- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582765014
作品紹介・あらすじ
「スロー」をキーワードに、スピードに象徴され、環境を破壊しつづける現代社会に抗するライフ・スタイルを求めて、さまざまな場所で模索し、考える人々の言葉に耳を澄ます。人と自然とのつながり、人と人との結びつき、身体、日常生活、文化-その根拠にある"遅さ"という大切なものを再発見するユニークな試み。
感想・レビュー・書評
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タイトル表紙に惚れた。真新しいことそんななくパラ読み
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久しぶりに出会った名著。
畑を少しだけかじってみたり、稲刈りを手伝うときに感じること。それは思い通りにいかないことの気持ちよさというか、受け入れることの納得感。人間はなんでも思い通りにいくように、なんとかさせるように空間も時間も支配しようとしているが、その流れに支配されると、実はもう心も身体もついていかないところまできているのではないか。
仕事をさぼりたいとか、家庭の時間がないとかという表面的なことではなく、人は本当はどういう時間の流れの中で生きていくべきなのかということについて、最近はとても興味がある。この本は自分で手に入れなきゃな。ページが折れないもの。 -
・世界危機を救う方法は、スローイングダウン、減速すること
・生態系は、奇蹟ともいうべき自然界の「デザイン」。
そこから謙虚に学びつつ、模倣するという態度こそが良い技術の基本。
・「360度何やってもいい」という自由は、発明の原動力である集中力を
損ねる。
・現代文明、科学、技術、経済とビジネスの各分野に共通して欠如して
いるのが、
1)循環の思想
2)人の痛みがわかる感性
3)人間は完璧でないという認識
・ビジネスとは、ビジーネス、つまり忙しさのこと。
ビジネスとは、時間との競争。
・エネルギーを使って、時間を速めて金を得る。エネルギーから時間へ、
時間から金へと変換を行うのがビジネス。
・人生とは、雑事の集積。「動くこと」だけでなく「留まること」も大事
・勤勉思想、一生懸命に働くことが道徳的であると感じさせることで、
搾取の構造をおおいかくす。
・功利主義と効率主義の文明の本質。それが何かのためになるのでなければ
それは意味がないとする社会。
・「目的と手段」の関係から外れるものは「無駄」「非効率」と見なされる
休むことや遊ぶことは、それ自体では時間の無駄。
・怠惰の思想こそが、昔から民衆のうちで育まれ伝えられてきたもの。
・社会とは、そもそも同質の人々が同じ目標に向かって、競争的に生きる
場所ではない。 -
現代社会(できる限り早く、簡単に、多く、生産・流通・消費する社会)とは対極にある「スロー」な社会や生き方を提示し肯定する本。
主題が面白いのに加えて、心に響く言葉も見つけられた。
・商いは、お客さんと、一緒に育てる。
・好きと、社会貢献と、利益が重なることをする。
・抗議や反対運動よりも、より良いものを作りみんなに示してあげる方が有効。
・「自分の行動が他人への迷惑だと考えて、それらを避けようとすれば、自分には家の中で寝たきりの一生しかない。人生に多少の迷惑のかけ合いはつきもの。骨がいつどこで壊れるかもしれないが、自分は外へとび出して、人に声をかけながら生きていく方を選んだ」p.204 -
2020年 9冊目
『スローイズビューティフル』
効率とか便利とかじゃなくて、
無駄とか留まることを大事にしたい。たわいもない会話とか誰かとご飯を食べるとか畑で作物を育てるとか家事とか。そういう遅さにこそ大切なものがあるし、地球との共生にも繋がる気がする。
合間にある詩がとても素敵。 -
生態系を危機から救う人とは、まずその生態系を楽しむ人だろう。問題を解決できる人とは、答えを生きている人であるはずだ。森を楽しむのには時間がかかる。生きることは時間がかかる。食べて、排泄して、寝て、菜園の世話をして、散歩して、子どもたちと遊んで、セックスをして、眠って、友人と話をして、本を読んで、音楽を楽しんで、掃除をして、仕事をして、後かたづけをして、入浴をして。スロー・フード、スロー・ラブ、スロー・ライフ。近道をしなくてよかった、と思えるような人生を送りたい。(p33)
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思索
