広東料理の名店「鏞記酒家」 (コロナ・ブックス)

  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (127ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582634495

感想・レビュー・書評

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  • 上海や香港や澳門に行けば紅真吾に会えるかもしれないと幻想して(!)、中学生の頃から魯迅と毛沢東に憧れると同時に、生島治郎の『黄土の奔流』や『追いつめる』に夢中になっていた私は、彼の地への一人旅を敢行したり、嫌々もしくは無理矢理に父と同行させられたりしていました。

    実際それはたしかに重い中華鍋を振るのは私ですが、女の細腕で長旅を運ぶのは無理、他の人に代わってもらった方がいいに決まっています。そうです、ただ単に食べ歩くだけではなく、その料理を自家薬籠中のものにしなければ気が済まない私は、今から思えば馬鹿げていますが、マイ鍋を持参しての修行の旅でもあったのでした。

    それにしても、そのときこの本があったら重宝したのですが、何しろ準備もなしに鉄砲玉のように飛んで行って、怪しげな片言の中国語で捜し回ったり、知人に聞いたおいしかったお店のメモを頼りに、気が遠くなるほど歩き回ってようやく辿り着いたりしました。

    右も左もわからない地図にもない道を当てもなく歩いたときの、心細さと空腹さは今もトラウマとなって中国料理につきまとっています。

    そして、身近な日本の横浜中華街へもそれほど行ったことがないのに、いまだに中国大陸への夢が捨て切れないでいます。

    もう飽きるほど何度も眺め尽くして、あとは本物を食べに行くだけです。紹介されている名店が本当に美味しいのかどうか、私の舌で確かめます。その真髄をいかに自分のものにできるかも楽しみなところです。

    でも本当はそんな有名高級料理店ではなくて、場末のうらびれた潰れそうなお店で、紅真吾と一緒に殻をペッペッと床に吐き飛ばしながら、上海蟹の老酒漬けをお腹いっぱい食べたいと夢想するのでありました。

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