- Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582760101
作品紹介・あらすじ
婆娑羅の風を巻き起こしつつ、聖と賎のはざまに跳梁する「異類異形」、社会と人間の奥底にひそむ力をも最大限に動員しようとする後醍醐の王権、南北朝期=大転換のさなかに噴出するの意味と用を探る。
感想・レビュー・書評
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異形の王権とは後醍醐天皇の治世のこと。
後醍醐天皇は建武の新政で天皇自ら政治を行なったことは学校でも習うが、どういう改革をしたかを知っている(覚えている)人は少ないのではないか。
後醍醐天皇が密教興盛を図ったことは有名だが、それがどういう意図を持って行われたか、当時の経済事情や政治状態を明らかにした上で説得力ある解説をしている。
私は後醍醐天皇の改革を怪しく思っていたが、当時の政治経済状況を鑑みると、時代に即した偉大な改革だったのではないかと読後感を持った。
私はこの本をとても興味深く読んだが、タイトルと内容に齟齬があるのが気になった。
異形の王権=後醍醐天皇の治世を直接扱っているのは最後の章だけなのである。大半は「異形の人々」を扱っており、随分長い導入という感じがしてしまう。
ただ、それでも絵巻物からの歴史読解など、勉強にならないわけはないので十分読む価値はあるはずだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「異」シリーズ第2弾。
もともと天皇・神仏に直属して神聖・特別視されていた職への評価が、ある時、畏怖から差別にかわった。
網野氏の歴史観の中心でもある、この「聖」から「賤」への社会の価値観の転換期は、ちょうど異質な天皇制をしいた後醍醐天皇の治世だった。
非人扱いされたのは、河原者であり、童であり、刑吏・芸能民・箕作・バサラ・鋳物屋・牛飼いなど、定住の農民以外で多岐にわたる。
そして外見上は鹿杖・蓑・摺衣・覆面・高声・笠・扇で顔を隠すしぐさ・柿色
などが聖=賤の印になる。
「異本論」によると、文字のテキストは時代とともに中身も解釈も変遷していく。絵巻物は解釈は変われど中身が書きかえられることはない。
そこに着目して新しい歴史の視点を創った網野氏に改めて敬服。
死者も出る石礫合戦がハレの日の行事として、神意・呪術的な要素あったというのが一番興味深かった。雪合戦も石礫と関連があるとか。
以下メモ・引用
凌礫 「南北朝の動乱」 岡見正雄 八瀬童子 「しぐさの世界」 白河印地
「その職質の性質から天皇・神仏の「聖性」に依存するところより大きく、このような実利の道に進み得なかった一部の芸能民、海民、さらには非人、河原者などの場合、職能自体の「穢」との関わりなども加わって、ここに決定的な社会的賤視の下におかれることとなった。「聖なる異人」としての平民との区別は、差別に転化し、「異形・異類」は差別語として定着する」 -
「異類異形」といわれる人々が中世社会でどう位置づけられてきたのかを,絵巻に描かれた人々の服装やしぐさなどの分析を通じて興味深く考察されている。
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著者の代表作。
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後醍醐天皇のあまりあるエネルギーをひしひしと感じる。
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中世の再評価はここから弾みがついた。目から鱗が落ちる本
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隆慶一郎も北方謙三の時代小説も網野さんの研究のおかげです
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なんで今まで読まなかったんだろう!
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読みやすさ ★★★
面白さ ★★★
ためになった度 ★★
扇の骨の間から見るしぐさのところと、後醍醐天皇のところが面白かった。