中谷宇吉郎 雪を作る話 (STANDARD BOOKS)

著者 :
  • 平凡社
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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582531541

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  • 目次
    ・自然の恵み―少国民のための新しい雪の話
    ・雪の話
    ・雪の十勝―雪の研究の生活
    ・雪を作る話
    ・雪後記
    ・大雪山二題
    ・天地創造の話
    ・立春の卵
    ・線香花火
    ・琵琶湖の水
    ・茶碗の曲線―茶道精進のある友人に
    ・イグアノドンの唄―大人のための童話
    ・簪を挿した蛇

    雪の研究で有名な研究者、中谷宇吉郎の随筆。
    師の寺田寅彦も文章家としても有名だが、中谷宇吉郎の文章もなかなか。
    余計な修飾などない簡潔な文章なのに、柔らかな温かみのある文章。

    雪の結晶が持つ美しさに魅せられて、十勝の山小屋に住み込んで、毎日何時間も雪の写真を撮り続けるのである。
    防寒もほとんど意味のないような厳寒の北海道の冬。
    戦争前の頃だと、今よりもっと北海道は寒かったろう。

    機材や荷物を抱えて馬そりで山を下りるとき、彼はすでに翌年の雪山を楽しみにしているのだと思う。
    何しろ体調を崩して5年ほど北海道に来られなかったのだが、治った途端に北海道にやってくるのである。
    もう、いいんじゃない?なんてことにはならないらしい。

    “科学が戦争の役に立つのは事実であるが、それは科学の本然の姿ではない。科学は自然と人間との純粋な交渉であって、本来平和的なものであるからである。そういう意味での科学は、自然に対する脅威の念と愛情の感じとから出発すると考えるのが妥当であろう。”

    雪は、美しくもあり、平和でもあるのである。
    科学の伝道師でもある著者の文章は、センス・オブ・ワンダーに満ちている。

    “顕微鏡写真で形を知ったり、本を読んで分類の名前をおぼえたりすることよりも、自分の眼で一片の雪の結晶を見つめ、自然の持っている美しさと調和とに眼を開くことの方が、ずっと科学的である。非科学の代表は、自分のすぐ眼の前にある自然の巧みを見ないで、むやみと名前や理論などだけを言葉でおぼえることである。”
    うーん、耳が痛い。

    昭和新山ができるさまを、天地創造をこの目で見られることの喜びにたとえ、「立春の日には卵が立つ」という世界的に有名となった珍説を、実験と計算を通して論破し、線香花火の美しさを科学的に解き明かし、美しい文章で表現する。
    ちなみに火球を作って、そこから火花が飛び散る花火は日本の線香花火だけなのだそうです。

    とても気持ちのいい文章ばかりで、心が美しく洗われたような気持ちがいたしました。

  • 中谷宇吉郎が荒川修作の渡米に際して推薦状を渡していた。

著者プロフィール

1900年石川県生まれ。物理学者。東京帝国大学理学部で寺田寅彦に師事し、卒業後は理化学研究所で寺田の助手となる。北海道帝国大学教授、北海道大学教授を務め、1962年没。雪の結晶の研究や、人工雪の開発に成果を上げ、随筆家としても知られる。主な著書に『冬の華』『楡の花』『立春の卵』『雪』『科学の方法』ほか。生地の石川県加賀市に「中谷宇吉郎 雪の科学館」がある。

「2014年 『寺田寅彦 わが師の追想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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