三つのエコロジー (平凡社ライブラリー)

  • 平凡社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582766516

作品紹介・あらすじ

人間自身がつくりだした、人間と人間を取り巻くあらゆる環境との関係の変化こそが、人間の未来を規定する。それは単に自然環境にとどまる話ではない。自然環境にくわえて社会環境、さらには人間の内面のあり方にかかわる精神環境が、当然のごとくそこに関与してくるはずだ。こうした考えが「三つのエコロジー」の根源にある。エコゾフィーの誕生。環境、社会、精神を統べる新たなエコロジー思想。

感想・レビュー・書評

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  • 開発目標12:つくる責任つかう責任
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99110076

  • ガタリ、実践的な人。エコロジーを考えたときに、精神、社会、自然という、三つのレイヤーを同時に行ったり来たりしながら、考えるべし。ミクロ即メゾ即マクロ。そのベースは、美や倫理をおく。うん、かっこいいかも。主観性、横断性、特異性、言表など、キーワード多い。

  • 中沢新一の紹介

  • シンプルな主張。環境・社会的諸関係・精神(人間的主観性)、三つのエコロジーの作用領域。三つのアーキテクチャ。エコゾフィー。主観性の生産。マスメディアによる抑圧的支配からポストメディア社会へ。実在の領土。試行錯誤(ワーク・イン・プログレス)。

    この惑星における生き方の問題。社会的労働の究極目標の設定が利潤経済と権力関係によって一面的に制御されている。人間活動の価値化の支配的様式(世界市場=富のゲーム、覇権=威のゲーム)に対する問い直し。多極的戦略。特異性の要求。

    一見異質の諸問題をつらぬく、ある同一の倫理ー政治的領域。新しい歴史的文脈のなかにおける人間存在の生産はいかにあるべきか。社会的エコゾフィーは、夫婦や恋人のあちだ、家族のなか、あるいは都市生活や労働の場などにおける人間の存在の仕方を変革したり再創造したりする、特別の実践を発展させるところに成り立つ。人間の主観性の本質にかかわる実在的変化。

    精神分析家の介入の貧困化。患者の特異的他者性を理解しえない型通りの診断。転移の中立性の背後に身を隠す態度は倫理的に支持できない。実践家の責任とアンガージュマンが必要。実践は美的領域にかかわる。

    主観性の個人化は、言表作用の集団的な動的編成。



    『分子革命』
    越境性 ノマディズム
    特異性
    エコゾフィー
    精神分析(とくにラカン派)の資本主義社会の安全弁的機能
    フロイトの「無意識」概念を批判しつつ、その代わりに編み出された「リゾーム」というキーコンセプトと横断性

    主観性、主体性 subjectivité
    主観性の生産:三つの様態が交錯する複合的過程
    - 権力の様態
    - 知の様態
    - 自己創出の様態

    ドゥルーズとの共同作業は前人称(前個人)的で、超人称(超個人)的な主観性の機能をめぐる問題提起

    横断性は集団の無意識的主体の存在する場所であり、その主体をつくりだす客観的諸法則を超えた彼岸にあり、集団の欲望の支柱にほかならない。

    フェリックス・ガタリ、公文俊平、青木昌彦の共通点。

    ノマドとロックンロール。

    ノマド女性に必要なのは「保育」でも「ワークライフバランス」でもなく「乳母」じゃないかな。

  • 訳者である杉村昌昭氏がフェリックスガタリの意図をさぐりながら完成させた最新版。所々理解するには自分が追い付いていないこともあったのでもう一度読み返したい。

    今叫ばれているエコロジーという流行語にながされるのではなく、精神のエコロジー、社会のエコロジー、環境のエコロジーという視点について記している。また以下の文章が印象的だった。

    世界中の飢餓のドラマの背景にある理論的与件に改変がもたらされることは十分考えうるだろう。しかしながら、それ以前に、現状のままで、たとえば今日ほどこされているような国際援助が、やがて問題の解決にいたりつくなどと考えるのはまったくの妄想であろう。それで片のつくような問題は何ひとつないといわねばなるまい!長期にわたってつくり上げられてきた貧困と飢餓と死の膨大な地帯は、すでに、統合された世界資本主義の奇っ怪な「刺激」システムの一部をなしているように思われる。ともあれ、香港、台湾、あるいは韓国といったような、搾取の重層化の発生源たる新興工業大国の登場は、この世界資本主義に組み込まれた膨大な貧窮地帯に依拠しているのだということは私的しておかねばならない・・・(ガタリ:三つのエコロジー14pより)

    ガタリの言うことも興味深いが、最後に訳者の杉村氏の見解も非常に参考になった。

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著者プロフィール

Felix Guattari
1930年生まれ。フランスの精神分析家、哲学者。日本語訳された著書に『分子革命』『精神分析と横断性』『機械状無意識』『精神と記号』(以上、法政大学出版局)、『三つのエコロジー』(平凡社)、『闘走機械』(松籟社)、『分裂分析的地図作成法』(紀伊國屋書店)、『カオスモーズ』(河出書房新社)、『カフカの夢分析』『精神病院と社会のはざまで』(以上、水声社)、『アンチ・オイディプス草稿』『リトルネロ』(以上、みすず書房)、『人はなぜ記号に従属するのか』『エコゾフィーとは何か』(以上、青土社)、ドゥルーズとの共著に『カフカ』『政治と精神分析』(以上、法政大学出版局)、『アンチ・オイディプス』『千のプラトー』『哲学とは何か』(以上、河出書房新社)、ネグリとの共著に『自由の新たな空間』(世界書院)などがある。1992年没。

「2021年 『ミクロ政治学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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