知覚の扉 (115) (平凡社ライブラリー)

  • 平凡社 (1995年9月3日発売)
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  • 本 ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582761153

感想・レビュー・書評

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  • 著者によるメスカリン体験記。メスカリンにかなり肯定的な論調で、普通に試してみたくなる。

    人間は本来、自分の身に起きた事は全て記憶でき、宇宙で起きる全てを知覚できる意識「偏在精神」であるが、生存への適応のために脳や神経系である「減量バルブ」を通して意識の量を少なめに調節している。メスカリンは「減量バルブ」を緩め、人間を本来の姿に近づけるとある。

    天才と言われる芸術家は、生来的に「減量バルブ」が緩んでいるため、私たち常人とは物の見方が違うとあり、ゴッホやフェルメールの作品を解説している箇所が興味深い。特にベルニーニの彫刻「聖テレサの法悦」に関し、作家の感受性は人物ではなく衣服の質感に現れている、という捉え方はとても共感する。

  • メスカリンが如何にして人間の知覚に変容をもたらすかをその体験から記された本。
    一部、実際に体験しないと分かり得ないであろう内容もあるが、人間が言語と時間などにどれだけ縛られているかなど、自分が未知である事は痛感した。

  • 「すばらしい新世界」で有名なオルダス•ハクスリーによる名エッセイ。

    ハクスリーはいわゆるヤク(メスカリン)推奨派で、本書もその効能や在り方を多くの文化的/宗教的/芸術的背景から擁護している。
    時代が時代なら発禁本だったろうなぁコレ…。

    ハクスリーが持つ文学的才能から語られるメスカリン効能はとても読んでいて楽しく、作者のイキイキとした息吹を感じることができる。
    それでいて宗教的恍惚を『CO2の濃度の増大で減量バルブとしての大脳の働きが弱まり…』と科学的に看破している点は素晴らしい。決して体験だけに委ねるわけではなく、理論とそれが払う代償(対人関係)にも気を配っていてハクスリーの知見の深さが窺える。

    内容は分かりにくいが、先に解説を読んでるとスッと読めるかもしれない。最近読んでる本はそんなんばっかだなー…。

  • ・知覚の扉澄みたれば、人の眼に
     ものみなすべて永遠の実相を顕わさん
     ──ウィリアム・ブレイク

  • 幻覚剤メスカリンを自身に投与し、体と精神の変化を記録した貴重な書籍。彼の観察力と語彙力が高すぎて、前半は理解に苦しんだが、後半は一気に読めた。

    言語は人間の唯一の特権で、知識を得るために必要不可欠だが、その言語が同時に人間の脳みその可能性を制限しているという理論には賛成。

    付録と訳者の後書きもすごく面白かった。

  • 大学時代に一度、今回50代を目前にして再購入して二度目の読了。
    何度読んでもわからない。
    怖いものみたさで読むのだが、2回読んでもやっぱり怖いとか以前に「わからない」。

    知らなくていい世界があるということなのか…。

  • これ発売時に買った。20歳代のころ。
    ドアーズの元ネタになったというか、昔のミュージシャンがみんな読んでたサイケ系幻覚剤についての本。
    こういうの漁って読み倒してたなぁ。

    脳と薬物。実体験をもとに書かれた小説。例えばひとつの絵を見て突然それが何を意味するのか理解出来たり、経験者には言わずもがな。再版されたんですね。

  • 幻覚剤メスカリンを摂取した経験を記したエッセイ。

    メスカリンを摂取すると時間や空間の感覚が薄くなるかわりに、視覚情報が強化されて物体の存在の強度(色や光、意味など)が認識できるようになる。いっぽうで聴覚に関しては特に変化はなかった。(これはハクスリーの主観や興味の方向に由来するようだ)

    もともと人間は宇宙のすべてを知覚できるのだが、それをそのまま受け取ると情報量に圧倒されてしまうので、脳が無意識に「減量バルブ」として働き、生存に必要な情報だけに絞っている。しかし、メスカリンはその「減量バルブ」の効果を下げる働きがある。

    神秘家や幻視者、芸術家、それに精神分裂病者は「減量バルブ」を通さずに世界を見ている。また洋の東西を問わず修行や苦行が行なわれているのは、心身機能を低下させて「減量バルブ」の働きを弱め、彼岸の世界にたどり着くためであった。メスカリンを使えば化学的にその境地に達することができる。

    本書はティモシー・リアリーに影響を与えたことでも知られている。

  • ▶図書館にあり。
    ● 2025年3月14日、おじから教えてもらった。3/1に銀座シックス6階の書店に行ったら、ビアズリー展のブースがあり美術展のチラシを貰ったので食事中のおじに見せたら、「昔行ったかも。オルダス・ハクスリーの知覚の扉って本に出てくんだよ。芸術家が物がどのように見えているか。草間彌生みたいな世界とか」「メスカリンっていう薬を服用テスト」「ジョン・F・ケネディと同じ日に病気で死んでるんだけど、ケネディが取り上げられてるから知られてない(確か)」

  • 幻覚剤メスカリンの効用について書いている。しかし、服用後の知覚の変容に関する抽象的な議論が続く。

    要点は、81頁以降のあたり。ハクスリーはアルコール依存、たばこ依存の弊害を論じたうえで、害が少なく、〈人工楽園〉へ到達する現実逃避方法としてメスカリン(依存)へ転換することの必要を説く。大麻合法化論のはしりだとも言える。

    時代背景としては、ヒッピー、ニューエイジが求めたサイケデリックであり、社会から矛盾がなくなることはないのだから、他人に迷惑をかけない範囲で自分で気持ちよくなったもん勝ち、という消極的自由の思想が存在していることを感じる。

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