漢詩一日一首<秋> (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582766288

感想・レビュー・書評

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  • 秋は寂しい、悲しい、というのは漢詩の作者が労働者(農業)ではなくエリートのものになってからのこと。農家にとって秋は豊穣の季節である。
    寝る前に少しずつ読むのに最適。俗世を離れて快眠できます。

  • とても良い本です。
    端的に表現すると「大要を抑えられ、同時に細かく、痒いところにも手が届く」漢詩の解説本です。

    孟浩然の『洞庭湖』を例にとると、、、

    『洞庭湖』
    八月湖水平  八月 湖水 平らかなり
    虚涵混太清  虚に涵(ひた)して 太清に混ず
    気蒸雲夢沢  気は蒸す雲夢(うんぼう)の沢(たく)
    波憾岳陽城  波は憾がす岳陽城
    欲済無舟楫  済(わた)らんと欲して舟楫(しゅうしゅう)なく
    端居恥聖明  端居して聖明に恥ず
    坐観垂釣者  坐(そぞ)ろに釣(つりいと)を垂るる者を観て
    徒有羨魚情  徒(いたずら)に魚を羨むの情あり

    上記の歌に対して、細かくは単語の解説から始まります。

    「虚」は虚空、すなわち大空である。「太清」もまた天を指すが、これは道家でいう三天(玉清、上清、太清)の一つ、仙人が昇る最上階といわれるいわば観念的な天である。

    といった具合に。
    これにより、基本的に意味の分からない単語はなくなります。

    そうして続けて詩の大要や、裏に隠された意味の解説が入ります。

    済(わた)らんと欲して舟楫(しゅうしゅう)なく
    端居して聖明に恥ず

    向こう岸に渡りたいが、船も楫もなければどうしようもない。
    なすすべもなくつくねんといれば、聖明の天子に対したてまつり、心恥ずかしい。

    これは意味として唐突の感を免れない。それはこの句がある典故をふまえているためである。
    ・・・
    儒家の古典の一つである『書経』説命篇にいう、「ここに立てて相(大臣)となし・・・、若しおおいなる川をわたらば、汝を用て舟楫となさん」。これを踏まえて孟浩然は、私は舟とも楫とも頼られるべき才を持たぬ。この広大な湖を前にして、それをわたって天使を補佐すべき術を知らない。そのような己が恥ずかしい。と述べているのである。

    さすがにこのような大意は、解説を目にしなければ図り知ることはできません。
    このように本書は大要をおさえつつ、同時に細かな意味解釈も補ってくれる良書といえると思います。

     ※『洞庭湖』のすべての意味は、ぜひ本書を読んでいただきたいと思います

    本書は春夏秋冬のうち、秋に関連する詩のみが集められています。
    個人的に他の春夏冬も「買い」のシリーズです。

  • 「鹿柴」王維
     空山。しかし、微かに人の気配。微妙で面白い。

    「落歯」韓愈
     36歳でこれだけリアルに老いが来るとは。昔の人は大変。

    「明月」
     アーサー・ウェイリー。阿部仲麻呂の月の歌が中国語から日本語訳されたかもと。

    「峨眉山月の歌」李白
     青春の旅立ち。君を思えども見えず。

    「楓葉芦花」蘇軾
     解説によりはじめて宋詩の技巧的な味わいが分かる。

    「静夜思」李白
     秋ですなあ。井伏鱒二訳もあるとか。

    杜甫が流浪しながら作った詩が多く取り上げられ印象深い。

  • 漢詩入門としては楽しかった。

    気になった点は同じ解説を何度も繰り返していて少しくどいところと、
    所々書き下し文だけで白文がないところ。不満があったので星三つ

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