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"文化人類学者が書いたスロー文化、スローなライフスタイル提案書。カルチャーショックを受けた本。
私たちは、あまりにも急ぎすぎているのではないか?ファースト・フードのアンチテーゼとしてスロー・フードという呼び名があり、その考え方はしっていた。さらには、時間の概念、生き方そのものを普通だと私が思っている世界と全く別の視点から見つめている。住むこと、日常、身体、こうしたものをひっくるめた日常生活を見つめ直したくなった。スローな視点を忘れずに持ち続けることを今年の目標にしたい。" -
以前農業は行き方そのものだった。それが解決すべき問題となった。
科学技術で浮いた時間は別のことに使われ楽にはなっていない。
頑張ることが賞賛されるのは良いが、怠けることも認められる世の中だと良いかも。
アメリカの車社会は車会社が電車会社を買ったから。
人間は本能が壊れている。
スローライフの中でも自分の成長のために猛烈に働くことはありなのか。スローライフとは、自らの向上を目指さないことなのか。
相手の親切を断る、なぜなら新たな人の親切を受けるチャンスを逃したくないから。 -
概ね、否、ほぼ同意。
現在自身の問題点にあり、かつ言語化されていなかった部分を、
著名な学者、先住民族、特異と分類される人達の引用を元に、
非常に明快、簡潔に説明してくれたという印象で、
ひとつ胸につかえた物が、とれたような、そんな爽快感を覚えた。
北から見た際に使われる「発展途上国」「後進国」の日常に見られるのは、
家族が寄り添って暮らし、求めることはなにもなく、ただ遊び、ただ笑い、自然を謳歌するという態度。
資本主義の中で沸き起こる欲望や目的意識というものは、
著の中で「車が便利だから車社会になったのではない、政策としてそうさせられているのだ」
という文章を踏まえると、
もしかしたら、「人為的」に誘発されているものなのかもしれない。
とは言え、今僕がナマケモノにだけなったところで、
社会は効率への加速度を強めていくだけなので、
ナマケモノ生活をしつつ、出来ることから「形」をデザインし、
働きかけていきたいと強く想う。
デザインとは、「自分の生活を作り出す道筋を照らしかたちを与えること」。
また、日本の事例は勿論、
イタリアや先住民族の環境・文化への態度をもっと知りたい。
いや。出向いて体感してしまいたい笑
「ビューティフルということばを、次のような態度だと定義したい。そのもの本来のあり方を、遠慮がちにではなく、といってもことさら誇るでもなく、他を否定するでもなく、他との優劣を競うこともなく、ありのままに認め、受け入れ、抱擁すること」
「活動家の狂おしいまでの情熱が、平和のための彼のせっかくの貢献を帳消しにしてしまう」
「かりに白人が、何かやりたいという欲望をもつとする。日光の中へ出ていくとか、川でカヌーに乗るとか、娘を愛するとか。しかしそのとき彼は、いや、楽しんでなどいられない。おれにはひまがないのだという考えに獲り付かれる」
「将来のために今を犠牲にするのはバカげているという感性の方こそがまともなのだ」
「現代社会が保険保険社会であること。年金や積み立て貯金をはじめ、広い意味での保険によって、我々は今を削り、切り縮めては将来を購おうとしている」
「本来、私たち人間はみな答えを生きるものだと思います。しかしそれがいつの間にか、問いをたてて、答えを生きるかわりに、その問いを生きるようになっていないでしょうか。問題を追いかけることに忙しく、肝心の生きることがおろそかになっていないか」
「人々が必死に生きがいを求め、存在理由を探し、役割を模索し、それが思うようにうまくいかない時には生きがいや気力を失ってしまう時代。以前はどこが違ったのか。生きるということに理由などいらなかったのだ。生きるということに過不足はなかったのだ。多分、いのちというものが、自分にはおさまりきらない、自分を超えた、自分以上の存在だと感じていたからではないか」
「イタリア人の半分近くが人口五万人以下の小さな町や村に住んでいるという。これは農村への帰還という大きな流れの結果」
「フランスのジョゼ・ボヴェ。建設中のマクドナルドをトラクターで破壊した環境活動家」
「わずか五・六世帯の小さな村には週に一度の市がたって、近隣の村々から多くの人々が各々の農産物や工芸品をもって集まる。人々は持ち寄った食べ物やワインを共に料理し、食べ、飲んで、歌う。芝居も出る。ここには生産者と消費者の区別がないひとつの共同体があるばかりだ」
