菊と刀 (平凡社ライブラリー)

  • 平凡社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (455ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582767933

感想・レビュー・書評

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  • 戦前・戦争直後の日本の文化、日本人の考え方や人との関わり方など、日本人以上に理解したものと思われる。
    菊と刀という相反するものを愛でたり、尊厳・尊皇、階級序列、義務、恩と礼、責任、義理、プライド、徳、鍛錬、教育など、外国人には理解し難い考え方を分析。
    いかに犠牲を少なく戦争を終結させるために、日本人というものを理解することが重要となり研究されたことからとは驚き。
    とはいえ、今の日本に失いつつあるものばかりの気もして、どれだけ共感を得られるのだろうか。
    16冊目読了。

  • 評価が難しい本。本書でまず目につくのは、巻末に附された厖大な量の註である。これは、著者が丹念に取材にあたった証左ではなく、むしろその逆で、事実の誤認などがかなり多いために訳註を増やさざるをえないのだ。まずこの時点で、高い評価をためらってしまう。当時日本論がほとんど世に出ていないことや、取材時は戦時下で、情報を容易に得ることができないという背景は理解しているものの、それでも日本人からすれば常識的な部分にまであまりにも誤りが多く、積極的に肯定する気にはなれない。それを差し引いても、内容もはたして妥当なのかどうか。いわんとしていることはたしかにわかるのだが、どうにも腑に落ちない部分も多多ある。時代背景が違うため理解することが難しいということもあるのだろうけど、ちょっと偏見が過ぎる印象ももった。ただ、今日でもたとえば「空気」を重んじたりするようなところなどはよくいわれることであるが、そういった記述にかんしてはよく理解できるし、そのほかの部分と比較・対象すれば、その的確さにはむしろ舌を巻くばかりである。現代でもなかなかこういう民族論はかけないのではないかとも思う。なにより、戦時中日本に対してこういう見方があったのだということは非常に興味深い。正確性については疑問符はつくけれど、それはそれとして、この時代の日本人論として白眉であることは間違いないと思う。

  • 久しぶりに読書読了。
    『菊と刀』、戦争中にアメリカが日本軍や日本人の行動を理解する為に、ルースベネディクトが分析しその後出版された、アメリカ人目線の日本人論として有名な本。

    感想としては「とても面白いし有益」「しかし、内容は簡単なのに、読むのは大変だった」。

    読むのが大変だった理由を推測
    ・学者が書いている本は他にも読んだが、話がまわりくどい。ゆえに本の要約(内容は同じです)を読んだ方がわかりやすい事がある。
    ・日本人が「空気のようにあたりまえ」と考えている文化の概念は、アメリカ人からすれば宇宙人の思考のようなもの。それを翻訳する必要があるので、アメリカ人に理解できる概念に例えて置き換えている。そしてその文章をさらに「再翻訳」して日本語にしているので、わかりづらい。
    ・内容には関係ない枝葉末節の部分だが、細かい間違いが非常に多い(それを訳者が注釈で解説しているため、膨大)。

    とても面白かった点
    ・我々日本人自身が気づけない、日本人の考え方を知ることができる。
    ・忠臣蔵等、日本人に人気の物語の解説の部分は、戦後の日本映画を理解することにも繋がる。『七人の侍』や『ゴジラ』がなぜああいう話なのか?
    ・日本人が苦手なことの解説の部分は、ビジネス書や自己啓発本としても読むことができる。スポーツでよく言われる「ゾーン」の先取りではないかというような話も出てくる。

    教科書や入試にもよく引用されていた本なので、基礎教養として読んでみてはいかがでしょうか。平凡社版は翻訳が新しいが、他社とは比較してないので読みやすさに違いがあるかは不明。
    私は元々遅読だが、ここまで読むのが大変なことは久々でした。疲れたので次はもう少しエンタメ的・エキサイティングな本を読みます。

    • darkavengersさん
      GMNTさん こんにちは。

      「菊と刀」はタイトルだけは知っているのですが、読んだ事が読んだ事がありません。
      どうも、学者の書いた本と...
      GMNTさん こんにちは。

      「菊と刀」はタイトルだけは知っているのですが、読んだ事が読んだ事がありません。
      どうも、学者の書いた本というのは苦手な分野でして....

