アメリカとアメリカ人: 文明論的エッセイ (平凡社ライブラリー す 4-1)

  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582764437

作品紹介・あらすじ

『怒りの葡萄』で知られる文豪が晩年に語ってやまなかった古典的アメリカ論。代表的アメリカ人による自画像の試み。

感想・レビュー・書評

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  • スタインベックのアメリカ論。トム・ウルフってもう一人いたんですね。

  • 【目次】
    1 多様の統一
    2 逆説と夢
    3 人民の政府
    4 人種は平等につくられた
    5 アメリカ人という種
    6 幸福の追求
    7 アメリカ人と国土
    8 アメリカ人と世界
    9 アメリカ人と未来

  • 文で気に留めたいところをピックアップしました。
    以下完全にネタバレです。







    それよりも不思議なのは、異人種の子孫がみなアメリカ人になってしまうことだ。
    →あれだけの許容力があるのは不思議

    しかし、アメリカの風土とか「アメリカ式生活様式」の生活環境が、統一的なアメリカ人を形成したのではないかと想像する。
    →でも日本はアメリカ式生活様式に憧れたけど、アメリカ人にはならなかったなぁと思う。

    つまり、技術と進歩が急激につくりだした社会環境に、生物学的個体としての人間が、まだ対応できないでいるのだ。
    →結局データ処理が速くなっても、それを知覚するのは人間。だからこそデータリテラシーには気をつけなければならない。

    外国人には、二千年の深さをもつイギリス人と同じようにイギリスを知り、感じることはできない。私はかつて、祖国に帰ったポーランド人が大地にキスし、デンマーク人がコペンハーゲンのドッグの赤さびた鉄柱を恥ずかしそうになでているのを見た。アメリカ人の感情の本質がちがうのではない。そうではなく、この感情がアメリカ全体についてのべられたことが、ほとんどなかったということである。
    →逆に日本人は自分たちのことについての考察が多いよね。なんでだろう。

    アメリカは存在していなかった。労働と流血と孤独と恐怖の四世紀が、この国土を作ったのだ。われわれがアメリカをつくり、その過程がわれわれをアメリカ人にした。
    →過程が民族をつくるという着眼点が面白い

    このように新参者を残酷に扱ったからこそ、種族的、民族的なよそ者が急激に”アメリカ人”に同化したのではないかとさえ思われる。

    このように、アメリカにはいくつかの特色があるが、そのどれも互いに矛盾する。アメリカ人は矛盾によって生き、呼吸し、作用するかのようだ。しかし、自分たちの神話と情熱的に信じることほど矛盾していることはない。

    アメリカ人にとっても、その広範な一般的な夢には名前がある。それは、「アメリカ的生活様式」と呼ばれている。……われわれがとにかくこの夢を抱いているという事実がその可能性を示しているのかもしれない。

    私は村と市と区、郡、州、国の政治を見てきた。政治は前述したように全く狂気じみ、金で動かされやすい。それなのに、ここから出てくるものが、世界のどこよりも安定し、責任を持ち、永続的で信用があり、尊敬される政府だというのはどうしてであろうか。この点で、われわれは幸運であった。親切でユーモラスな神がみそなわせているのか、それともアメリカの制度にはわれわれを暴走から止める何かが内在しているのか。
    →尊敬される政府であるかどうかはともかく、あれだけのリクス行動をしていながら、依然として幸運であるのは本当にユーモラスな神がいるのかも

    われわれは、大統領候補としては二流の人物を、大統領としては一流の人物を要求する、とよくいわれる。

    ……各州はそれぞれ多かれ少なかれ自給自足の十三小国として、分かれていたのである。生き延びることの必要性がこの状況を変えたが、大不況中、連邦政府が全国民の保険と福祉に責任をとるようになって、最大の変化が起きた。これは真に第二の革命であった。

    われわれは奴隷制度を人間の尊厳性の否定としてみる。

    奴隷使用が効果的だったアメリカ各地に、奴隷が集中するにつれ、害になるようなことが出てきた。……奴隷たちに奴隷制度をきらわせないようにする方法はない。奴隷を持つ社会ができることといったら、せいぜい、奴隷たちに抵抗しても無駄だと思わせることである。
    その一つの方法は奴隷に、子供のときからお前たちは劣悪で、愚かで、弱く、無責任だと思いこませるよう洗脳を施すことである。第二の方法は、抵抗を芽のうちにつみとり容赦なく罰することである。第三は、家族、友人を分散させ、同族が集まったり同族をつくらせないようにするのと。第四は、これこそ最も重要だろうが、いかなる犠牲を払っても、奴隷に教育を施さないこと。教育にとって必然的に質問と意思伝達が起きてくる。
    →でも、教育を施すことは奴隷を解放することになるとは思わない。むしろ、もっと悲惨だ。教育は人のアイデンティティを形成する。歪な教育は疑問を持つことを根本的に駆逐するんじゃないだろうか。

