異形の王権 (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社
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レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582760101

作品紹介・あらすじ

婆娑羅の風を巻き起こしつつ、聖と賎のはざまに跳梁する「異類異形」、社会と人間の奥底にひそむ力をも最大限に動員しようとする後醍醐の王権、南北朝期=大転換のさなかに噴出するの意味と用を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 「異」シリーズ第2弾。
    もともと天皇・神仏に直属して神聖・特別視されていた職への評価が、ある時、畏怖から差別にかわった。
    網野氏の歴史観の中心でもある、この「聖」から「賤」への社会の価値観の転換期は、ちょうど異質な天皇制をしいた後醍醐天皇の治世だった。

    非人扱いされたのは、河原者であり、童であり、刑吏・芸能民・箕作・バサラ・鋳物屋・牛飼いなど、定住の農民以外で多岐にわたる。
    そして外見上は鹿杖・蓑・摺衣・覆面・高声・笠・扇で顔を隠すしぐさ・柿色
    などが聖=賤の印になる。

    「異本論」によると、文字のテキストは時代とともに中身も解釈も変遷していく。絵巻物は解釈は変われど中身が書きかえられることはない。
    そこに着目して新しい歴史の視点を創った網野氏に改めて敬服。

    死者も出る石礫合戦がハレの日の行事として、神意・呪術的な要素あったというのが一番興味深かった。雪合戦も石礫と関連があるとか。

    以下メモ・引用

    凌礫 「南北朝の動乱」 岡見正雄 八瀬童子 「しぐさの世界」 白河印地
    「その職質の性質から天皇・神仏の「聖性」に依存するところより大きく、このような実利の道に進み得なかった一部の芸能民、海民、さらには非人、河原者などの場合、職能自体の「穢」との関わりなども加わって、ここに決定的な社会的賤視の下におかれることとなった。「聖なる異人」としての平民との区別は、差別に転化し、「異形・異類」は差別語として定着する」

  • 「異類異形」といわれる人々が中世社会でどう位置づけられてきたのかを,絵巻に描かれた人々の服装やしぐさなどの分析を通じて興味深く考察されている。

  • 著者の代表作。

  • 後醍醐天皇のあまりあるエネルギーをひしひしと感じる。

  • 中世の再評価はここから弾みがついた。目から鱗が落ちる本

  • 隆慶一郎も北方謙三の時代小説も網野さんの研究のおかげです

  • なんで今まで読まなかったんだろう!

  • 12~13世紀の習俗から、歴史の陰の部分を掘り起こそうという本。

    先日読んだ本(「山の人生」)が民間伝承からそれを読み取るなら、これは現代に伝わっている図版を解いて行こうという(一応)趣向です。

    「異形」というのは、卑賤の者たちの装いのこと。
    シモジモの服装なんてのは、確かに文書には書かれにくく、“なんとか図絵”の片隅に描かれているのを拾って行く作業なわけです。

    卑賤とは言ってもそれは金襴や覆面、柿色の山伏服で、それらがなぜ卑賤に貶められていったか?(被差別化の進行) や、名前くらいは知っている「後醍醐天皇」が、権力を我が手に奪還しようとしたときに、密教の法衣や法具を手にしていた…すなわち異形を身にまとっていたのはなぜか? それが後世に与えた影響は? などが語られて行きます。

    一般啓蒙書ではなく学術論文で、専門用語が解説なく出て来たり、議論が極度に微細にわたったりしているので、若干読みづらくはあったのですが、当時の天皇がこうして一個の性格として見えて来るのはやはり面白いですね。

    高校時代とかにこういう本を読むようなリテラシーがあったら、日本史も楽しかった(し頭に入った)ろうなぁ、というのが率直なところです(´Д`;)。

  • 網野善彦 「 異形の王権 」 日本の中世史の本。中世史が こんなに人間的で 魅力的とは 思わなかった。

    後醍醐天皇の異質性、後醍醐天皇が目指して国家、後醍醐天皇の衰退と非人など差別の関係など 面白かった

    後醍醐天皇と 飛礫(つぶて) が印象に残った

    渋沢敬三 「 絵巻物による日本常民生活絵引 」
    *絵巻物を 歴史学、民俗学等の資料として読む〜画の意味
    *絵巻物から個々の場面を抽出し模写する→身辺雑事に見える問題を歴史の対象とする→歴史学を命あるものにする

    なぜ 蓑笠が非人、乞食の服装となったか
    *蓑笠=一つの変相服装→神、まれびとの衣裳→蓑笠姿のまれびとは 妖怪となり〜乞食となった
    *蓑笠は 異類異形の衣裳〜かっての神の姿、聖なる衣裳が、南北朝を境に 忌む存在となる
    *蓑笠=失うものは何もない 抑圧された非人、乞食の衣裳の象徴→蓑笠を身につけることにより 不退転の決意で 一揆をした

    飛礫を打つ(つぶて。石を投げる)
    *飛礫打が 異類異形の人々、山伏、鬼、天狗と結びつき、伝統的な悪党的兵法とつながっている
    *南北朝を境に 飛礫は 非人的な武力となる
    *非人の姿をして 飛礫をもって 一揆する→蓑笠同様、人の意志を超えて力を 自ら感じとり 権力に向かった

    異形の王権=南北朝の後醍醐天皇の政治の特異さ
    *異形の人々を集めて 新しい力を呼び覚ました〜後醍醐は、異類異形と言われた 悪党、非人を軍事力として利用した
    *後醍醐が自ら法服をつけて 真言密教の祈祷を行った

    南北朝動乱=異形の王権の倒壊
    *天皇の聖なる存在は失われた→天皇と結びついた神仏の権威も低落=聖性の没落
    *聖性の没落→聖性に依存する 芸能民、非人など 聖なる異人が差別される


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著者プロフィール

1928-2004年。東京大学文学部国史学科卒業。名古屋大学助教授,神奈川大学短期大学部教授,神奈川大学特任教授を歴任。専門は日本中世史。主な著書に『蒙古襲来』,『中世東寺と東寺領荘園』,『日本中世の民衆像』,『日本中世の非農業民と天皇』,『日本の歴史を読み直す』,『「日本」とは何か』,『網野善彦著作集』全18巻+別巻がある。

「2019年 『中世の罪と罰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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