、経験をもとに書き下ろした、はじめての写真論。

感想・レビュー・書評

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  • 筆者の思考の軌跡をリアルに終える仕上がりになっていた。自分はきりっとしたフレームとか、何かと写真が下手なのだけれど、写真が好き。いつまでも下手であっても、下手なりに写真は撮り続けたい。だからすごく元気をもらった。
    写真にこそ時間が形象化される。絶えず、時間を撮り続けることに失敗し続けたいと思った。

  • 「写真が本当なわけではない」という事は今や皆が知っているのに やはり写真に真実性を感じて惑わされる事が多いのは 「真実を写す」という言葉に惑わされているのではないか、そもそも photograph=写真 という訳語で良いのか、photo=光 graph=画 が正しいのではないのか、という話から始まり 「確かに!」と思わされ 惹き込まれ、あっという間に読み終えた。
    大きく分けた歴史の話に続き、かつてあった 様々な境界線が無くなり「絵画から脱却することで生まれたモダニズムの写真が一転 ポストモダンの今日ではまたもアートに接近している」と括っている。ここでは 個人の小さな物語についても語られている。そしてこれが「真を写すだけではない」というテーマに繋がる。これらを述べた上で、以下のワークショップに入る。

    1. あなたの好きな写真集の中から1枚の写真を選んで、それが、どのように成立しているかを言葉で説明し、次いでその1枚と同じ構造の写真を撮影してください。
    2. 「写真は真実だけではない」ということを意識するために、最初からウソを取り込んだ写真を撮ってみよう。
    3. 写真の楽しさは自由なところーですが、あえて撮影に制約を設けて、不自由な状態で撮影してみてください。

    1. は「自分はその写真の何が好きなのか、どのような構造がその写真を成り立たせているのか、を言葉にして実際に撮ってみる」という作業にあたる。
    2. では、被写体を疑う場合、「本当や真実といった装いに多くの人が引きずられてしまうが、強度のある写真というのは そもそも写っている事物や被写体を取り巻く文脈や関係性を全て取っ払っても鑑賞に耐えうる作品なのだ」ということ、また、写真プリントというもの自体を疑う場合、「我々が写真を見る時の知覚というのは、写真に写っている被写体を見る知覚が一つ、同時に 机の上に置かれた古くて小さなプリントか、額装されて白い壁に飾られた大きなプリントか プロジェクターによって壁に投影されたスライド画像なのか といった具体的に物自体の存在や形状の知覚 の二重の情報がある」という話で括られている。
    3. では「自分の意思で動き回って決定的瞬間を探す」の真逆にあるのは「自分は動き回らず目に飛び込んで来る被写体を受け入れる」ことであるということが述べられている。

    全編通して伝えられているのは、「写真=真実」 或いは 「決定的瞬間」でなければならない という呪縛から自由になろう、といったメッセージであった。
    しかし「なんとなく」のセンスだけでなく、鑑賞も撮影も、言葉で説明出来る つまり戦略的に意図した作法や構造の観方・撮影の薦めでもある。
    よくある 内容の薄いハウツーでも歴史だけの書でもなく、バランスの良い書という印象。
    但し、書きたいままに書いているような部分も見られたので 熟読ではなくサラッと読んで ワークショップに挑戦して 自分なりに吸収するのが良さそう。

  • 写真が現在を切り取るだけではなく
    作り込まれたアート写真もあれば
    事実を捉えるための戦争の写真
    その人の感情を捉えるモノ
    その瞬間を閉じ込めたい人
    色んな意味や役割があって
    「いい写真」って何なのか 色んな角度から
    問題提起があっておもしろかった

    Photoがギリシャ語で光を表すというのが
    すごく面白かった
    真実を写すという日本語の訳とはちがう
    ニュアンスがある

  • ふむ

  • 写真の入り口としてよかった。
    (著者の見方による)写真の歴史、基礎からざっくばらんな話まで。

  • 写真についての本というのは、おおきなジャンルになっている。写真を見ていると、何か言わずにはいられなくなるところがある。

    ホンマタカシによる写真教室。

    決定的瞬間 vs ニューカラー
    言葉だけだと対概念になっていないが、写真の撮り方でいえば、シャッタースピードを早くして絞りを開いて被写界深度を浅くして一部にだけピントを合わせて撮るのが前者で、シャッタースピードを遅くして、そのぶん絞りを小さくして、被写界深度を深くして画面の隅々までピントを合わせて撮るのが後者。ろしゅつをきめる、シャッタースピードと絞りのトレードオフによるものだ。
    だからこれはたまたま取り上げられた対比ではなくて、もっと根本的な、写真のメカニズムに内在する対比なのだという。
    「写真には大きく分けてふたつの撮り方があり、どちらかを選択するかによって撮る人による物や世界のとらえ方に大きな違いが生じるのだ」(p.35)

    後半はいろんな話題がパラパラ出てきて、写真のまわりを大きく回るエッセー。写真について突っ込んだ記述をしてもよい文脈を持ったエッセーである。

    わたしには、ジュリウス シェルマンの建築写真の話が面白かった。昼間の内観の写真を撮るとき、内部にたくさん照明を仕込んで、ウチ外の連続感を出すのだという。いまなら合成してHDRというのもあるが、ここでは一発で撮るのだから、すごいものだ。超有名なケーススタディハウスの夜景の写真も、夜景を7分も露光しておいてから、「そうは見えないが)作り込んだ照明をつけて内観を撮ったのだと言う。すげえ。


  • 写真の大学講義
    好き好きモードが楽しいな。
    変わり種

  • 写真のことを全く知らない自分にとって、写真を知るきっかけになる本でした。
    写真にも"かの有名な"と呼ばれるような一枚があったりするんですね、、知らなかった。。

    外国の方の名前は全然覚えられないけど、知ってる写真家の名前が出てきたり、気になる写真家さんも増えて良かった。

    これから先、写真展に出向いたときにすこしでも前より写真を楽しめるようになってるとよいなーー。

  • 僕に写真のたのしさを教えてくれた。

  • ユルい話が多いようだが、そのユルさを含め、写真に対する考えかたは僕の思いと共感できるものがあった。好きな本だ。

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