あやかし考 不思議の中世へ

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 46
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582832143

作品紹介・あらすじ

『今昔物語集』をはじめ、中世の不思議な話の数々を渉猟し、その物語世界に遊びながら、いまではまことしやかに語られる「〜伝」や「〜物語」が、当の人物や出来事の本当の姿を伝えるものなのかを詳らかにする。絵巻・説話から風聞まで、「物語論」の視座から見るミステリアスな中世への手招き。

感想・レビュー・書評

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  • 「道成寺絵解」にはじまり、絵巻.説話から風聞まで、中世の不思議な話の数々を渉猟し、まことしやかに伝えられ語られる伝説が、はたして当の人物や出来事の本当の姿を伝えるのものか、を解きほぐし明らかにしていく。    -20100131

  • 最近「中世」がマイブームだ。なぜ中世に惹かれるのかはわからないけれど・・。
    しかし本書でヒントを見つけた。
    本書によると、中世の怪異譚と近世の怪談には違いがあり、中世の「あやかし」は古来からのつながりと畏怖があるが、近世の「妖怪」は、それのもので「切れている」とか。
    これは面白い。
    わたしが中世に惹かれるのは、結局古来に惹かれるからなのだろうと思う。
    近世はなぜその流れから途切れているのか、またひとつ探究テーマができた。
    本書は中世物、女性物を書かせたら"この人"というべき著者のエッセイ集。寄せ集めで、ちょっと断片的な感が否めないが、気楽に読める。
    橋姫と水の女、そして淀殿。関心のありどころがわたしと似ている。この3つ、これもまた新しいテーマとしていただきです。

  • 2004年(初出1992~2003年)刊。著者は京都精華大学人文学部助教授。◆タイトルどおり、中世期の「あやかし」(蛇、狐、柿木等々)に関わる説話、文芸作品から当時の民衆・貴族・僧侶の意識やその深層を解説する部分もあれば、淀殿論考史、安徳天皇女性論などかなりキワモノ的な内容のものも含む。◇後者に関しては、桑田忠親、山路愛山のみならず、小説家司馬遼太郎まで批判らしき筆が及ぶようだが、その言い分が、男性の淀殿への心理の投影に依拠しているよう。ならば、返す刀で著者のフェニミズム目線への批判にもなりそうだが。
    ◇前者に関しては、安倍晴明の実相(後世が作り上げた陰陽師)、道成寺(和歌山県)の創建神話(僧に懸想した女が蛇に化身する)、都市論が展開され、なかなか面白い感じ。中でも道成寺論は「あやかし」と女の情念の連関性を浮き彫りにする内容で読ませる。

  • 中世のあやしい世界の紹介、とある。
    歴史とは一般に流布しているものとは違うらしい

  • 田中氏の柔らかい文章を纏めた一冊。
    『安徳天皇女性説の背景』が面白かった。しかし、日本の中世は不思議な時代の印象。

  • 「人は誰でも、常に物語を求めて生きているのではないだろうか。」という切り出しで始まる論考は、長い長いエピローグ-石の語る物語で終わる。京都の三つの石の語る物語の弁慶石、岩神、班女石を見に行きたくなるのは「日常の生活ではそう簡単には体験し得ないもの」への逃避だろうか。第1章あやかしの物語では「道成寺縁起絵巻」の絵解き説法に寺の縁起がないことの不自然さを探究し、先行研究を鋭く批判するなど面白いです。

  • 時代の狭間に何が見えるか?

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著者プロフィール

国文学者。池坊短期大学国文科専任講師、梅花女子大学文学部助教授、京都精華大学人文学部助教授などを経て、2005 年より甲南大学文学部教授。専門は鎌倉時代から南北朝時代の説話や仏教文学の研究。近著に『中世幻妖 近代人が憧れた時代』。

「2016年 『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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