批判的想像力のために: グローバル化時代の日本 (平凡社ライブラリー)

  • 平凡社
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本棚登録 : 75
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582767810

作品紹介・あらすじ

「歴史教科書論争」と「歴史主体論争」に介入し、この問題が、グローバリゼーションのなかで世界的に現出している状況の一類型にほかならないことを、鮮やかに示した現状診断。危機に瀕した批判的想像力を活性化させ、歴史を修正し、閉じた「われわれ」を立ち上げる欲望-虚無的ナショナリズムに抗すべく、粘り強くかさねられた思考。その思考と認識がいま、切実度を増して呼びかける。

感想・レビュー・書評

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  • 著者はイギリス生まれでオーストラリアに住み、配偶者が日本人で、日本経済・社会について研究している人らしい。このため、外部からの視線を維持した日本社会論になっており、他国との比較の点で公平さを持っているように見える。
    「東アジアにおける歴史をめぐる戦い」の章においては、私にとってもかねがね憎むべき右翼イデオローグで、日本国民の右傾化に多大に作用した「新しい歴史教科書を作る会」が吟味され、徹底的に批判されている。彼らの作った歴史教科書は、結局公正な視点を欠き、欠点だらけの愚劣なシロモノにすぎない。
    しかしそこから頭角をあらわした西尾幹二だの小林よしのりだの、ロクでもない偏屈な右翼の人脈は、石原慎太郎や橋下徹だのといった現在の低レベルなイデオローグに続いている。こうした稚拙な流れは、なぜか国民の人気を得て、確かに「古いナショナリズム」への退行をかたちづくっているようだ。マイノリティである私にはとうてい理解できないことだが、日本国民はもうすぐ中国との戦争を望むようになるのだろう。
    本書では、ナショナリズムを世界的な現象としてとらえられており、それは経済的グローバル化の進展と平行して生起しているという。
    私はレヴィ=ストロース的な意味で「多文化主義」を支持してきたが、この本の中では素朴な多文化主義にも疑義が呈されている。
    ジョエル・バーバールという人が、「文化」という概念がそもそも混成を語っており、多文化主義なる語句自体が重複しているというのだ。
    しかし「国民国家」や民族主義が偏狭で排他的に横行している状況では、多文化主義政策は倫理的に意味をもちうるだろう。
    北海道のアイヌはすでに倭人=ヤマトンチュと混血を繰り返しているし、アイヌの血の濃そうな人々も、「ふつう」の服を着て、「ふつう」に生活している。民族衣装や伝承的な踊りは、観光客相手か、文化保護の観点で行われるイベントでしか登場しない。
    アイヌにアイデンティティを置く人々は、好きなようにしたらいいし、そうしたければ伝統の民族衣装を着て街を歩くのもかまわないと思う。それを阻害したり迫害したりするような制度や風潮があるならば、多文化主義政策が必要になるだろうし、「日本国民」に根深い島国的な同胞主義をもっと寛容なものに変えるべく運動しなければならないだろう(「ガイジン」に対しても不寛容すぎる!)。
    「文化」という概念もまた「幻想」ではあるが、幻想はそれが口にされる場においては実在となる。
    政治的・社会的な問題というのは難しい。この本はもっといろんなことを考えなければいけないことを教えてくれた。

  • 『批判的想像力のために――グローバル化時代の日本』
    著者:テッサ・モーリス=スズキ

    【版元】
    出版年月 2002/05
    ISBN 9784582702354
    Cコード・NDCコード 0031 NDC 311.3
    判型・ページ数 4-6 280ページ
    在庫 品切れ・重版未定

    グローバル化の波の中で翻弄される現代の日本に、本当に必要なのはオルタナティヴなヴィジョンを描く批判的な想像力ではないだろうか。グローバルな視点からの現代日本への分析と提言。
    http://www.heibonsha.co.jp/book/b159894.html

    【簡易目次】
    目次
    I 誰が語るのか――著者へのインタヴュー 

    II 開かれた日本のために 
      批判的想像力の危機 
      東アジアにおける歴史をめぐる戦い――「歴史への真摯さ」をめぐる考察 
      不穏な墓標/「悼み」の政治学と「対抗」記念碑――加藤典洋『敗戦後論』を読む 
      新たな市場に出荷された古い偏見――オーストラリアから見えてくる石原現象の素性 
      無害な君主政として天皇制は生き延びられるか――英国君主制との比較から 
      現代日本における移民と市民権――「コスメティック・マルチカルチュラリズム」を克服するために 

    III グローバリゼーションとデモクラシー 
      平和への準備のために――原理主義と多元主義との衝突 
      グローバルな記憶・ナショナルな記述 
      文化・多様性・デモクラシー――「内なる多文化主義」とデモクラシーの新たな可能性 

    あとがきに代えて――越境的対話のフォーラムをめざして 

  • 莫迦な考えに乗せられないようにするためには、想像力を養わなきゃ!

    平凡社のPR
    「「歴史教科書問題」や『敗戦後論』論争に介入しつつ、虚無的ナショナリズムとネオリベの共犯状況に対抗する理路を切り拓いた論考。10年後の今、一層切実な発言となって甦る。解説=岩崎稔」

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著者プロフィール

テッサ・モーリス=スズキ(Tessa Morris-Suzuki)
1951年イギリス生まれ。英ブリストル大学卒業、バース大学大学院博士号取得。現在オーストラリア国立大学教授。専攻は日本経済史、日本思想史。
著書に『日本の経済思想』『自由を耐え忍ぶ』『過去は死なない』『愛国心を考える』(以上、岩波書店)、『辺境から眺める』(みすず書房)、『批判的想像力のために』(平凡社)、『北朝鮮へのエクソダス』(朝日新聞社)、『北朝鮮で考えたこと』(集英社)、『レイシズム・スタディーズ序説』(共著、以文社)ほか多数。
2013年第24回福岡アジア文化賞、学術研究賞を受賞。

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