会社はこれからどうなるのか (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社
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レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582766776

作品紹介・あらすじ

日本は産業資本主義からポスト産業資本主義への大転換期にさしかかっている。ところが、今の日本の「会社」は、それにうまく対応できていない。日本が21世紀を生き抜くためには、個々の「会社」の仕組みを洗い直し、新しい資本主義にふさわしい形にしていかなければならない。

感想・レビュー・書評

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  • 読了2012/02/23

    【まとめ】
    Ⅰ、不思議な存在としての会社 
     近代市民社会のもとにおける法人としての会社には、株主に所有される「モノ」としての側面と会社資産を保有する「ヒト」としての側面がある。会社の形態を巡る争いは、両者のうちどちらに重きをおくかという立ち位置の問題であった。コーポレートガバナンスはこの両義的な立ち位置を巡る争いから生じている。
     法人は会社を契約主体とするものであり、法人制度は契約関係を安定化させるためのものとして生まれた。ここで、法人は観念的なものであるため、実際の運営には手足となって働く専門的な経営陣が必要とされる。しかしながら、法人の代表として彼らが結ぶ契約は、得てして自己契約になる恐れがある。これを防ぐために、(信任義務など)法律上、経営者には信認受託者としての一定の倫理性が課せられている。経営と所有を近づけようと言うアメリカ型のコーポレートガバナンスは、所有と経営の一体化した古典的企業のガバナンスと株式会社のそれを同視する理論的誤謬であり、この倫理性を解放したため必然的に失敗する。

    Ⅱ、おカネの支配力の低下 
     ポスト産業資本主義においておカネの支配力は低下する。ポスト資本主義においても、差異性から利潤を獲得する資本主義の本質は変化しない。しかし、ポスト産業資本主義の時代は、「情報の商品化」など、差異性を意図的に創出し続けることが必要とされ、重厚長大な設備投資を行い労働生産性を高める産業資本主義とは異なる。そこでは従業員が築く人的資産の重要性が高まる。それはインセンティブによって引き出せても、おカネで買うことは出来ない。このことから、おカネとヒトの重要性が後者に傾き、株主主権論が主流化することはない。会社に求められるのは、従業員たちが、組織特殊的な人的資産を共同で築けるような心地よい環境である。株主からの支配(ホールドアップ)を拒み、長期的関係から従業員間の信頼を維持することが会社にとって重要となる。

    【感想】
     インタビュー形式だったためか、やや冗長な印象で2/3ぐらいにまとめられる感じがした。
     基本的に、『モノとしての会社≒株主主権論≒欧米型コーポレートガバナンス≒法人名目説』に『「ヒト」としての会社≒法人実在説≒筆者のコーポレートガバナンス』を対置し、前者が企業と会社の混同から生じた理論的誤謬で、日本とは馴染みにくく、実際失敗しているかを示し、後者が倫理性の点で勝っており、ポスト産業資本主義に相応しいものかを説くものとなっている。
     日本的経営はポスト産業資本主義に必要とされる組織特殊的な人的資産を育む制度として優れた面が合った。しかしそれは高度に産業資本主義的な会社として適応しすぎており、ポスト産業資本主義に相応しい形にはなっていないという主張には既視感ならぬ既聴感がある。戦前の軍隊よろしく日本の「家」制度的な官僚制度なのだなあと変に納得してしまった。
     山本七平はかつて、日本の「家族的組織」について、家族は目的を持たずその存続のために機能することが望まれ、そのために、目的のために正当化は必要とされず、自身の存続のための調和が必要である。組織が目的に対応して正当化出来ている間は、家族内部の調和によって最大の力を発揮する。その一方で、目的から自己正当化できなくなっても家族的調和の原則は存続してしまうから、目的に対応出来ないまま存続し続ける。との旨を述べたが、もし筆者の言うようにポスト産業資本主義では、会社の新陳代謝が高まり、寿命は短くなるとすれば、どのようにして生存のみを組織の目的とする「家族的組織」の新陳代謝を高めうるのだろうか?短期的に痛みを伴う大改革か、現在ある仕組みからのモデルチェンジか?
     山本氏は、この問いについて、日本人の日常性という規範が変化しない限り、つまり日本人が日本人である限り根本的に解決は出来ないとする。よって、考えるべき問題は、家族的組織が植物組織化(植物状態化)した際に、いかに倒産させ、遺産を継承しながら、いかにその構成員を別の組織に調和的吸収し、新しい組織的家族に相続させるかである。今要請されるのは、新しい事態へ対処するために自己の伝統、すなわち通常性の規範に基づいて、もっとも少ない混乱による社会改革の方法論を考えることである、と『なぜ日本は変われないのか』で述べている。「停滞」への焦りから、「欧米仕込み」の改革に飛びつくことだけは辞めてもらいたい。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00406097

