- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582768534
感想・レビュー・書評
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「はっきりしないピンクの大きな綿菓子のようなかたまりの、いったいどこがいいんだろう。春の花なら、椿や牡丹や薔薇のほうがずっときれいなのに、と私は思っていた。」(p.12)に我が意を得たりと嬉しくなって読み始めたら、思っていたより真面目な桜を巡る思想または想念を辿る歴史エッセイだった。
歌人は過去の歌やその作者のことを、歴史も含めてよく研究するものなんだな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者:水原紫苑(1959-) 歌人。
底本:『桜は本当に美しいのか――欲望が生んだ文化装置』平凡社新書(2014年)
【書誌情報+内容紹介】
価格:1,300円+税
出版年月日:2017/03/10
ISBN:9784582768534
版型:B6変 288ページ 在庫あり
桜を美しいと感じるのは自然の情緒なのか、そのように刷り込まれただけではないのか。記紀や万葉集から最近の桜ソングまで、誰も触れえなかった問い=タブーに歌人が果敢に挑む。
<http://www.heibonsha.co.jp/smp/book/b279898.html>
【メモ】
・簡単に紹介する記事
https://ddnavi.com/news/367066/a/
【目次】
底本の情報 [004]
目次 [005-009]
凡例 [010]
まえがき 011
桜への疑問/短歌と桜との出会い/桜の素顔
第一章 初めに桜と呼びし人はや 017
桜という言葉/木花之佐久夜毘賣と桜/非時の桜の詩想/最初の桜の歌
第二章 『万葉集』と桜の原型 025
過渡期としての『万葉集』/大伴家持の桜の歌
第三章 『古今集』と桜の創造 035
仮名序のわかりにくさあるいは詐術/桜の呪力の導入/王権による美意識の統御/桜文化体制の開始/桜の世俗化/散る桜の美の準備/美意識の転倒と桜の哲学/小町と貫之の「花」の歌/共通通貨としての桜
第四章 『枕草子』と人間に奉仕する桜 080
貴公子と桜/桜の造花のひそかな悲しみ
第五章 『源氏物語』と桜が隠蔽するもの 089
桜の精紫の上/至高の花/桜の復讐/桜と至高の花がひとつになる時
第六章 和泉式部と桜への呪詛 104
梅の精和泉式部/心の梅の香
第七章 『新古今集』と桜の変容 109
『新古今集』という運命/桜かざして今日もくらしつ/極北へ
第八章 西行と桜の実存 123
西行のあとに生まれて/花狂い/「魂」から「心」へ/「自己」の発見
第九章 定家と桜の解体 143
梅のコレスポンダンス/異形の桜の歌/西行と定家
第十章 世阿弥と桜の禁忌 157
世阿弥の桜の能の不思議/鍵を握る『泰山府君』/『桜川』と母の官能/未完の芸術家忠度/『西行桜』の世界観
第十一章 芭蕉と桜の記憶 173
記憶の時間/絶対的現在
第十二章 『忠臣蔵』と桜の虚実 182
本文に存在する桜/本文に存在しない桜
第十三章 『積恋雪関扉』と桜の多重性 190
一人の女形が踊る小町姫と傾城墨染/小町と宗貞の恋/大伴黒主と墨染桜の精の戦い/小町にすべてを奪われた墨染
第十四章 『桜姫東文章』と桜の流転 196
散らない桜姫/輪廻転生/桜姫の刺青/運命の男はいない/風鈴お姫の独り寝/消去される桜の過去
第十五章 『春雨物語』と桜の操 205
宮木という女/生田の桜/淪落と入水
第十六章 宣長と桜への片恋 211
小林秀雄の恫喝/片恋の記録/「やまと心」の歌と上田秋成
第十七章 近代文学と桜の寂莫 226
『櫻心中』の面目/藤尾を殺す浅葱桜/『細雪』の月並みな桜/『山の音』の病んだ桜/小夜嵐の哀しさ
第十八章 近現代の桜の短歌 238
和歌と短歌、断絶と連続/近代の巨人たち/『新風十人』の世代/前衛短歌の世代/口語短歌の世代/独りうたう女たち/幻想とのスタンス
第十九章 桜ソングの行方 263
『桜流し』から/桜と軍国主義/桜ソングの氾濫/王朝和歌への接近と個人の顔
あとがき(二〇一三年師走 水原紫苑) [275-277]
平凡社ライブラリー版あとがき(二〇一六年十二月十七日 水原紫苑) [278-279]
参考文献 [280-284]