中谷宇吉郎 雪を作る話 (STANDARD BOOKS)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582531541

感想・レビュー・書評

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  • 「雪を作る」。なんてステキな言葉だろうと。もちろん、雪の良い面も悪い面もあるのだろうけど、人間と自然という中で、受け入れるべきあれやこれやがふんだんに。

    雪の話ばっかりなのかと思ったけど、そうでもなく。それもそれで面白かった。
    何よりも、解説にあるとおり、ある意味ドライな書き味がよいのかもしれない。

    昨今の現状を考えるからこそ、若い方たちに「科学」は面白いと読んでもらいたいなぁと。

  • 目次
    ・自然の恵み―少国民のための新しい雪の話
    ・雪の話
    ・雪の十勝―雪の研究の生活
    ・雪を作る話
    ・雪後記
    ・大雪山二題
    ・天地創造の話
    ・立春の卵
    ・線香花火
    ・琵琶湖の水
    ・茶碗の曲線―茶道精進のある友人に
    ・イグアノドンの唄―大人のための童話
    ・簪を挿した蛇

    雪の研究で有名な研究者、中谷宇吉郎の随筆。
    師の寺田寅彦も文章家としても有名だが、中谷宇吉郎の文章もなかなか。
    余計な修飾などない簡潔な文章なのに、柔らかな温かみのある文章。

    雪の結晶が持つ美しさに魅せられて、十勝の山小屋に住み込んで、毎日何時間も雪の写真を撮り続けるのである。
    防寒もほとんど意味のないような厳寒の北海道の冬。
    戦争前の頃だと、今よりもっと北海道は寒かったろう。

    機材や荷物を抱えて馬そりで山を下りるとき、彼はすでに翌年の雪山を楽しみにしているのだと思う。
    何しろ体調を崩して5年ほど北海道に来られなかったのだが、治った途端に北海道にやってくるのである。
    もう、いいんじゃない?なんてことにはならないらしい。

    “科学が戦争の役に立つのは事実であるが、それは科学の本然の姿ではない。科学は自然と人間との純粋な交渉であって、本来平和的なものであるからである。そういう意味での科学は、自然に対する脅威の念と愛情の感じとから出発すると考えるのが妥当であろう。”

    雪は、美しくもあり、平和でもあるのである。
    科学の伝道師でもある著者の文章は、センス・オブ・ワンダーに満ちている。

    “顕微鏡写真で形を知ったり、本を読んで分類の名前をおぼえたりすることよりも、自分の眼で一片の雪の結晶を見つめ、自然の持っている美しさと調和とに眼を開くことの方が、ずっと科学的である。非科学の代表は、自分のすぐ眼の前にある自然の巧みを見ないで、むやみと名前や理論などだけを言葉でおぼえることである。”
    うーん、耳が痛い。

    昭和新山ができるさまを、天地創造をこの目で見られることの喜びにたとえ、「立春の日には卵が立つ」という世界的に有名となった珍説を、実験と計算を通して論破し、線香花火の美しさを科学的に解き明かし、美しい文章で表現する。
    ちなみに火球を作って、そこから火花が飛び散る花火は日本の線香花火だけなのだそうです。

    とても気持ちのいい文章ばかりで、心が美しく洗われたような気持ちがいたしました。

  • 中谷宇吉郎が荒川修作の渡米に際して推薦状を渡していた。

著者プロフィール

1900–1962
石川県生まれ。
東京大学理学部を卒業し、理化学研究所で寺田寅彦の助手として勤務。
後に北海道大学教授を務め、雪と氷の研究で新境地を開く。
物理学者でありながら随筆家としても活躍。師と仰いだ寺田寅彦の想い出を綴った「寺田先生の追憶」をはじめ「日本人のこころ」「私の生まれた家」など作品は多数。

「2021年 『どんぐり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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