思想史のなかの科学 改訂新版 (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582764307

作品紹介・あらすじ

科学はどこから来てどこへ行くのか。古代から現代に至る相関図を平易に説いた高校生からの必読書。

感想・レビュー・書評

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  • これまで学んだ高校の「世界史」、大学の「科学史」・大学院での「科学技術リテラシー論」の中では、これらの科目の性格上、科学史分野のごく一部が扱われるにとどまっていた。本書は、基本的な科学史の通史的な入門書といえる。古代オリエントの科学から今日の科学技術政策の流れが、文庫本1冊に凝縮し説明されている。

  • IS1b

  • 高校や大学で学んだ科学を歴史的軸を持ってそのバックグラウンドとともに解説していく良書。

  • サイエンス
    社会
    歴史

  • 著者:伊東俊太郎 |広重徹 |村上陽一郎
    1,400円+税
    出版年月日:2002/04/01
    9784582764307
    B6変 360ページ 在庫あり

    科学の思想そのものが問われ、科学と社会の関係、科学の文明における位置が問題とされている現在、古代から現代にいたる科学の発達を簡便な通史としてまとめた入門書の決定版。
    http://www.heibonsha.co.jp/smp/book/b160621.html


    【簡易目次】
    「科学革命」以前の科学
    科学革命
    近代的生命観の形成
    原子論の系譜
    啓蒙主義の時代
    一九世紀の諸様相
    科学の新しい動き
    進化思想の展開
    二〇世紀の科学
    アプリオリズムの克服
    新しい物理学
    自然科学を中心とする学問の再編
    現代文明と科学

  •  自然哲学とも呼ばれる科学がなぜ今日これほど成功し浸透したのはなぜか。また問題はなぜおこるのか。そんな疑問から本書を購入。
     科学がどのように思想によって育まれ、また巣立っていたかがわかる。でも思想哲学からあまりに遠くに飛んでいって良いのだろうか。
     今日科学は哲学を必要としているように思う。しかしそれは科学を捨てることを意味しない。人間はもはや文明の外では生きられない。決意のための哲学を。

  • 古代から現代(2002年)までの思想および近代科学の変化が記述されている。分かりやすすぎて感動してしまうほどに。

  • 1-1 科学論・科学史

  • 古代から現代にかけての科学の通史が詳細に説明されている。秀逸なのは、科学の歴史をピンポイントで説明するのではなく、思想との関係で歴史を追うことで流れがわかる点。原子論と民主主義、進化論と進歩思想や自由競争主義など、科学の発見がもたらした思想への影響についても触れていて、科学を思想の歴史の中でとらえる意味が伝わってくる。現代の合理主義がもたらすストレス社会や環境問題がデカルトやベーコンの思想に端を発していることもわかった。

    1,2,8章以外は飛ばし読み。

    人類史の巨視的展望
    ・人類文明の歴史は、人類革命、農業革命、都市革命、哲学革命、科学革命の5つの変革期を経てきた。

    古代オリエントの科学
    ・メソポタミア:60進法、太陰暦、12宮。古バビロニア期(BC1900〜1600)、アッシリア期(BC700〜600)、セレウコス期(BC323〜75)の3つの時期に集中。
    ・エジプト:10進法、太陽暦。

    ギリシアの科学
    ・ミレトス学派:水、空気、火など、統一的な原理としての根源ですべての現象を説明しようとし、ミュトス(神話)の世界からロゴス(理性)の世界へ歩みを進めた。タレスなど。
    ・エレア学派:元素の変化ではなく離合集散によって、多様な現象を説明。デモクリトスの原子論。
    ・ピュタゴラス学派:協和音程の数学的構造を発見。素材の「なに」(質料)でなく構造の「いかに」(形相)を問題とした。
    ・アリストテレス:天動説的宇宙像をつくり、16世紀までの自然像を決定した。
    ・アレキサンドリアの科学:ユークリッド、アルキメデス、プトレマイオス

