中谷宇吉郎 雪を作る話 (STANDARD BOOKS)

著者 :
  • 平凡社
4.14
  • (4)
  • (8)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 125
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582531541

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 静謐な筆致が美しい。寒い季節になると、ついつい広げたくなる。

  • 目次
    ・自然の恵み―少国民のための新しい雪の話
    ・雪の話
    ・雪の十勝―雪の研究の生活
    ・雪を作る話
    ・雪後記
    ・大雪山二題
    ・天地創造の話
    ・立春の卵
    ・線香花火
    ・琵琶湖の水
    ・茶碗の曲線―茶道精進のある友人に
    ・イグアノドンの唄―大人のための童話
    ・簪を挿した蛇

    雪の研究で有名な研究者、中谷宇吉郎の随筆。
    師の寺田寅彦も文章家としても有名だが、中谷宇吉郎の文章もなかなか。
    余計な修飾などない簡潔な文章なのに、柔らかな温かみのある文章。

    雪の結晶が持つ美しさに魅せられて、十勝の山小屋に住み込んで、毎日何時間も雪の写真を撮り続けるのである。
    防寒もほとんど意味のないような厳寒の北海道の冬。
    戦争前の頃だと、今よりもっと北海道は寒かったろう。

    機材や荷物を抱えて馬そりで山を下りるとき、彼はすでに翌年の雪山を楽しみにしているのだと思う。
    何しろ体調を崩して5年ほど北海道に来られなかったのだが、治った途端に北海道にやってくるのである。
    もう、いいんじゃない?なんてことにはならないらしい。

    “科学が戦争の役に立つのは事実であるが、それは科学の本然の姿ではない。科学は自然と人間との純粋な交渉であって、本来平和的なものであるからである。そういう意味での科学は、自然に対する脅威の念と愛情の感じとから出発すると考えるのが妥当であろう。”

    雪は、美しくもあり、平和でもあるのである。
    科学の伝道師でもある著者の文章は、センス・オブ・ワンダーに満ちている。

    “顕微鏡写真で形を知ったり、本を読んで分類の名前をおぼえたりすることよりも、自分の眼で一片の雪の結晶を見つめ、自然の持っている美しさと調和とに眼を開くことの方が、ずっと科学的である。非科学の代表は、自分のすぐ眼の前にある自然の巧みを見ないで、むやみと名前や理論などだけを言葉でおぼえることである。”
    うーん、耳が痛い。

    昭和新山ができるさまを、天地創造をこの目で見られることの喜びにたとえ、「立春の日には卵が立つ」という世界的に有名となった珍説を、実験と計算を通して論破し、線香花火の美しさを科学的に解き明かし、美しい文章で表現する。
    ちなみに火球を作って、そこから火花が飛び散る花火は日本の線香花火だけなのだそうです。

    とても気持ちのいい文章ばかりで、心が美しく洗われたような気持ちがいたしました。

  • 面白かった。
    まず、文章が平易で朗らかだ。そして話題が豊富。
    本業の雪についての話は、科学的で実際的。
    とても興味深かった。
    一方で、立春の卵や琵琶湖の水の話など、一見他愛の無いことに注目し、理知的な観点から警告を発する手腕は流石。感心した。
    先読の寺田寅彦に岡潔の姿も垣間見え、その関係性を想像するのも楽しかった。
    このシリーズはやはり良い。
    さて、次は誰を読みましょうか。

  • 折しもノーベル賞を受賞した大隈先生が会見で基礎科学の大切さを説かれたところですが、科学へのまなざしの在り方について半世紀以上前に同じように丁寧に語った中谷先生。
    栞のラスコーの壁画についての言及は目を丸くして驚いてしまった。まさに科学と自然に対するあるべき姿勢を体験させてもらったと思う。

  • 中谷宇吉郎先生は、小林秀雄の『考えるヒント』の冒頭、常識で、小林秀雄の質問に科学者として答えている方。
    雪が仕事かもしれないが、後半、雪以外の文章が特に面白い。
    ○天地創造の話、◎立春の卵、○線香花火、○琵琶湖の水、茶碗の曲線、イグアノドンの唄。

  • 請求記号 404/N 44

  • この間、長野県へ行く仕事があり、そこで見た雪の結晶に驚かされた。
    きれい、を通り越した不思議な精緻さに感動することが出来たのは、以前から中谷宇吉郎に触れていたこともある。なので、この随筆を読むのが、なんだか嬉しかった。

    「自分の眼で一片の雪の結晶を見つめ、自然の持っている美しさと調和とに眼を開くことの方が、ずっと科学的である。非科学の代表は、自分のすぐ眼の前にある自然の巧みを見ないで、むやみと名前や理論などだけを言葉でおぼえることである。」

    「科学の発達は、原子爆弾や水素爆弾を作る。それで何百万人とかいう無辜の人間が殺されるようなことが、もし将来この地球上に起ったと仮定した場合、それは政治の責任で、科学の責任ではないという人もあろう。しかし私は、それは科学の責任だと思う。作らなければ、決して使えないからである。」

    雪に関する話も面白く、幻想的ですらあるが、二部にある「天地創造の話」「立春の卵」「線香花火」「琵琶湖の水」も、面白い。
    普段、なんとなく、大雑把に考えているところを、それは突き詰めると嘘だよ、と切られてしまう鋭さがあるからだ。
    また、そこには多分に寺田寅彦の姿も見える。
    この時代の科学者たちが見つめた眼は、今も受け継がれているのだろうか。

    そうである一方、科学的に考えないものごとの良さも語れるのだから、この人の随筆は、やはり味わうべき名作であると言える。

  • 中谷宇吉郎が荒川修作の渡米に際して推薦状を渡していた。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

1900年石川県生まれ。物理学者。東京帝国大学理学部で寺田寅彦に師事し、卒業後は理化学研究所で寺田の助手となる。北海道帝国大学教授、北海道大学教授を務め、1962年没。雪の結晶の研究や、人工雪の開発に成果を上げ、随筆家としても知られる。主な著書に『冬の華』『楡の花』『立春の卵』『雪』『科学の方法』ほか。生地の石川県加賀市に「中谷宇吉郎 雪の科学館」がある。

「2014年 『寺田寅彦 わが師の追想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中谷宇吉郎 雪を作る話 (STANDARD BOOKS)のその他の作品

中谷宇吉郎の作品

中谷宇吉郎 雪を作る話 (STANDARD BOOKS)を本棚に登録しているひと

ツイートする