世界史のなかの昭和史

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582454529

感想・レビュー・書評

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  • 朝鮮情勢の命運に世界の注目が集まっているこのタイミングだったらこそ、昭和の戦争に向かっていったあの時代の世界と対比させて読むことができた。
    金正恩は現代のヒトラーなのか。少なくともヒトラーほどの野心はなさそうだだが今この時点ではなんとも言えない。だが金正恩を取り巻く世界情勢は80年前と変わらないようになってきたと思われる。経済発展を優先し、他国を顧みない現在は二度とあの大戦を起こさない方向に本当に進んでいるのであろうか。しばらくは朝鮮半島から目が離せない。
    これを読んでいるとif、if、ifとあの時にといったポイントがいくつもあり戦争を引き起こさなくても良かったのではないかと思えるが、それはやっぱり今だから言えることで、軍部が支配しているあの時代ではそれに対抗する力はなかったのだろう。戦争は不幸であるが、あの時代のifで日本が戦争を回避していたら現在の日本には戦争も辞さない軍隊があるわけで、今の世界情勢の中でその日本がどう立ち回っていけるのかと考えたりもしてしまう。
    とはいえ世界は第二次世界大戦を振り返って反省をしているはずで、それを信じて今の世界を見守りたいと思う。

  • 歴史探偵半藤一利氏が、「なぜ日本は第二次世界大戦へと暴走したか」を、ヒトラー、スターリン等とからめて書き綴ります。

    日本人にとってはヒトラーの成功がパワーになったのですね。
    そして、ドイツ人はどうしてヒトラーについていったのか?
    それが長いこと疑問だったのですが、ここにはこう書かれています。

    〈ドイツ国内では、人びとはいつもと変わらない日々の仕事に精出していました。
    戦闘は開始されたが、敗北の恐れのほとんどない対ポーランドに限定された短期決戦と、ほとんどの人が思っていた。
    第一次世界大戦の記憶のあるごく一部の人のみが、これによって恐れていた資本主義列強との大戦争、それも長期になるかもしれない戦争は避けがたいものになったと、心から憂えた。
    この人たちの表情にのみ、不安や恐れ、そして一種の諦めの気持ちが表れていた、ということになっています。

    つまりその人たちにとっては、これは「ヒトラーの戦争」であったということです。
    ずっと定説としていわれてきたことですが、いや、かならずしもそう単純にきめるけつことはできない、という説を、最近は強く主張する研究者もいるようなのです。
    「大砲かバターか」ではなく、「大砲もバターも」というナチスの政策を熱烈に支持するドイツ国民がほとんどであった、というわけです。
    ナチス・ドイツの国民は、すなわちヒトラーは危機克服のために戦争を選ばなければならないところまで追いつめられているのだ、そう理解していた、というのです。〉

    そしてそんなドイツに引っ張られるかたちで、日本も暴走します。
    モスクワの敗北がもう少し早ければ避けられたのかもしれない?

    〈なるほど、国家はそれぞれがきまった運命をもっている、ということの合理的な証拠はありません。
    そうした運命論は無意味であるとの理性的は説も首肯できます。
    しかしながら、日米関係の、戦争か平和かの危機的な状況を世界史の上においてみると、理性の力より“天”の意志によって…と、悪いほうへ悪いほうへと引っぱりこまれていってしまう、といわざるを得ないのです。
    いっさいを呑みこむ歴史のうねりへの畏怖といったらいいでしょうか。
    それがこの長い長い探偵報告の結論である、とは、まことに情けないことながら、です〉

  • 太平洋戦争前夜の昭和史について、今までの著書で書ききれなかった部分を、世界史と絡める視点から描こうとされています。その時日本では、ドイツでは、ソ連では、とそれが関係しあって全体的な流れが出来上がったのだということを、一部著者の推論も入りながら知ることができます。なぜ日本は戦争に向かっていってしまったのかについて、別の視点から考えることができるのではと思います。
    日本国内のどうしようもない無責任が、あの戦争に向かわせたことは事実ですが、そんな人間ばかりで、あの時代は全世界が戦争に向かっていった時代だと思っていました。しかし、なんとかしてその流れを変えようと努力した人間もたくさんいたはずと。本書を読むと、実はほとんどの人は戦争をしたくなかったということがわかります。それでも少ない富を求める中では、暴力は必至になってしまう。それを避けるには、したくないという消極的な気持ちではなく、しないという断固とした決意に向かう積極性なのだと改めて思います。

  • 「勝者なき平和でなければならない。勝者も敗者もない平和だけが長続きするのだ。」アメリカ大統領ウィルソン

  • 半藤氏の新作。昭和史、B面昭和史に続く、昭和史三部作とのこと。
    こうして、戦前の欧州情勢と日本を並べてみると、日本の外交がいかに稚拙で、世界の流れを読み誤ったか、自分が欲する姿を世界に求めた夜郎自大であったか、改めて理解できた。
    これは現代も変わらないのであろうか。
    調子よい語り調で、脱線も多いが、昭和の日に相応しい本だった。

  • 第一次世界大戦の終わりがドイツが降伏して終わったと考えていたが、実際はもっと複雑な内実で、その後のヒトラーの台頭を許す下地になっていることなど、結構知らないことが多々あった。改めてこの時代を学びなおす必要がありそうだ。

  • 東2法経図・6F開架 210.7A/H29s//K

  • ソ連憲法を起草したのがスターリン。
    スターリンは野心があるが政治的嗅覚が鋭い人間で、レーニンは遺言で彼をトップに絶対するなと述べていた。しかしスターリンはこの遺言公表を関係者に限るよう政治工作した。
    『日本におけるナチ第五列』日本におけるナチス宣伝工作を書いた大著。
    チャーチルが海相に復帰したとき、イギリス全艦隊がチャーチルが帰ってきたと伝言しあった。
    ★この出来事を別の著者はチャーチルがばかにされていた証拠としているが、半藤氏は尊敬されていた証拠とする。

  • 戦前、戦中の新聞が盛んに民草を煽り立てたということが、よくわかる。
    現代のマスコミも似ているような気がする。いつか来た道になるかも。

  • 世界史昭和史と銘打ってはいるが、テーマを絞り、主として、ヒトラーとスターリン両暴君の思惑と動静と絡めながら、戦前日本の外交の失敗を追う内容になっている。一方の主役アメリカについては、参戦前の「アメリカファースト」の姿勢を現代のトランプ政権と照らし合わせて語るところが特徴。第二次大戦は遠い過去のようだが、歴史は繰り返す、だから用心しなければならないという主張が散りばめられている。

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう かずとし)
1930年、東京府東京市向島区(現在の東京都墨田区)生まれ。東京大学文学部国文科卒業後、文藝春秋新社に入社。編集者として活動しながら匿名記事も記す。1965年に大宅壮一の名義を借りて『日本のいちばん長い日』を執筆、発行。『漫画読本』『増刊文藝春秋』『週刊文春』『文藝春秋』編集長を歴任。1995年に文藝春秋を退社してから作家・評論活動専任となる。
1993年『漱石先生ぞな、もし』で新田次郎文学賞、1998年『ノモンハンの夏』で山本七平賞、2006年『昭和史』で毎日出版文化賞特別賞をそれぞれ受賞。2009年の語りおろし『昭和史 1926-1945』『昭和史 戦後篇 1945-1989』はベストセラーとなった。
妻の半藤末利子は、松岡譲と、夏目漱石の長女・筆子の四女で、夏目漱石が義祖父にあたる。

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