ウィトゲンシュタインのウィーン (平凡社ライブラリー)

  • 平凡社
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本棚登録 : 60
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582763867

作品紹介・あらすじ

世紀末ウィーンの文化状況の中で結晶した「ある決定的な問題」とは?そしてそれは哲学者ウィトゲンシュタインの生涯に、いかに貫流したのか?英米分析哲学の文脈でとらえられがちなウィトゲンシュタインの哲学を、故郷ウィーンの文化史・思想史に定位させた、現代のマスターピース。

感想・レビュー・書評

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  • □ 第一章

    ウィトゲンシュタインの思想を、論理学上の技術的な側面だけでなく、彼が一体何を真の哲学的な問題として問おうとしていたのかという本質において理解するためには、彼の知的活動をフレーゲやラッセルなどの英米分析哲学の文脈に位置付けるだけでは断片的・抽象的であるがゆえに不十分であり、彼が青年期を過ごした世紀転換期ウィーンの歴史的文化的な云わば全体状況の中で彼の知的遍歴を探ってみる必要があると説く。さもなくば、彼の哲学的問いがどのように形成されたのかという起源の問題が解決されることはないし、『論理哲学論考』に見られる論理学・言語哲学に関する記述と倫理・生の意味・語り得ぬことに関する記述(命題6・4以降)との間のギャップも説明できないままになるから。この「序論」の論理展開は、さながら思想史・精神史の教科書のようである。

    「実証主義者たちは、哲学を歴史的な不純物から純化し、既に数学でよく知られている、抽象的で一般的な形式の種類へ、その問いを組み立てようと英雄的な努力をしたが、しかし、われわれが現実の人間――ひとかどの哲学者と同様、若きルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン――の哲学的問題と思想に直面する場合は、その本来の位置にある、地理学上の標本に面と向かい合っているのに似ているのである。そして、哲学的な問題と思想をもとの場所から削り取る過程で、それらがはっきりした形をとった、歴史的および文化的母体をわれわれは容易に忘れがちであり、しまいには、われわれ自身の――著者のではない――先入主を反映する彫塑形式を、それらに押しつけることになりやすい」

    □ 第五章

    物象化 ・・・ 抽象概念を形而上的に実体化する誤謬

    □ 第六章

    ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を、カントの超越論哲学のプログラムの系譜に連なるものとして位置づける。超越論的機制は則ち自己関係性的機制であり、「語られ得ず、示され得るもの」とはこの超越論的機制に関わる部分のことではないか。

    □ 第七章

    理性や言語など哲学の抽象的な問題の本質を、「生の形式」「生活形式」「生活世界」という前‐反省的な概念との関係に帰着させそれに従属させることにより、本来問われるべき問いが何ら先鋭的に問われることなく、ただ現実が無反省的に追認されて終わってしまうだけの議論(いわば「日常性というドクサ」と呼ぶべきか?)に意味はあるのか。

  • この哲学という、とてつもなく難解で
    なじみのない世界。何度読んでも
    この陳腐な頭には染み渡りはせぬ。

    ただし、彼の独特の気性というのは
    歴史背景下や家族環境にどうも
    左右されていた模様です。
    傍目から見れば明るい彼ではあったものの
    異なる場所に居つくのは苦手だったようで。

    哲学というもののあり方は確かに
    ほかの人とは明確に違いますね。
    彼のところに学びに来た人に
    哲学を薦めなかったことも。

    そして彼自身も哲学の道からは
    あえて離れているんですよね。
    なんだろう、色々異端だわ。

  • (後で書きます)

  • ルートヴィヒ・ヨーゼフ・ヨーハン・ウィトゲンシュタインをコンテクストの中に入れ込んでみよう,という趣旨で書かれた沢山の書物の中の一つらしい.1973年.

  •  『論理哲学論考』をはじめとする著作に影を落とすことになる、ショーペンハウアー、キルケゴール、トルストイなどからの影響関係を検証しつつ、ヴィトゲンシュタインの思想を、19世紀末から20世紀初頭にかけてのヴィーンの文化、いや文化批判を土壌とするものと再文脈化を図る労作。とくに『論考』の構想を、A・ロースやシェーンベルクによる芸術の変革と関連づけ、K・クラウスによるコミュニケーション批判に哲学の領域で対応するものとする論点は、なかなか興味深い。また、本書の頂点をなすのは、文化史的、思想史的文脈を踏まえて、『論考』そのものを再検討する第6章の「『論考』再考」であるが、そこで展開される『論考』が、クラウスの言説の戦略と呼応する仕方で意図するものを浮かび上がらせる議論は、説得的ではあるが、もう一歩踏み込みがほしいところ。とくに命題としての言葉が世界の像であるというヴィトゲンシュタインのテーゼを、テクストにそくして詳論してほしかった。この点に関連して、ホーフマンスタールの「チャンドス卿の手紙」との関係がもう少し論じられたなら、ベンヤミンの言語哲学との同時代性も浮き彫りになったのではないか。翻訳にはやや問題を感じる。そして、平凡社ライブラリーに収録するにあたり、やはりドイツ語の改訂版から再度訳し直すべきではなかったか。そこにあるのが「ヴィーンのヴィトゲンシュタイン」であるなら、なおさらである。

  • 『だまされない議論力』吉岡友治 の巻末の読書案内に出ていたもの。そのうち読む予定-「19世紀末のウィーンの思想史。多彩な人物たちをすっきりと関係付けたストーリーテリング」
    仕事でそのころの資料扱ってた時に読んでれば、楽だったかも。しばらく読む機会はなさそうだが、一応メモ。

  • マイベスト5に入るだろう一冊。
    現代哲学の萌芽、分水嶺を知りたい人は是非。欧州は奥が深い。

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