歴史原風景

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582277814

作品紹介・あらすじ

さらに進化したデジタル映像表現。列島の風土に込められた古人の心を求めて北から南へ。日本を形作った歴史と伝説の風景がいま蘇る。

感想・レビュー・書評

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  • 間宮林蔵の蝦夷地探検、恐山、安東水軍十三湊、男鹿、平泉、遠野、芭蕉の出羽紀行、西行の戻しの松・吉野、世阿弥の佐渡、安曇族の塩の道、鎌倉の切り通し、密教縁の能登路、縄文の森、熊野古道、高野山、女人高野室生寺、平城京、山の辺の道、石見銀山、出雲、祖谷渓、四国遍路、対馬、国東、鵜殿洞窟、屋久島、琉球など歴史に彩られた風景を写す重厚な写真集。なんか重いし暗い。写し方によって、いや写真家の意識によってこんなにも風景は変わるのだ。

  • goya626さんのレビューを読んで、歴史を幻視する写真集?それこそ私の求めていた写真集だ!と思い紐解いた。今秋関西遺跡の旅を回っていた時も、私の目には普通の街の風景や野原の風景に、常に弥生時代の原風景が見えていた。

    車で走っていても、ふと路肩に停めて目の前の暮れなずむ三輪山に、古墳時代創世記の纏向の人々を幻想していたのだ。

    で、プロの写真家ならばどう撮るのか?お手並拝見。

    素晴らしい写真はあった。
    芭蕉東北吟行の旅跡を訪ねて、義経自刃の地である義経堂に至る。義経堂は一切現れない。北上川を見下ろす小高い山の上にお堂はあり、芭蕉は「高館から衣川を望み、つわものを哀れむ句を詠んだ」と記している。目の前には鬱蒼とした林と大きく湾曲する川が流れている景色である。石橋さんは、平安末期と江戸時代の二つを同時に幻想していただろう。

    遠野物語が記す民話の里と題して、黄金の稲穂むすぶ田んぼの向こう側に陰影深い里山を写し、「魑魅魍魎や動物、神と人間が身近であった時代」と書く。

    西行修行の旅は、この写真集にあるように、苔むす吉野山の奥、山また山、昼なお暗い修験道だったのだろう。

    石橋さんの視点は「滅びの美学」である。「日本人には敗者に寄り添う美学がある」と言ったのは池澤夏樹である。その積み重ねがあるから、現代の撮影でも古代を照射することができる。本書がかなり暗く暗くなるのは仕方ない。

    ただ、せっかく奈良県の山辺の道をテーマに選んでいるのに、出てきた風景は表紙の写真なのは気に入らない。後書きで檜原神社に参った時に「大和盆地が一望できる。平野の遥か西には葛城山から二上山へ続く山並みが望まれ、日本武尊がまほろばと呼んだ時代の情景が浮かび上がってくる」とまで書いているのに、この写真なのだ。この影に古代竹藪を幻視しているのかもしれないが、中世以降の漆喰壁に写った影ならダメでしょう。

    私ならば、明るい風景になるけれども、箸墓古墳を手前に西日に輝く三輪山を撮るだろう。或いは、なんとかして大和三山(耳成、畝傍、香久)をポツンと朝靄に浮かび上がらせる風景を撮るだろう。

    暗い情念ならば、何故石橋さんは島根県と鳥取県の境目にある黄泉比良坂を選ばなかったのか?黄泉の穴の伝説を持つ縄文時代から延々続く猪目洞窟を選ばなかったのか?

    という不満を持ちつつ、こういう写真集もあるのだ、ということが知れて良かった。

  • 目次:蝦夷地探査と開拓の足跡、地の果て下北の恐山霊場、安東水軍十三湊の盛衰、風土が培う男鹿の伝説、平泉の栄華と義経哀話、遠野物語が記す民話の里、郷愁の出羽路紀行、西行戻しの松の情景、芭蕉が愛した山寺の風情、…他

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著者プロフィール

石橋睦美●1947年生まれ。写真家。千葉工商高等学校卒業。1975年から本格的な撮影活動に入る。東北地方を中心に、日本各地の自然美を追い求め、ライフワークとする。主な著書に『みちのくの名峰』『鳥海・月山』『森林日本』『日本の森』『日本人なら一度は見ておきたい民話と伝承の絶景36』などがある。

「2022年 『ブナ林からの贈りもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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