日本の色 (コロナ・ブックス)

  • 平凡社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582634242

作品紹介・あらすじ

色の名前を知る、見る、読む。全211色の色票・解説付き。

感想・レビュー・書評

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  • 色の説明に歴史を織りまぜている。陶器や着物など様々な作品にどんな色が使われているかを、色見本を用いているものもあるので解りやすい。風景や花などの写真の全てが美しい。色に関するエッセイがある。藍染めは世界中で行われ、それぞれの気候風土で色は異なるそうだ。秀吉ゆかりの障壁画の話は切ない。他にも色の物語がたくさんありそうだ。何度も見かえしたくなる本だ。

  •  あか色々  -2009.03.11記
    -平凡社刊「日本の色」より
    ◇紅-べに、くれない
    紅花はエジプト原産のアザミに似たキク科の植物で、「紅」はその花弁から抽出した紅色素-カーサミン-で染めた鮮やかな色。紅花による紅染は褪色しやすいため、鬱金や黄檗など黄色系の染料で下染した後に染色されることが多い。国内産地は山形県最上地方が有名だが、収量は少なく金に匹敵するほど高価だったため、高貴な人のみがこの色の着用を許された。紅花だけで染めた色を紅色、真紅あるいは深紅などという。

    ◇猩々緋-しょうじょうひ
    緋のなかでも特に強い調子の黄味がかった朱色。猩々はオランウータンともされるが、また中国の猿に似た霊獣ともされ、その動物の生き血で染めたという伝説がある。わが国では能に登場する「猩々」の衣装のイメージでもあり、赤毛、赤面、赤装束から由来するという説も。古くから用いられた色で、この猩々緋で染めた羅紗や天鵞絨-ビロード-は武将たちの陣羽織に仕立てられ、戦の場で艶やかな意匠が競われた。

    ◇紅緋-べにひ-
    猩々緋とともに鮮やかな緋色に使われる色名で、紅花と鬱金、黄檗、支子-くちなし-を用いて黄味のある赤。古代、「緋」は茜を灰汁媒染-あくばいせん-で染めた赤をさし「あけ」と呼ばれ、女官の緋袴の色も、実際はこの紅緋が用いられた。

    ◇照柿-てりがき
    熟した柿の実からきた色名で、濃い赤味の橙色をいう。「柿」は平安時代から用いられている色名だが、江戸時代には赤味の橙色をさす代表的な色名として使われた。
    他に、熟した柿の色に「紅柿」、淡い色では「洗柿-あらいがき-」「洒落柿」があり、「薄柿」や「水柿」などは明るい橙色、濃くなって赤系によったものに「凝柿-こりがき-」「黒柿」がある。

    ◇紅柄色/弁柄色-べにがら/べんがら
    顔料の紅柄の色名からきた赤身の褐色で、弁柄とも。名前の由来は東インドの地名「ベンガラ」からきている。その地で良質の赤褐色の酸化第二鉄が産出され、この産地名-ポルトガル語-が顔料名となった。江戸時代から弁柄に柿渋を加えた顔料が、町家などの壁や格子戸に塗られ、弁柄格子と呼ばれてきた。

    ◇黄丹-おうたん、おうに-
    もとは顔料の「鉛丹」の別名で、紅花と支子で染めた赤味を帯びた橙色。中国より伝来した色名だが、高貴の色とされ、色彩の序列は紫の上に置かれ、着用を親王や皇族に限られ禁色の一つとされてきた。わが国では8世紀以来現在まで、皇太子の正式服色として用いられる。

    ◇韓紅/唐紅-からくれない
    紅花の濃染による紅赤色、奈良時代「紅の八塩」と呼ばれた。八塩とは8回染重ねることの意で、濃染のこと。
    呉の国からやってきた染料ということから「呉藍-くれあい」と呼ばれ、その読みがそのまま「くれない=紅」と日本語の色名となったといわれる。舶来の意とともに色の美しさを強調して、濃い紅花の赤を韓紅、唐紅と記されるようになった。

    ◇蘇芳-すおう
    蘇芳はマメ科の落葉小高木、インド南部やマレー半島が原産。
    心材を蘇芳木といい、古くから赤色や紫系の染料に用いた。媒染剤に明礬や灰汁を使って発色させるが、やや青味のある赤色をしている。媒染剤に明礬を使った赤を赤蘇芳と呼んだ。また紅花や紫に代えて染色に用いられたため、似紅-にせべに、似紫と呼ばれた。

    ◇蘇芳香-すおうこう
    ややくすみ気味の赤褐色だが、香の字が示すように元は香りの良い丁字で染めた「香色」を真似たもの。
    丁字は高価なため代わりに支子と紅花が用いられたのだが、この蘇芳香は紅花の代わりに蘇芳で染めたもの。

    ◇真朱-しんしゅ
    天然産の良質な「朱砂」の色のような、黒味のある赤色。
    朱は水銀の硫化物のことで、天然産の硫化水銀の原鉱は朱砂という。

    ◇甚三紅-じんざもみ
    かすかに黄味を含んだ中程度の濃さの紅赤色。紅花染が高価なため、茜または蘇芳を用いた代用紅染だが、「京、長者町桔梗屋甚三郎というもの、茜を洩って紅梅にひとしき色を染出す」との由来から生れた色名。

    他に ◇一斤染/聴色-いっこんぞめ/ゆるしいろ ◇紅梅色◇退紅-たいこう ◇鴇羽色/鴇色-ときはいろ/ときいろ 
    ◇桜鼠-さくらねずみ ◇長春色-ちょうしゅんいろ ◇曙色/東雲色 ◇臙脂色-えんじいろ ◇黄櫨染-こうろぜん
    ◇代赭色-たいしゃいろ ◇赤白橡-あかしろつるばみ ◇紅鬱金-べにうこん ◇牡丹 ◇撫子色-なでしこいろ
    ◇躑躅色-つつじいろ ◇鴇浅葱-ときあさぎ ◇銀朱◇紅樺色-べにかばいろ ◇今様色 ◇苺色 ◇灰桜色
    ◇宍色-ししいろ ◇肉色、 等々。

  • へえ、という感じ
    私の実用には関係ない

  • 資料としても、観賞用としても使える万能さんな本です。図書館から借りた本ですが、これは買って飾りたいと思いました。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00158584

  • 色がきちんと載っていて、かつ、説明文がきちんと書いてあるのが素晴しい。写真も豊富ですし、紙質も素晴しい。

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著者プロフィール

谷川 渥(たにがわ・あつし):美学者、批評家、文学博士。東京大学大学院美学芸術学専攻博士課程修了。國學院大學文学部教授、杭州師範大学客座教授、京都精華大学客員教授などを歴任。日本近代芸術史の諸問題を踏まえながら、マニエリスム・バロックからモダニズム・現代美術にいたる広範な領域を視野に収め、多様な〈美的表象〉を渉猟し、美学と批評を架橋する。著書に『形象と時間』『美学の逆説』『シュルレアリスムのアメリカ』『鏡と皮膚』『図説だまし絵』『肉体の迷宮』『幻想の花園』『ローマの眠り』など多数。

「2023年 『三島由紀夫 薔薇のバロキスム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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