21世紀の国富論

著者 :
  • 平凡社
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レビュー : 99
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582833577

作品紹介・あらすじ

シリコンバレーで数々の企業を成功させてきた実業家が語る日本の未来。

感想・レビュー・書評

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  • 日本人で初めてシリコンバレーのベンチャーキャピタリストとなった原丈人さんの資本にまつわる論考。ROEを重視し、短期的な利益の最大化による弊害を説く。

    また、次なる日本の基幹産業を作るべくハードとソフトが、高い次元で一体となったコミュニケーション機器の開発を進めている……って、それアップルですやん。原さんの願いに反して、それが「得意なはず」とされた日本のモノづくりはいまや半死半生だ。

    調べると増補版が出ているようで、そのあたりのことに触れらているのかもしれない。

    良識あるベンチャーキャピタリストは決してキャピタルゲインからのイグジットだけを狙っている金金亡者ではないらしい。すごい人だ。

  • <目次>
    はじめに
    第1章 新しい資本主義のルールをつくる
    第2章 新しい技術がつくる新しい産業
    第3章 会社の新しいガバナンスとは?
    第4章 社会を支える新しい価値観
    第5章 これからの日本への提言
    おわりに

    アライアンス・フォーラム財団 代表理事の原丈人氏の著書。
    2012.11.04 図書館で借りる。
    2012.11.14 読書開始
    2012.11.16 読了

  • 21世紀の国富論

  • 91:経済とか株とかまったくわからないながらも、おぼろげながら見えてきました。改めて感嘆。

  • 第1章
    アメリカ型資本主義の限界とその原因→新しい資本主義のルールを作る
    ・IT産業では生産原価を0にする粗利率100%を達成できる→より高付加化価値の「知的工業製品」の生産が好まれる
    ・「知的工業製品」でも、開発には失敗のリスクもあれば、多額のコストもかかる↔しかしベンチャーキャピタルが機能していない
    ・ベンチャーキャピタルの資本の肥大化→資本の拡大を目的としたベンチャー育成をしないベンチャーキャピタルの誕生
    ・ベンチャーキャピタルが機能しないため、規模間のないベンチャーばかりが台頭し、技術発展は望めない

  • ・IT産業の次にどんな基幹産業を作っていくべきか。
    ・ビジネススクールの失敗は、あらゆるもの全てを数字に置き換えたことにある。
    ・知的工業製品をつくるベンチャービジネスの成功ポイントは「小さなマーケットで大きなシェアをとること」
    ・知的工業製品時代に合った新しい組織のあり方は、フラットな組織をもつネットワーク型の中小企業

  • 応援したい。

  • エンロンやワールドコムで起きた出来事のもっとも大きな要因は、短期的に時価総額を上げるのが優れた経営とみなされる風潮が極限まで強くなったこと。だが、時価総額とは、その企業を今解散するとしたらそれが市場でどう評価されるかを示したものにすぎない。本来あるべき企業の目的とは、優れた商品を作り、優れたサービスを提供し、社会に貢献する事。

    現在、もっとも株価に連動している財務指標はその企業のROE。ROEを上げる為には粗利益率を上げる必要があるので、ソフトウェア産業が有利。こうして、ハードウェア産業に手を出しにくくなる。

    ROE経営は「すでにあるもの」の効率化を図れても、「今はないが、将来つくるもの」の価値を最大化する事はできない。今後の産業転換に適応できない。

    根本的に必要なのは新しい産業。雇用を生み出し、人間生活を豊かにする為の新しい産業。


    財務が経営の主役になったゲームに踊らされた現在のアメリカは、新しい基幹産業を生み出す力を失った。

    ベンチャーキャピタルが果たす役割は、兆円単位の新しい基幹産業を生み出すような技術を見抜き、それを長期間にわたって育てていくこと。

    1990年当時、ベンチャーに入った資金量は毎年4,000億円程度だったのが、2000年には10兆円を超えた。だが、キャピタリスト一人でマネージできる金額は最大でも50億円程度。数年で数十倍もの資金が流入した為に人手不足となり、技術の育成を目的としないファンドマネージャーや経営コンサルタントがVC業界に流れ込み、単なる未公開株式の投資信託ファンドと化してしまった。