「サクラメント州立大学の環境学の学科。」
「抗議をしたり、反対運動をするだけでは足りない。それよりもむしろよいものをつくってみんなに示してあげる方が有効」
「カリフォルニアで見たストロー・ベイル・ハウスはどれも施主自身が設計と施行の中心になり、家族、友人、知人とともに手作りで建てたものだった」
「デザインとは、自らの生活を作り出す道筋を照らし、かたちを与えることである。小さなもの、つつましいもの、失われたもの、そしてゆっくりと持続し循環するものの意味を見直し、住まう心と技術を私たち自身の手に取り戻すためのデザイン。それを、スローデザインと呼んでみよう」
「藤村靖之の発明起業塾」
「発明と企業の出発点、それは、いいことをしたいと好きが重なる地点だ」
「マーケティングとは、古い人が古いものを古い仕方で売ることだ。バカなものが売れるのはなぜか。それは消費者がバカだからという決めつけが商品を作る側、売る側にあるのではないか」
「優先順位についての見識の喪失。この見識を消費者とともにもう一度育てていく努力の中に、実は、新しいビジネスのチャンスが潜んでいるはずだ」
「現代文明、そしてそれを支配する科学、技術、経済とビジネスの各分野に共通して欠如しているものが三つある。第一の欠如、それは循環の思想。第二に、人の痛みがわかる感性の欠如。そして第三に、人間は完璧でないという認識の欠如」
「スウェーデンでナチュラル・ステップという環境教育プログラムが、企業にも大きな影響を与えている」
「非電化製品の製造資金だが、共同生産・共同購入方式によってこれまでの工業製品は大企業という常識をくつがえすことができる」
「時間のかかることでも、直接生産や金に結びついていないように見えるものは雑事とか雑用とか野暮用とか呼ばれる。家事全般がそうだ。」
「疲れているというそのことだけで批判される。疲れていることは恥ずべきこと。疲れを隠し、抑圧し、克服する努力を怠っていることが恥辱なのだ」
「都会人の快楽はおおむね受け身になった」
「功利主義と効率主義の文明の本質。何かのためでなければ、それは意味がないとする社会」
「日本における勤勉思想はそれほど深くない。徳川時代の二宮尊徳をはじめとした勤勉道徳は権力者によって上から押しつけられた比較的新しい、一時的な思想。怠惰の思想こそが民衆のうちで育まれ、長々と伝えられてきた」
「パパラギというすてきな本がある。20世紀はじめ、サモアのある島の曹長であるツイアビが初めて訪れたヨーロッパについて、そしてパパラギについて、島の同胞に語って聞かせた話」
「無駄だからこそ、充実している。思えば我々は誰もみな、遊ぶために生まれてきたのではなかったか。」
「休むことの喜びを知っている人は、疲れを敬う」
「時間も本来地域ごとに異なり、多様であったはず」
「ナヴァホ族の11月は、すらっと痩せた風の月」
「こんなに情報があふれている時代なのに、自分の家族が過ごした時間のことはほとんどしらないなぁ」
「頑張るという言葉は競争を前提にしている」
「地域は取り換え可能な空間にすぎくなってなっている」
「たくさんの管、電線、ガス管、電話線、水道管、下水管、それらにつながれることで生命を保つ植物人間」
「車が便利だから自然に車社会になったのではない。政策として、人為的に作られている」
「スーパーの切り身以外に魚という概念をもたない子ども」
「食べるという行為をかつてとりまいていたはずの、畏れや戦慄、それらに裏打ちされた感謝や喜びのかわりに涼しい顔だけがある」
「社会にあってそれを支えていた節度としての文化の喪失を憂う」
「物がなくても平気な人間になってはどうだろう」
「本来の意味における文化、自前で生きていることを楽しむ能力を取り戻す」
「完璧さとは、付け加えるものが何もないという状態というよりはむしろ、取り去るものが何もないという状態」
「1989年まで続いていた専制時代のルーマニアでは、国の見境ない人口増加政策の結果、施設に収容された子どもの数が30万人にものぼったといわれる。ある研究によれば、毎年収容者の3分の1ずつが死んでいったという。一応の衣食住を与えられた子どもたちの間に起っていた大量死の原因は何か。それは一言でいえば、愛の欠落だった」
「効率的に子どもを社会化する、子育てと教育における大量生産」
「ゆっくり歩けば遠くまでいける」
著者プロフィール
辻信一の作品






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