    洗脳についての研究者の一致した意見では、洗脳は意識の奥深く達せず、圧力を続けない限り効果は消える。

    私は、白人と黒人の間に忠誠心とか愛情とか親切心がなかったというのではない。そういうものはあったが、それは仲間同士の気持ちのふれあいといったものではなかった。この引き離されたへだたりは、何世代にもわたって深く伝えられ、いまなお存在する。最近、南部人のある友人が言った。「ぼくは絶対に黒人に話しかけられないんだ。話しかけたいんだが、なんと言ってよいかわからないんだよ」
    →すごく考えさせられるエピソード

    百年後の現在、アメリカの黒人はわれわれが一八六七年に約束しながらも与えなかった平等性に向かって進出しつつあるが、この進出は4つのことによって始められた。……それは宗教と芸術と学問である。第四は、彼女は持たなかったが、現在の黒人は持っている経済的重要性とその強みである。

    アメリカ独立革命は、反乱を起こしたアメリカ入植者たちが新しい種類の政府を望まなかったという点で、フランス革命とも、のちのロシア革命ともちがっていた。

    たしかにアメリカでは子供の過剰保護は小児病といってよいほどの国民的病をもたらしている。

    19世紀末ごろ、大きな変化ぎ起きたようだ。……
    この夢は、痛ましいほど国民的なものになった。子供は親以上にならなくてはいけないので、子供を訓練し、導き、あと押しし、尊敬し、しつけを施し、おだて、無理じいしなければならない。ところが親たちは現在より劣っていたわけだし、現在以上のものはありえないので、親たちが提出したルールは自分たちの経験でなく、願望と機体に基づいていた。
    →願望という歪な価値観がベースに育てられたら、歪なアイデンティティで育つんだろうな。他人からの承認欲求が異様に強いとか、孤独感を異常に感じたりとか。でもこれ、絶対日本でも同じこと起こってる。

    さて、お小遣いをタップリもらうので、子供や少年少女は金を持ち、したがって彼らだけで市場になった。

    アメリカが孤立主義をとったのは未知のものごとが本当にこわかったからである。
    →ちょっとかわいい。

    私は、アメリカの島国根性の時代は終わったと信ずる。アメリカ人は今日、どの国民よりも海外旅行し、交通規則を学びつつある。
    →同じく、どちらかというとアメリカ人は大陸的価値観の方が強いと思う。

    アメリカ人の態度がこのように目に見えて変化してきたため、海外で前よりはるかに好かれるようになったのは不思議ではない。それは事実である。われわれはもはや、あらゆる芸術、あらゆる文化、あらゆる知識はヨーロッパが源だとは信じない。

    私は国家を破壊するものを名ざしした。安楽さと豊かさと安全性である。そこから退屈で、のろのろきたシニシズムが生まれてきた。そのシニシズムのなかに、現在の世界、現在の自分に対する反逆がものうげな満足感を持ってひそんでいる。
    滅びゆく民は、現在に寛容であり、未来を拒否し、過去の偉大さと、半ば記憶にある栄光に満足感を見出す。
    →日本という国はこのシニシズムによって埋没していないだろうか

    アメリカ人がこのような絶滅の兆候を否定していることに、私の希望と確信がある。われわれは満足していない。すきっ腹をかかえた移民の祖先たちからの遺伝だろうが、われわれはまだ落ち着きのなさを失ってはいない。…エネルギーの浪費は、エネルギーの欠乏に比べれば小さな問題なのだ。
    →アメリカ人らしい考えた方ですよね

    われわれは時に失敗し、誤った道をとり、新しく継続するために立ち止まり、腹を満たし、傷口をなめてきた。しかし絶対にあと戻りはしなかった、絶対に。
    →前を進み続けたことこそが、彼らを形作り、そして彼をつくり続けているんだろう…

  • 105 目白ブコフ

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