- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582702491
作品紹介・あらすじ
人間と動物が交錯する未決定な「例外状態」の閾を、バタイユのアセファルから、コジェーヴのスノッブ、ユクスキュルのダニ、ハイデガーの倦怠へと縦横無尽に描き出す、生政治の超克と人類学機械の停止へむけた壮大な系譜学。
感想・レビュー・書評
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これは難しい。哲学科の友人を尊敬する。
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イタリアの現代思想家アガンベンの近著。アガンベンの書誌上、彼の代表作は『ホモ・サケル』や『アウシュヴィッツの残りもの』だが、『開かれ』はアマゾン「アガンベン」内で人気ランキング上位に来ているし、好意的なユーザーレビューも多い。動物と人間をテーマにしているこの本は、哲学に興味のない一般の人にも受けがいい。
動物と人間の違いとは何か。動物と人間の間の境界線は明確でなく、常に線を引き続けないとすぐ曖昧になるという。
動物とは、人間の例外状態である。動物とは何か定義づけることで、人間とは何かが確定される。人間とは、動物であると同時に、人間でもある半端な存在であるという。
アガンベンはベンヤミン、ハイデガー、聖書、バタイユなどから動物と人間をめぐる文章を抜き出し、考察していく。例えば、中世では、天国に行った人は、死後復活すると信じられていた。しかし、怪我で腕をなくした人は、復活後、腕も復活するのかという問題があった。腕が復活するなら、死ぬ前に食べていて、胃の中に残っている動物もまた、人間の復活と同時に食べられる前の姿で復活するのか(胃腸の中で動物が消化前の姿に戻ったら胃腸は破裂してしまうのではないか)という問題もある。これらスコラ哲学の神学問題は、現代からみれば瑣末の愚問に見えるが、人間と動物の境界は定かでないという事例になる。