    中世の科学
    ・アラビア科学:アッバース王朝時代、バグダードに知恵の館を建設。ギリシア科学の書物をアラビア語に翻訳。
    ・西欧ラテン科学:12世紀ルネサンス後、ギリシアやアラビアの科学書がラテン訳された。13世紀に数学的合理性と実験的実証性を組み合わせる科学方法論。

    ルネサンスの条件
    ・大航海時代にインド航路の確立によって東西貿易を奪い取った。
    ・ギリシア科学の古典が印刷術により広く知られるようになった。
    ・新プラトン主義による世界観の変革(コペルニクス)。アルキメデス的数学的自然観、デモクリトス的原子論的自然観の発達。
    ・イタリア自由都市において、学者の合理的理論と職人の実証的実践が結びついた(ダ・ヴィンチなど)。

    科学革命の特質
    ・科学の担い手が哲学者から今日と同じタイプの学者に変わった。
    ・デカルト:機械的自然像によって霊魂を認めるアリストテレス=スコラ自然観を排除。
    ・フランシス・ベイコン:自然支配の理念

    原子論と民主主義
    ・原子論的思想はJ・ロックの政治哲学に影響を与え、アメリカの独立宣言、フランス革命につながった。

    啓蒙主義
    ・18世紀に、ニュートンの運動力学は全世界の運動を完全に描きつくすものとしてとらえられ、自然科学的知識の確かさを紹介した。
    ・科学者は神への信仰と自然探求とを完全に切り離そうとした。
    ・それまでの終末論的ペシミズムから、科学技術による人類の進歩の発想へと転換した。

    進化思想
    ・リンネによる種の分類は静的宇宙観に基づいたものだったが、種の生成過程への関心を誘った。
    ・R・フックは化石の研究から地球の歴史を振り返る自然誌的な考え方を育て、環境の変化に対応する生物界の変遷もあったと考えた。
    ・進化思想は、啓蒙主義や産業革命とともに進歩思想の基盤となった。
    ・適者生存や生存競争等の進化論の概念は、資本主義の自由競争やマルサスの人口論が背景としてあった。
    ・ラマルク:生物の体制構造が単純なものから複雑なものへと移行していることを発見し、環境に対して生物が適応したととらえ、その要因として用・不用説をとなえた。
    ・ダーウィン:ライエルの地質学原理とマルサスの人口論の着想から、食物獲得競争による選択で説明した。ウォーレスもマルサスを読んで自然選択説の着想を得ていた。
    ・適者生存の概念は、資本主義の自由競争や、人種差別、優生学の科学的根拠として利用された。

    現代文明と科学
    ・科学革命と産業革命以降の物質とエネルギーの生産の時代から、21世紀には知識の産出を主とする社会に移るだろう。さらに、地球規模の環境問題に直面して環境革命が迫られている。
    ・科学技術の変革:人間や地球の生とどのように関わるかをわきまえる叡知へと変わる必要がある。
    ・世界観の変革:デカルトの機械論的世界像からは感情や生命の観点が脱落していた。F・ベイコンの自然支配の理念で発展してきたが、人間は自然の一部にすぎない。
    ・文明の改革:現代の文明は物的欲望ばかりが肥大してきた。もともと文明という言葉は、端正さ、品位、気風という意味が内包されていた。

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著者プロフィール

伊東俊太郎
1930年東京生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。Ph.D.(科学史・米国ウィスコンシン大学)。東京大学教養学部教授、国際日本文化研究センター教授を経て、東京大学名誉教授・国際日本文化研究センター名誉教授・麗澤大学名誉教授。日本科学史学会会長(2001-09年)、日本比較文明学会名誉会長、国際比較文明学会名誉会長。著書『文明と自然』(刀水歴史全書、2002年)、『十二世紀ルネサンス』(講談社学術文庫、2006年)、『近代科学の源流』(中公文庫、2007年)、『新装版 比較文明』(東京大学出版会、2013年)など。共著『思想史のなかの科学 改訂新版』(平凡社ライブラリー、2002年)など。全集『伊東俊太郎著作集』(全12巻、麗澤大学出版会、2008-10年)。2020年文化功労者。

「2022年 『人類史の精神革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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