      次は「エンタメ的・エキサイティングな本」を読まれるという事ならば、「必殺仕置人大全」はいかがでしょう?
      先に発売された「必殺シリーズ秘史」がきっかけで又盛り上がってきた必殺シリーズですが、こういう本が出る事はファンとしては本当に嬉しい事です。
      是非、GMNTさんにも読んでもらいたいです。
      2023/12/17
    • GMNTさん
      darkavengersさん、お薦めありがとうございます。高鳥都さんのあのシリーズ、必殺ファン界隈で大好評で盛り上がってますね!(因みに1作...
      darkavengersさん、お薦めありがとうございます。高鳥都さんのあのシリーズ、必殺ファン界隈で大好評で盛り上がってますね!(因みに1作目はdarkavengersさんが登録されていたので知りました)
      私も読みたいんですが、買うと本を増やしてしまうのが嫌でどうしようかなと迷っています。図書館に入れてもらおうかな。

      『菊と刀』は、内容は面白いのに語り口があまり面白くないのでレビューを書く事や他人にお薦めはしづらいですね〜。私はこういう本に興味関心が高いので読みましたけども。
      2023/12/18
  • 2017/1/27読了。
    読み始めてすぐに、アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインの1959年の作品『宇宙の戦士』を思い出した。惑星クレンダツウに住むクモの形をした異星人との宇宙戦争を描いたSFだ。敵星人の生態や社会制度の分析描写に結構な分量が割かれていて、クライマックスではその研究用に敵の王族階級を捕獲するという軍事作戦が描かれていた。敵の戦力や兵器ではなく、そういう部分に向けられる戦争の眼差しというものが興味深かった。同じ眼差しが本書にもある。『宇宙の戦士』と本書とでは政治的なスタンスが右と左に何万光年かの距離で離れているけれども、その両方に得体の知れない相手と戦争をする際のアメリカ合衆国の眼差しが見えるのが面白い。
    アメリカはその後も現在に至るまでその種の戦争を続けながらも、結構な確率で勘違いを繰り返しているようなので(最近は特にひどい)、その眼差しが実際のところいったいどの程度まで当てになるものだったのかという疑問はある。だがともかく、戦争と占領統治のためにこういう形で敵を知ろうとする流儀があったと知るには本書は好適な本ではある。
    だからというわけではないが、21世紀の日本人が今現在の自分の価値観や自民族観に照らして、これは日本人論として正しいとか間違っているとか、そういう観点で読むのは非常に難しい本だろうと思う。
    この種の困難は、僕がいわゆる「西洋人が見た昔の日本」テーマの本を読むときには多かれ少なかれ必ず感じてきたものだ。イザベラ・バードの紀行文や渡辺京一の『逝きし世の面影』などを読んだときに感じたのは、21世紀の日本人である僕の民族的なアイデンティティの内側には、分析される側の日本人の価値観と、分析する側の西欧近代の白人主観の両方がすでに混在してしまっているということだ。読んでいる間の自分の価値観の立脚点が目まぐるしく変わるので混乱するのだ(実はその眩惑感が楽しいのだが)。
    本書の場合には、もう一つ厄介な要素が加わって、さらに混乱と眩惑が深くなる。それは、本書が戦前戦中の日本について書かれ、その理解が戦後の占領統治において使われ、戦後の日本人にも広く読まれた本である、ということによる。
    これが何を意味するかというと、本書自身が「戦後の日本人」と「戦後の日本人が考える伝統的な日本人」を形成する上で大きな役割を果たしたであろうということだ。本書を携えたアメリカ人と本書を読んだ日本人が、あるいは本書を直接は読まずとも本書によって言語化された概念に触れた人々、本書の二次創作みたいな本を読んだ人々、そういう本を書いた人々が、賛否を問わず、また意識的と無意識的とを問わず、練りに練って作り上げた日本人像というものがある。それが戦後から現在にいたる社会を構成する人々の民族的自画像の基本フォーマットになっているはずなのだ。僕は彼らに育てられた。
    そんな僕が自分の中の「日本人的アイデンティティ」だと思っている部分を意識しながら本書を読んだところで、それ自体が本書自身のかつてのアメリカ的なリベラルな価値観による外部照射の影響の産物なのだとしたら、いったい僕は本書をどう読んだらいいのだろうか。どうしたって同一文脈内での循環参照みたいなことになるのではないか。とてもじゃないが、本書の考察を上から目線で当たっているだの外れているだの言いながら読むことなど、できたものではない。
    余談だが、日本を取り戻すとか言ってる人々が語る「日本」が、厳密に言うと実は伝統的な日本でも日本人でもなく、本書が考察対象とする時代に限られた特殊な像の劣化コピーに過ぎないように見えるのは、彼らがこの構造に無自覚なせいではないか、とも思う。