    株価によって評価される企業価値だけに目が行くと表面的な議論にとらわれる。これらの数字はあくまで尺度であって目的ではない。企業は消費者に受け入れられる製品やサービスを提供し、社員を幸福にし、地域社会に還元するという基本的な理念を確認する事。


    短期の株価上昇と引き換えに蓄積した内部留保を配当金として分配してしまえば、次代への投資を十分に行う事は不可能となり、次第に競争力を失い、疲弊する。


    ビジネススクールの失敗はあらゆるものを全て数字に置き換えた事。人の動機付け、幸せと言った定性的なものまで何もかも定量的な数字で分析しようとすると、手段と目的が反対になる。


    時価会計、減損会計はあくまで投資家であるファンドの立場に立った会計処理であり、それは決してリスクをとって新産業を創造する意欲を持つ事業家の視点から作ったものではない。短期的な利益を求める巨大ファンドが支配するアメリカやイギリスはともかく、日本やアジアがこれから地球の未来を創っていこうとするなら不適切なもの。


    産業を通じて雇用をつくり、人々を幸せにする為の新しい資本主義のルールが世界で必要になっている。

    CEOゴロの手法は、就任して直ぐに過去の累損を一掃する。そして累損だけでなく、将来出るかもしれない負債まで引き当てる形で特損計上する。そこで株価を大きく下げたところでストックオプションを付与する。その後、リストラ等で経費を削減すれば数年後に利益が上がり、「見かけ上の再建」は完成、さらにIRを駆使して株価が上がった段階でオプションを行使する。彼らは濡れ手にアワの利益を獲得するが、何一つ生み出してない。


    大企業におけるストックオプションは上層部のごく一部だけにキャピタルゲインをもたらし、所得分配を歪める。


    最初は自社で開発した新しい技術によってサービスを展開していた会社が開発力を失い、やがてM&Aなどによって他者から技術を買い始めるようになる。これがさらに進むと最後はサービス業に徹するようになる。だが、新しい技術を開発する企業がなくなればサービス業においても新しい展開は望めない。誰もがサービス業を目指すようになったらその社会は危ない。


    日本企業は米国の手法を鵜呑みにする必要は無いし、米国の基準に振り回される必要も無い。いいところだけを吸収し、地球の未来にとって悪い点は正し、米国のシステムを上回るものを創ればよい。間違っても時価総額を最大化する事が企業目標だと勘違いしたり、ROEなどの手段を目的と取り違えて数字ばかりを追わないこと。企業は誰のもので何の為にあるのかという問いに対し、基本に立ち帰るべき。



    アメリカにおいて、起業の初年度の雇用者数平均は16名。6年目を迎えると200名。ベンチャービジネスが持つ活力を推し量るのに十分な数字。大企業における雇用は減っている。


    ソフトウェアや通信技術、バイオテクノロジー分野での研究開発はROEのような指標とは異なるモデルで経営される小さな企業で行った方がやりやすい。

    今、世界に必要とされているのは大きなテクノロジーリスクの存在する初期段階の技術に対して積極的な投資を行い、成功に導く力。かつてのベンチャーキャピタルが担っていた役割。この「リスクキャピタル」の元となるのは複数の事業会社が集まって新基幹産業を目指し設立する基金。各社が研究開発費として計上している資金の一部を毎年提供する事によって数百億単位のリスクキャピタルをつくる事。リスクキャピタルの主役として事業会社が望ましいのは、長期的に技術を育成していく上での相乗効果が期待できるから。出資企業側から見ると、成長分野において自社の礎をつくる事ができる。リスクキャピタルを通じた研究開発を、いわば外部にある研究開発部門と位置づけ、自社内部の研究開発との間で協調的な緊張関係を持たせる事で技術力を向上させる事ができる。もちろん、投資である以上は収益も見込める。
    近年の年金基金などによって肥大化したVCのように、短期的な利益を求める機関投資家の意向が最優先される事はない。

