- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582760200
作品紹介・あらすじ
アイヌの人々の間で口伝えに語り継がれてきたウゥェペケレ(昔話)、20話。悪い根性を懲らす痛快な、よい生活の作法を教える温かな話の中に、人間と自然と神とが自在に交流し共生する世界のあり方を告げる。
感想・レビュー・書評
-
ストーリーテリングのテキストとして中古本で購入したもの。
これがあまりにも面白くて、寝る前に読むこと何十日間にも及んでしまった。
これまで読んできたどの昔話とも趣が違う。
話しがすべて、一人称で進むのだ。そしてお話の最後には必ず何がしかの教訓が語られている。
蝦夷ヶ島と呼ばれていた地を「北海道」と政府が名づけたのは明治二年。
そこから、開拓と称してどんどん内地からひとを送り込む。
それというのも、ロシアとの国境問題がたえず勃発していたからなのだが、元から北海道(正確には本州北部と北方四島、樺太まで)に住んでいたアイヌのひとたちは、ここで悲惨な運命を迎えることになる。
明治の中頃には居留地を与えられ(嬉しくなんかないよねぇ・・)病院と学校も建てられたが、それは日本語を覚える場だった。ロシア人に、ここには日本人しか住んでないというアピールが必要だったからね。
文字を持たないアイヌ文化だったことが、ここで幸いした。
学校で日本語を学んだ子たちは、家に帰ってからはランプの灯りも乏しい家の中で、祖父母たちのアイヌ語による語りを聞いて育ったのだ。
後年、いわばバイリンガルとなったアイヌの人たちが、記憶の中の昔話を日本語に訳すことで、この本が出来たというわけだ。いやぁ、感謝します。アイヌのひとたち、ありがとう。
それにしても、どのお話もどこか懐かしいのは、何故だろう。
身の回りのものを大切に扱いなさいとか、年長者には敬意をはらいなさいとか、小さな頃に教わったことが、この昔話の中に脈々と息づいているからだ。
すべてのものに神様が宿るという、素朴で謙虚なところも本当に好ましい。
ひとを脅して、騙して、ひとり甘い汁を吸おうという輩も登場するが、知恵ある年配者と、若者の勇気と力とでその危機を乗り越えている。
おお、まるで北の空に広がる宮崎アニメの世界ではないか。
いや、このたとえはアイヌのひとたちに失礼かな?
本棚には載せなかったが、この後アイヌの昔話絵本を4冊読んだ。 -
アイヌの人々の間で口伝えに語り継がれてきたウゥェペケレ(昔話)、20話。悪い根性を懲らす痛快な、よい生活の作法を教える温かな話の中に、人間と自然と神とが自在に交流し共生する世界のあり方を告げる。
-
平凡社
萱野茂 「 アイヌ の昔話 」
一人称の語り部による説話集。語り部はアイヌ人か神。「わたしは○○です」で始まり、いまいるアイヌに対する教訓 で 終わる。アイヌでは 6がラッキーナンバー?
アイヌ文化の中でも 文学は 飛び抜けていいと思う。先鋭化した宮沢賢治童話という感じ。ただ 全文カタカナで書かれたものは 読むのがつらい
驚きの題材
*鍋に宿る神
*病気を撒き散らす神
*結婚する神
*母に憑き、子を焼き食らう食人種
*熊に化ける河童
*語り部の犬〜後に人間になる
この本を読むかぎり、アイヌの人にとっての幸せは「たくさんの子どもが生まれ、狩りが上手で、何をほしいとも、何を食べたいとも思わないで 暮らすこと」
不徳者が 神の罰によって無惨な死に方をする結末(本人が後悔しても赦されない)は 罰が重すぎる気もするが、それだけ倫理が徹底しているということか?
-
文字を持たないアイヌ民族。人々が口伝えで語り継いできた昔話がここに集められました。小さなものへのやさしい眼差し。神と人との近さ。
-
自然のすべてに神の存在を感じていたアイヌ、その素朴な素朴なお話集。人と獣、生と死。やさしく、温かい物語。
-
アイヌの人々の間で口伝されてきた昔話20話。
神と人とが近く、ちいさなモノに至るまで大事にするべきという教え。教訓が必ずくっついているのはグリムのようで、そこまで残酷じゃない(採集された話がそういうだけか)。
優しさと純粋さを垣間見たけど、同時になぜかアテルイを思い出して悲しくなりました。 -
自然のすべてに神の存在を感じていたアイヌ、その素朴な素朴なお話集。人と獣、生と死。こういうの好きだなあ。
-
驚いた時、鼻と口を塞ぎます。
魂が抜けないようにするためです。
虹が性質の悪いもの・不吉なものであるのは、万葉集時代の日本と同じようです。確か司馬遼太郎は、本州の先住民族はアイヌであり北に押しやられたのでは、と。こういうのは空想のロマン。
しかし古代人が共通して虹を嫌うのは、なぜだろう。不安定だからかな。 -
20話の昔話に何回か出てくる「何を食べたいとも、何をほしいとも思わない」という表現にアイヌ民族の気質を感じた。また、熊やきつね、なべにまで神が宿っているという考え方など、文化の違いを感じられておもしろい。
研究文献とかではなく、こういう語り継がれてきた話から知るのも良いのでは。「暇な小なべ」は、将来に自分の子供に話してあげようと思う。
素敵なレビューですね。遠い昔、学生の頃、自然との共生をずっと考えていました。北海道を自転車でうろつき、観...
素敵なレビューですね。遠い昔、学生の頃、自然との共生をずっと考えていました。北海道を自転車でうろつき、観光地化したアイヌコタンにがっかりでしたが、でもユーカラの伝える物語には素朴に暮らした人たちの、知恵と自然と共に生きる姿がありますね。
今日は暖かですが、ウグイスはまだです。
コメントありがとうございます!
今日当たりはそろそろ、若いウグイスが練習し始めるかと・・(笑)
こちらで...
コメントありがとうございます!
今日当たりはそろそろ、若いウグイスが練習し始めるかと・・(笑)
こちらでは初夏のころにホトトギスも鳴きますよ。
北海道の旅でアイヌコタンにいらしたことがあるのですね。
観光地化も、思えば「和人」がそう仕向けたのかもしれないし、やるせないですよ。
私も白老の民族博物館によく足を運びました。
アイヌの人たちの音楽と、手刺繍がとても好きです。
アイヌの人たちは、鮭を捕るときでも、産卵前は決してたくさんを捕ることはしなかったといいます。
考えさせられますね。
私たちがかつて確かに持っていたはずのもの、そして今や失ったもののすべてが、この本の中にあるように思えます。