近代日本の文学空間: 歴史・ことば・状況 (平凡社ライブラリー ま 1-2)
- 平凡社 (2004年5月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (451ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582764994
作品紹介・あらすじ
前田愛は文学を「都市」や「読者」といった新たなメディア空間で捉えなおした。そうした革命的な研究対象や方法は、それまでの文芸批評を超えたカルチュラル・スタディーズの先駆であった。いまなお多くの人びとに影響を与え続ける前田の魅力を満載した一冊。
感想・レビュー・書評
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平凡社ライブラリー
前田愛 「 近代日本の文学空間 」
明治期の文学史と文体論の本
明治期の文学は人情世態小説のリアリズムに行き着き、文体は音声言語を文字言語へ復元した饒舌体に行き着いたという論調
坪内逍遥「小説神髄」を契機に、ロマン的な歴史文学が人情世態小説のリアリズムへ転換したとのこと
ロマン的歴史文学が、頼山陽「日本外史」をピークとして衰退したとしても、「敗者にとって正義とは何か」を問い続けた東海散士の歴史文学は、司馬遼太郎作品と通じるものを感じる
「高野聖」の批評は 他の論文とはトーンが異なるが、「変身」と「再生」のモチーフ、性的な禁忌の象徴としての蛇、胎内幻想としての水浴シーンなど面白かった
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文学研究は、もとになる本を読んでいないとなんかあんまりピンと来ないような気がしてしまうのは、そういうもんだという先入観があるからだろうか。
それはともかく。
一番印象的だったのは、「幕末維新期の文体」。西周の明治7年の演説を「明六雑誌」に収録した「内地旅行」という文章の評価。「それは日常的な「談話応対に適するのみ」と森有礼が貶価した日本の話ことばを論理的な言語に接近させる試みだった」(p258)というくだり。近世から近代の議論の有り方の転換点を考えるうえでも重要な手がかり・指摘だと思う。