    ベンチャー企業への資金拠出を投資ではなく複数年度にわたって研究開発費として計上すれば、資産とは見なされない。


    現代の産業、金融資本主義の基本とも言える株価と企業価値の関係、高付加価値の製品をつくる産業だけが高い株価を形成する流れは必ず修正される。そして、個人の才能を最大限に発揮させるようなフラットな新中小企業を育てるリスクキャピタルのような仕組みがつくられていく事で、「企業は株主だけのもの」という考え方も是正されていくだろう。


    100億円以上のお金を作った人たちの中に本当の意味で幸せになった人は殆どいない。家もある程度の規模よりも大きくなるとかえって居心地が悪い。美味しいものもたまに食べるから美味しい。楽しい事もたまにできるから嬉しい。特別な事が日常になるとすぐに感動を忘れてしまう。私たちはもう一度、何が幸せであり、何を人生の目標にすべきか、考え直す時期にきている。


    人類は幸せになる為の手段を目的化する事で、精神的にはどんどん飢えている。


    「こんな社会にしたい」という理想と結びついた投資をする事。


    「リスクキャピタル」は事業会社が中心となって新しい産業をつくりだしていくような技術を生み出すベンチャー企業を育成する仕組み。豊かな内部留保をリスクキャピタルに用いる事。


    日本が為すべきことは、次世代の新しい基幹産業を世界に先駆けてつくりあげる事。

    日本のリーダー達は現在のように表面的なアメリカの真似を続けてはいけない。


    TMO(Technology marketing office)が産官学の連携における要となる。新技術の中にある製品開発の可能性やリスクを評価し、「製品開発完了までの開発期間をいかに短くするか」「資金をいかに少なくするか」といった提案を行い、リスクを取りながらその技術を使ってくれる顧客企業との連携を進めていく役割を担う。


    ほんの些細な欠点でも何か穴があればとにかくダメだというのが日本企業の特徴。本質的には些細なマイナスでも解決できるまで待つという保守的な組織。米国企業のトップの多くはベンチャー企業を最大限に活用する。何故なら自分のもっていない新規性に富んだ技術やコンセプトの重要性を高く評価してるから。

    ベンチャーのテクノロジーが良いと思ったら、「どこが使っているのか?」などという無意味な質問はせず、まずは自分が使ってみる事。


    政府は率先し、積極的にベンチャー企業からの調達を増やすべき。

  • 基本的には”新しい資本主義”の焼き回しだが、より焦点が絞られて掘り下げている感じ。何回読んでも興味深く感じる部分が出てくるだろうと思われる。時々読み返したい。

  • 援助はいらない。事業として持続的成長を支援するのが本来の投資の姿。「老舗」という言葉があるように、日本企業はそうやって古くから長生きしてきた。ベンチャーも同じ。リスクキャピタルは日本にとって新しいのではなく、自然なことなのである。

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著者プロフィール

原丈人(はら・じょうじ)
日本語版監修者略歴●アライアンス・フォーラム財団創設者。中央アメリカ考古学研究の研究資金を作るためにシリコンバレーで光ファイバー事業を起業。その後いくつもの中小ベンチャーを米国有数の大企業へと育て90年代に米国有数のベンチャーキャピタリストとなる。しかし英米を中心に多くの国々で富の二極分化が進むことに気づき、アライアンス・フォーラム財団を率いて、アフリカなど途上国で厚い中産階級層をつくるための行動を興す。この理念の実現のために公益資本主義を提唱し、財務省参与、国連政府機関特命全権大使、ザンビア大統領顧問、米国共和党ビジネスアドバイザリーボード名誉共同会長として広く世界に浸透させる活動を行っている。


「2017年 『夢を追いかける起業家たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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