    【 電子書籍版 】
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00605271

    知ってるつもりだった会社の意外な仕組みや歴史が、面白いように分かってきます。次々に謎が解けていく様は、まるで推理小説のよう! 読後にはジワリと希望がわいてきます。 (出版社HPより)

  • 事業部ブログ参照 YH

  • 会社について、歴史的にも、構造的にも、説明している。「株式会社無責任論」をベースに、その株式会社に在籍している者の一人として、もっと思い切った施策をやるべきだと、提言してきたつもりだが、その根拠となる点が整理できた。

    ヒトとしての会社の復活、文化的には、日本人が、取りいれやすいのではないか。というのは、目から鱗。

    それにしても、この本のアイデアが、エンロン破綻事件の前に温められていたというのは、著者の時代の先を読み通す力のあらわれで、すごいこと。

  • 「利益は差異性からしか生まれない」、「ポスト産業資本主義社会では新たな差異性を次々と創り出して行かなければ生き残れない」という言葉に暗澹たる気持ちになる。本当に創造性のない人間にとって生きづらい時代だと思う。そして不毛だ。

    この本を読んで、
    差異性とは具体的にどんなものだろうか?各企業はどのような差異性により利益を上げているのか?
    なくならない差異性、なくなりやすい差異性は何だろうか?
    差異性により利益を得るこの社会は、公平な社会へと向かっているのだろうか?それとも差異(格差)の維持を目論んでいるのだろうか?
    もっとよい社会の仕組みはないのだろうか?
    …etc というようなことが脳裏に浮かんだので、もう少し考えたり本を読んだりしたいと思う。

    読みやすく、それなりに刺激的で、適度に学術的なバックボーンの存在も感じられるということで、経済学関係の最初の読み物として非常に読後の満足感は高かった。

  • 読みやすかった。大学一年生にはこの本を必修にしてほしい。今でも読む価値は十分にある。タイトルはタイトルとして、テーマは時勢により古くなるものではない。しかし展望については岩井先生少し甘かったのでは(というか歴史は繰り返されると言ってもグローバル経済と日本政府クソすぎない?)と思う。あるいは大企業正社員男子みたいなクラスを主に想定しているのかなぁ、そんなこともないはずだけど。面白く勉強にはなったけど自分の展望にどう役立てるかはちょっと…時間ができばまとめてから感想を書きたい。

  • とても示唆に富む一冊。

    会社とは法人である。すなわち、人であり、モノであるという二面性を持っている。株主主権のイメージが強すぎるのは、「会社=モノ」の側面が強く出すぎている。実際には、株主が所有する「モノとしての会社」は、株主に指名され、「モノとしての会社」から委任された経営者が運営している。そこには、「人としての会社」という忘れてはならない側面がある。

    会社が稼ぐためには、他社との差異化が必要。そのために必要なものが、「設備・資産」⇒「アイデア」に変わってきている。そのため、「アイデア」や「イノベーション」の重要性が大きくなる。そして、それらに向かって、金が動き回る。将来的には、規模/範囲の経済を活かした非常に少数のグローバル企業と、非常に多数かつ小規模でアイデアを継続的に生み出せる企業に二分化されていく。

    会社で働く人たちにとって必要なことも変わってくる。長く働くことを前提にした「組織特殊的な能力」の重要性が下がり、「汎用的(ポータブル)な能力」の必要性が高まる。両者のバランスするポイントが変わってくる。

  • 小林秀雄賞
    著者:岩井克人(1947-、渋谷区、経済学)

  • そもそも会社とはどのように誕生したのか、法人とは法律的にどのようなものであるのか、ありうるのかを考察し、これからの日本の会社と資本主義の形について考えます。

    各章、感動しましたが(ふわっとしたイメージに形が与えられる感じです)、特に第四章の「法人論争と日本型資本主義」に衝撃を受けました。世間で当たり前のように運用されている「法人」という概念が、現代においても「名目的なものであるか」「実在するのか」という形而上学的な議論の争点になっているのが驚きでした。法人のあり方について多様な解釈があるからこそ、日本的な会社、米国的な会社がどちらも存在しうるのだ(どっちが正しいということはなく)ということが理解できます。

  • 【目次】
    目次 [005-014]
    平凡社ライブラリー版へのあまえがき(二〇〇九年八月一二日 岩井克人) [015-021]
    はじめに [022-031]

    第一章 なぜいま、日本の会社はリストラをするのか 033
    「リストラ」と「クビ切り」 033
    日本経済の「失われた一○+α年」 034
    バブルの崩壊と景気の低迷 036
    リストラの三つの構造的要因 043
    グローバル化 045
    IT革命 049
    戦後日本の金融の仕組み 054
    金融革命 056
    バブルが起こった本当の理由 059
    金融革命とリストラとの逆説的な関係 063
    日本経済の特徴は、会社のあり方にある 065

