本当の話

  • 平凡社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582829358

感想・レビュー・書評

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  • 何ヶ月か前から、街なかで見知らぬ他人の後をつけるのが習慣になった。後をつけるのが面白かったからで、相手に興味を持ったからではない。カメラで隠し撮りし、道順をメモし、最後には姿を見失って、それきり忘れてしまう。
    一九八○年一月末、パリの街なかで一人の男の後をつけていたのだが、何分もたたないうちに人混みに紛れ、見失ってしまった。その晩まったくの偶然から、わたしはその男に紹介された。今日の午後、あなたの後をつけていたのですよと男に打ち明け、その理由を説明した。会話の最中に、男はもうすぐヴェネツィアに旅立つ予定だとわたしに話した。

  • このひとのアートワークがとても好き。
    プロセスが熟して、果実になるまでの美しさがため息もの。
    それをタンタンとシャッターと文字で綴るアーティスト

  • ポール・オースターつながり。原美術館のソフィカル展で購入。インスパイヤリングだ。

  • 映画 「二重生活」より

  • 「赤いモレスキンの女」の中に「ヴェネツィア組曲」という写真集が登場します。ヒロインの本棚にある本です。主人公の男性はまだ見ぬ彼女に惹かれ、その本を開くのです。「赤いモレスキンの女」の基底にある「誰かの寝姿を見ることは、自分宛てではない手紙を読むのと同じ」というサッシャ・ギトリの言葉のように極私的な事柄に他人が踏み込む秘密の行為であり、この小説の真ん中の出来事だと思いました。主人公の男性を同じようにその写真集を開いて見たくなり、この本にたどり着きました。単なる連鎖読書なのですが、自分にとっては秘めた行為のような気分がしました。そして、この本で初めて知ったソフィ・カルというアーティストの他人を見つめる視線で自分を語る様や他人の視線で自己を確認する様に心乱れました。人との交わりについてのイノセントな表現は、かつて出会ったことのない芸術でした。このピュアで、かつ苦い劇薬を甘い糖衣錠にしたのが「赤いモレスキンの女」という小説なのかもしれない、と思いました。「不思議な傲慢さに駆られて、われわれは他者をわがものにしようとするばかりか、他者の秘密をこじ開けようとさえする。他者にとって親しい存在になろうとするばかりか、宿命的な存在になろうとさえするのだ。黒幕たるものの逸楽ー他者を消し去る術。それにはさまざまな作法が要求される。」解説のジャン・ボードリヤールの言葉。

  • 理由なき尾行をした相手がベネチアに行くと聞いてベネチアでも尾行してやろうと企むびっくりな彼女の実話。
    わざと奇人変人を演じているのか、はたまた本当に変人なのかはわからないが、ソフィーはアーティストという枠組みにピッタリの変人。
    自分のプライベートを切り売りしている。
    探偵を自分で雇って、自分を尾行させるエピソードも面白い。
    そしてその報告結果が事実と異なっているのを淡々た語る。(特に説明やツッコミなし)
    自由な発想とキテレツな行動が読んでいて不安にさせてワクワクさせてくれる。

  • 自分と関係性のない男を探して街を彷徨う11日間。自分の中の他者とは。自分の輪郭を朧げながら可視化する光源のようなものかもしれない。全ては自分を知る為。

  • 映画「二重生活」で引用された本、というか、この本を題材にして映画「二重生活」が出来たのか。

    著者のソフィは随分な変人らしい。
    理由なき尾行なのだが、尾行を通り越して、ほとんどストーカーだな。あの執念はソフィの性格なのか。

  • 著者は人と繋がることを強烈に求める一方、どこか厭世的な物の見方をする人だという印象を持ちました。
    他人の人生を搾取し、自分の人生を押し付けることで他者のなかに自分を残そうとしているかのような...?

  • 写真と文章とが等しく重要
    心がざわめく
    手段と目的

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