- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582760569
感想・レビュー・書評
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ダーウィンがミミズに関して書いているなんて知らなかったけど、これがダーウィンが亡くなる1年前に出版された最後の著作、すなわち集大成の書物であるという。
主題はミミズがつくる「土」についてである。
ミミズ1匹1匹は小さきものなれど、寄り集まって1エーカー(0.4ha)あたり1年に10トンもの「肥沃土」を作り出す、という。
いわゆる肥沃土というのはミミズの排泄物なのであり、ミミズがその土を何度も何度も体を通過させることによって、イギリスのいい土の大半を作り出しているくらいの勢いなのである。
しかしさすがダーウィン。ミミズと土についての細密を極めた観察と実験と考察には目を瞠る。なるほど天才というのは天才的なひらめきだけではなくて、こういう地道な毎日の積み重ねの産物なのね、と唸りたくなる内容なのであった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カテゴリー的に,関連するテーマの本ですが『進化論』よりもおもしろかったです。ミミズというミクロな生き物が,何年もかけてマクロな土壌を変えていくさまを,何年間もかけてダーウィンが綿密に調べたことを詳細すぎるぐらいに説明しています。
これを読んだら知能をもっている(であろう)ミミズを踏みつけないように,注意しながら歩いてしまう感じになりそうです。
ダーウィン最後の著作ということで,本書の最後にグールドが書いているように,ダーウィンが『種の起原』執筆以前から考えてきたことが,最後に全体を凝縮した形でミミズに全てをこめて書き上げた本だということがひしひしと伝わってきます。 -
ミミズのことなどどうでもいい、という生き方もあります。けれどもミミズがすこし気になる、という人生もあります。ミミズを気にかける人は、とるにたらないことのなかから、神秘をさぐる感性を秘めているのです。
本書はダーウィン畢生の大作です。弘之の訳もこなれています。観察をくりかえし、事実の集積に努め、推論を深める、という科学者らしいプロセスがよく伝わってきます。けれんみなどありません。読者へのサービスもありません。淡々と叙述するその姿勢に波長をあわせ、過去からの問いかけを静かにうけとめるのが、この本の味わい方だといえます。
本文に退屈を感じるのであれば、スティーヴンの解説から読むのもいいでしょう。ダーウィンと真剣に格闘してきた人の矜持を感じてください。ミミズについて学ぶというよりも、ミミズがダーウィンの遺作としてふさわしいものであったことの含蓄を、想像力を駆使して味わいましょう。