    第二章 会社という不思議な存在 069
    ヒトとモノ 069
    企業と会社 072
    法人とは何か 077
    株式とは何か 080
    日本語の株式について 083
    株式会社の基本構造 085
    法人の存在理由 088
    法人の歴史的起源 093
    株式会社の公共性 097

    第三章 会社の仕組み 101
    株主の有限責任制 101
    企業の経営者 104
    会社の経営者 106
    信任について 111
    コーポレート・ガバナンスと信任義務 114
    株式オプションとアメリカ型コーポレート・ガバナンス 120
    エンロン事件とアメリカ型コーポレート・ガバナンスの破綻 123
    コーポレート・ガバナンスの実際(一)株主代表訴訟 128
    コーポレート・ガバナンスの実際(二)取締役会と監査役 130
    コーポレート・ガバナンスの実際(三)株式市場・メインバンク・従業員・官庁 134
    会社の種類 138
    従業員は、会社の外部の存在である 140

    第四章 法人論争と日本型資本主義 143
    日本の会社の特殊性と普遍性 143
    法人名目説と法人実在説 146
    会社を純粋にモノにする方法 151
    会社乗っ取りの仕組承 155
    持ち株会社 161
    ピラミッド型支配構造と財閥 164
    会社を純粋にヒトにする方法 169
    株式の持ち合いと日本型会社システム 175

    第五章 日本型資本主義とサラリーマン 179
    会社を背負って立つ日本のサラリーマン 179
    組織特殊的な人的資産について 182
    組織特殊的な人的投資をする日本のサラリーマン 187
    古典的企業と「ホールド・アップ」問題 189
    ヒトとしての会社が「ホールド・アップ問題」を解決する 193
    サラリーマンの「会社人間」としての貢献度 194
    所有と経営の分離のベネフィットとコスト 197

    第六章 日本型資本主義の起源 201
    日本の会社はどうして日本型の会社となったか 201
    第二次大戦と統制経済 202
    経済民主化と財閥解体 206
    財閥における総有制と経営の自律性 208
    「家」制度と法人 210
    終身雇用制 216
    年功賃金制度 219
    日本的雇用システムの原型 221
    澁澤榮一と会社制度 223
    近代における日本的雇用システムの系譜 225
    会社別組合の系譜 228

    第七章 資本主義とは何か 233
    資本主義とは何か 233
    商業資本主義、産業資本主義、ポスト産業資本主義 234
    IT革命、グローバル化、金融革命 239
    金融革命とおカネの力 246
    日本における産業資本主義からポスト産業資本主義への移行 247
    アメリカのポスト産業資本主義は六○年代から始まっている 251
    後期産業資本主義と組織特殊的人的資本 254

    第八章 デ・ファクト・スタンダードとコア・コンピタンス 261
    二一世紀における会社組織 261
    ポスト産業資本主義におけるモノや情報や金融の標準化 263
    オープン・アーキテクト化「にする」ことと「である」こと 268
    大きくなることと小さくなること 273
    大きくなることの利益 275
    デ・ファクト・スタンダード 279
    ゲイリー・キルドールとビル・ゲイツ 281
    コア・コンピタンス 286
    小さくなることの利益 288
    コア・コンピタンスと企業ネットワーク 292

    第九章 ポスト産業資本主義における会社のあり方 297
    二一世紀は株主主権の時代か? 297
    有形資産から知識資産へ  300
    おカネとヒト 303
    「サーチ&サーチ」社対サーチ&サーチ 305
    株主主権論の敗北 309
    古典的企業の復活 311
    シリコン・ヴァレー・モデル 313
    知的財産権について 318
    ポスト産業資本主義における企業の存在理由 320
    黄金の手錠をかけること 323
    個性的な企業文化を築くこと 324
    ポスト産業資本主義時代における法人化の意義 329
    ポスト産業資本主義的企業における組織デザイン 333
    従業員株式オプション制度について 337
    日本的経営のパラドックス 340
    NPOについて 342

    第十章 会社で働くということ 351
    起業家の条件 351
    ポスト産業資本主義において会社で働くということ 354
    会社の新陳代謝と起業意欲 360

    あとがき(二〇〇三年一月二五日 岩井克人) [365-369]
    平凡社ライブラリー版へのあとがき(二〇〇九年八月一二日 岩井克人) [370-373]

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著者プロフィール

岩井 克人(イワイ カツヒト)
国際基督教大学特別招聘教授
1947年生まれ。東京大学経済学部卒業。マサチューセッツ工科大学よりPh.D.取得。エール大学助教授、ペンシルベニア大学客員教授、プリンストン大学客員准教授、東京大学経済学部教授等を経て、現在、国際基督教大学特別招聘教授。主な著書に『不均衡動学の理論』(岩波書店)、『経済学の宇宙』(日本経済新聞出版社)など。

「2019年 『資本主義と倫理 分断社会をこえて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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