    と、ここまでメタに自覚しておくことで、ようやく本書を当たっているとか外れているとか言いながら心おきなく娯楽読み物として楽しむことが可能となる。
    楽しい読書だった。日本人あるある話として読んでもいいし、言われてみればなるほど話として読んでもいいし、さすがにこいつは……的なところは『ニンジャスレイヤー』だと思って読んでもいい。
    失われた日本人の姿が封じ込められたタイムカプセルとして読んでもいいし、タイムカプセルの中に入っているのは失われたアメリカ合衆国民の価値観だと思って読むのも一興だ。もちろんどこにも存在しない異世界を舞台とするファンタジー小説を書こうとする際に設定のヒントとして使うのも自由だし、使い出がありそうだ。
    これくらいの読み方で、紙面に直接は書かれていないエッセンスを把握するのが、本書を今の日本人が日本人論として読む際のちょうどいいスタンスなのではないかと思う。そう思って読めば、確かにこれは古典と呼ばれるだけの炯眼を備えた本である。
    それからまた余談になるが、傍目からこんな風に見えたメンタリティの持ち主たちが生きていた頃の社会制度が仮に復活したとして、果たしてその社会で僕たちあなたたちは本当に生きていけるのか? と頭の中でシミュレーションしながら読むことだってできる。本書の分析通りの日本人なら、きっかけ次第で一年経たずに見事に順応するんじゃないかという気がしてくるのが、本書の怖いところだ。

  • ひたすら小石を一つ一つ並べ、指で示しながら説明していくかのような展開。終盤になっても特に明示されるものはないけれど、ふと「ああ、こういうことだったの……か?」と思わされる感じ。

    突っ込みどころも多いし、戦中戦後に絞ったとしても日本精神文化を知るにはもっといい本がありそうな気がする。
    一方で、自分や周囲の人の不可思議な反応に納得のいく理由付けができるようになったし、他の選択肢なんてないという「思い込み」にいくつか気づけたので、有意義な本でした。

    それにしてもタイトルの「菊」は天皇か天皇制のことだと思ってたんだけど、もしかして日本人の好む代表的な花という意味に過ぎないのだろうか…それなら桜の方が良かったのでは……いやまあでも当時なら菊に固執しているようにも見えたか……?
    というタイトルに対するモヤモヤ感が、この本全体の印象を象徴しているのかもしれない。

  • アメリカとの比較が面白かった。恥の文化と罪の文化。義理と愛。睡眠と食べ物について。人生の自由線がアメリカとは正反対であること。日本人の二面性について。斜め読み箇所も多かったが、目を通して良かったと思えた一冊だった。

  • 菊と刀は日本人の持っている従順さとその反面の凶暴さを表している。

  • 約40年前の古典。今の20代たちが見れば、祖父母、父親、母親がどういう日本人であったかがわかるでしょう。
    特に子どもの育て方、祖先に対する考えなどわかりやすいと思います。

  • 戦後日本の占領統治を効果的なものとするため、日本の土地を踏むことなく文化研究学者ルース・ベネディクトがまとめた日本人論。脚注において誤りも多数あるが、日本人の精神構造をアメリカ人と比較しながら論述することで、特徴的に描き出している。ほとんどが今でも有効なものではないか。
    日本人は社会の中で自分に与えられた役割「其ノ所」を得てその役割を失わないよう努力する。相手に対する責務は契約関係に基づく「義務」よりはるかに広く概念的な「義理」であり、その義理を目立たぬ形で果たすことが美しいとされる。競争的に自分の貢献をアピールすることは相手の「其ノ所」を犯し恥をかかせることとなり、社会的に許容されない。日本人にとっては恥をかかされた場合、相手に見えない形での報復、相手への暴力を自分に転嫁した形での自殺により名誉回復をすることが義務とされていることから、見える形での競争を避け、相手に恥をかかせないことが重要である。そのため、事前の根回しや見合いにおける仲介人が本人を介することなく事前のお断りをすることにより、公衆の目に触れることなく社会的地位の調整がなされる。
    天皇に対しては無条件の「恩」があり忠誠を誓う。これに対して一般から受けた「恩」に対しては、恩返しをしなくてはならず、なにか恩返しをしても相手からの恩は簡単につきるものではない。(これだけのことでは頂いた恩への返しは)すみません。返せないことが申し訳ないし、感謝していることを忝ないといって表現している。
    日本人は自らの生き様を「刀」になぞらえており、自らの義理を果たしたいないことから生ずる恥「身から出た錆」を注ぐことは自己責任上重要な課題とされている。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/678220

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著者プロフィール

Ruth Benedict 1887―1948。アメリカの文化人類学者。ニューヨークに生まれ、コロンビア大学大学院でフランツ・ボアズに師事し、第二次世界大戦中は、合衆国政府の戦時情報局に勤務し、日本文化についての研究を深める。晩年にコロンビア大学の正教授に任じられる。主な著書に、『文化の型』『菊と刀―日本文化の型』など。


「2020年 『レイシズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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