新編 森のゲリラ宮沢賢治 (平凡社ライブラリー 500)

  • 平凡社
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感想 : 3
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  • 本 ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582765007

感想・レビュー・書評

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  • 西成彦 「森のゲリラ 宮沢賢治 」


    宮沢賢治が生きた植民地主義時代の政治状況から賢治作品を捉え、同化政策批判的な植民地文学性やクレオール性を見出している。


    アプローチは面白いが「なめとこ山の熊」の食物連鎖的な主題が階級闘争に置き換わり、同化政策批判的な植民地文学に結びつける論調は飛躍しすぎだと思う。イーハトヴを政治が目指すべき国家と考えるのは、違和感がある


    クレオールについては複数定義されていてわかりにくいが、宮沢賢治作品の擬人法や多言語性から出てきた雑種性、共存性、移動性がクレオールを示しているということだと思う





    宮沢賢治作品
    *異人の視点を持ち、自由自在に移動しながら、歴史をふりかえり、現実の社会関係を解きほぐして、現実を異化する力に変換する
    *宮沢賢治は「耳の文芸」を「幻聴の文芸」へ置き直したところに自らの文学を位置づけた
    *宮沢賢治の文学探究は、自らの言語を国語のくびきから解き放ち〜文学をイーハトヴの未来を祝福する表現手段へと改造する
    *イートハヴの平和という夢は実現されない〜それでもこの夢と挫折の物語を語り続ける




    銀河鉄道の夜
    *地球規模を超え、宇宙規模で物を考えようとするとき、山人と平地人の対立、人間と動物の差は問題にならない〜それぞれが衝突と共存をくりかえす
    *二つの文脈〜父の不在に苦しむ息子ジョバンニの物語とジョバンニとカムパネルラの友情の物語〜に接点が見出せないまま話は終わる

  • 「なめとこ山の熊」という賢治の作品のラストシーンがずっと気になっていました。様々な解釈があると思いますが、西さんがこの本でおっしゃっている「植民地文学」の考え方が、とても面白い方向を指し示してくれました。
     おバカな感想をブログで書いています。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202001160000/

  • 題名にひかれて購入。内容は興味深かったが実際に賢治の作品読み込んでおかないと置いて行かれます。私は置いて行かれました↓↓

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著者プロフィール

【訳者・解説】西 成彦(にし・まさひこ)
1955年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科比較文学比較文化博士課程中退。立命館大学名誉教授。主な著訳書に、ショレム・アレイヘム『牛乳屋テヴィエ』(岩波文庫、2012)、『マゾヒズムと警察』(筑摩書房、1988)、『ラフカディオ・ハーンの耳』(岩波書店、1993)、『胸さわぎの鷗外』(人文書院、2013)、『バイリンガルな夢と憂鬱』(人文書院、2014)『外地巡礼─ 「越境的」日本語文学論』(みすず書房、2018)、『死者は生者のなかに─ ホロコーストの考古学』(みすず書房、2022)他。

「2024年 『ザッハー=マゾッホ集成Ⅰ エロス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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